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第31-1話魔王の根城へ

   ◇ ◇ ◇  街を出れば、魔王が住まう山までは地図がなくとも迷うことはなかった。  近隣の山々よりもひと際高く、瘴気を漂わせた険しい山。  頂は分厚い雲に隠れて見えないが、たまに城のようなものが鎮座しているのが確認できた。  あまりに大きな目印。エルジュたちはそこへ向かって歩き進んでいけば良かった。 「さあ、早く魔王城に到着して、ちゃちゃっと倒してしまわないとねー。姿さえ確認できたら瞬殺してやるから」  まだ山のふもとにも辿り着いていないのに、エルジュからやる気が溢れている。  心なしか表情も引き締まっていて、目の輝きもいつもと違う。  きっと今のエルジュなら、どんな魔物のワナを見つけたとしても目もくれず、魔王の元へ辿り着いて討伐しそうだとグリオスは確信する。  目的を果たせそうで良かったと思うが、グリオスの胸中は複雑だった。  魔王を倒した後、エルジュはどんなことをしてでも本音を吐かせようとしてくるだろうから。  もう心はあるというのに、それを認めてエルジュを受け入れてしまうと、取り返しがつかないことになってしまう――何が起きるかはグリオスにも分からない。ただ胸の奥が言ってはいけないと強く引き止め、いっそ流されてしまうぐらいなら逃げてしまえ、という考えまで浮かんでしまう。

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