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第33-1話魔王と対面
魔王の城へ向かうまでの間、今までの苦労はなんだったのだとグリオスが叫びたくなるほど、何事もなく二人は山を登り、洞窟の中を平和に進むことができた。
戦いに来たというより、自然散策を楽しみに来たかのような平和さ。
それでも気を抜いてはいけないと、グリオスは自分に言い聞かせて緊張の糸を張り続ける。反対にエルジュはニコニコとしながらグリオスの手を握り続け、空いた手は機嫌よく前後に振り、どう見ても浮かれた態度だった。しかし、
「あっ、ちょっとこっちから嫌な気配がするから、反対の道を選ぼうよ」
洞窟内で道が分かれた時、初めて来た場所のハズなのにエルジュは堂々と道を指さし、ワナのないほうを選んでいた。
心を入れ替えたようなエルジュの態度に、ふとグリオスは思う。
このまま自分が魔物の餌食にならなければ、一緒に居続けることができるかもしれない。
少し希望が生まれてグリオスの顔から険しさが抜ける。
ほんの一瞬の変化。そんなことすらエルジュは気づいてグリオスに顔を向け、嬉しそうに微笑む。
……戦いが終わったら降参するか。
そんな考えが頭に浮かんで、グリオスは目をそらさずエルジュに向けて頷いて見せた。
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