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第34-1話仕組まれていたもの
「そんなこと言われてもねー。オレたちにとっては魔王も他の魔物も迷惑で困るだけだから同じように倒すだけだけど、魔王は逃げたら手下に示しがつかないし、そうじゃない魔物たちからカッコ悪って思われちゃうもんね。ご愁傷様」
ニマニマしながら挑発するエルジュへ、魔王の顔が怒りでカッと赤くなる。
「チクショーっ! わざわざ口に出すなよソレ! 特に俺は魔王になって日が浅いからな。ここで逃げ出したらバカにされるどころか、襲われて嬲られる……ローバーやらスライムやらの母体にさせられながら、他の魔物たちに回されるなんて嫌だからな!」
……やられた後の魔王が哀れだ。
思わずグリオスは魔王に同情する。散々魔物に嬲られてきた者として、その未来がどれだけえげつないものなのかが想像できてしまい、自然と顔をしかめてしまう。
そんな目に遭うぐらいなら死んだ方がマシだと腹を括った魔王は、すべてを投げうって戦いに挑もうとしてくるだろう。
追い詰められたネズミが猫を噛むこともある。油断はできない。
グリオスが警戒心を強めていく中、黒髪の男が目を合わせてくる。
艶めかしい眼差しを向けられた瞬間、ドクン、と体の深い所が大きく脈打った。
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