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第31-2話魔王の根城へ
言葉に詰まって何も言わないグリオスにエルジュが体を寄せ、腕を絡め、手を繋いでくる。
「……逃がさないから。グリオスがどこに居てもオレは見つけられるんだからね。無駄なことはしないほうがいいし、考えるだけ無駄だから」
本気を出したエルジュには誰も敵わない。
まさかその本気を向けられる日が来るとは……と思いながら、グリオスは諦めの息をついた。
「ああ、逃げない。約束する。だから……手を離せ。敵が来たら対応が遅くなる」
「まだ大丈夫だって。魔物の気配しないし。アイツらの根城が近くなるまで、このままでいてよ。それとも――」
不意にエルジュの指がグリオスの手を弄る。
煽るように肌を撫で、じゃれついてくる指。グリオスの体が思わず疼きを覚えた。
「……っ、こ、こら、やめろ……人で遊ぶなといつも言っているだろうが」
「遊びじゃなきゃいいってことだよね? オレ、本気だから」
「そういう屁理屈を言うな……腰が抜けて身動きが取れなくなったら、足手まといになるだろうが。頼むから」
「足手まといどころか、興奮して魔王の根城ごと破壊しちゃうかもね。グリオスを姫抱っこしながらっていうのもたまんないし!」
話せば話すほど、親密なやり取りになってしまう。
困ったと思っているのに――このやり取りが愛おしくてたまらない。
おどけながら執着を見せつけてくるエルジュへ、グリオスは困り眉を作りながらも薄く微笑んだ。
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