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第32-2話最小の労力で

「さーてと。魔物を片っ端から瞬殺するのもいいけれど、戦うのは面倒だからねー。後からグリオスとエッチするための体力は温存したいし」 「いや、むしろ発散させろ。お前の無尽蔵な体力と精力に付き合わされる俺の身になってくれ」 「そんなこと言って悦びまくってるじゃん。素直じゃないんだからー……でもさ、時間かけちゃうと魔物たちが束になって襲ってくるから大変になるもんね。だからそうならないために、今日は先手打っちゃう。出し惜しみしないよ!」  不意にエルジュが片手を高々と上げ、二人の頭上に数多の光の粒を出現させる。  ひとつひとつは日を浴びて淡く輝く泡粒のごとくな光。それらはゆっくりと二人に降りかかり、薄い光の膜を作っていく。  グリオスが体の底から清々しくなったように感じていると、エルジュが爽やかに笑いながら教えてくれた。 「退魔の術をかけたよ。これで魔王以外の魔物はオレたちに近づけない。移動するだけで相手が勝手に逃げちゃう。時短時短」  本来なら術者の力に合わせ、それよりも明らかな格下の魔物を退かせて遭遇しなくなる術。  どんな魔物でも瞬殺してしまうエルジュならば、使えば効果は抜群だ。  褒めて欲しそうに目を輝かせながら見てくるエルジュへ、グリオスは盛大にため息をつくしかなかった。 「……最初から使えば良かっただろうが」 「だって魔物のせいでエロくなるグリオスが見たかったから。仕方ないじゃない」  悪びれるどころか胸を張って開き直るエルジュに、ただただグリオスは呆れるしかなかった。

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