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第36-2話抗い難い誘惑

 思わず言葉を詰まらせてグリオスは目を逸らすが、視界の脇にしっかりとインキュバスと喘ぐ魔王を入れてしまう。  また絶頂に追い詰められていく魔王が、首を振り乱し、シーツを強く握り、背中を逸らして身悶える。終わらない行為。これを自分も味わえるのだと思うと、グリオスは理性とともに今まで築き上げてきた良識や信念といったものが麻痺していくのを実感する。  もう限界だ。耐えられない。  この体は既に魔に侵され、淫らなものになることが決まってしまった。  抗うだけ無意味。  ならば身に巣食ってしまった肉欲に逆らわず、受け入れてしまえば――。  揺れ動くグリオスの心を見透かすように、インキュバスが手招きをする。 「さあ、自らの足でここまで来い。俺に抱かれて淫乱な魔となれ……夢から覚めた後も同じように可愛がってやろう。寝ても覚めても、お前を淫らに生かしてやる」  逆らえない声に、心惹かれてしまう行く末。  鈍い動きでグリオスは体を起こして立ち上がる。  たった数歩近づくだけで、全身の渇望を癒すことができる。  満たされた瞬間を想像するだけで、体の前も後ろも甘く達してしまい、インキュバスの元へ行けと急かしてくる。  次第にグリオスの息が浅くなり、乱れていく。  インキュバスの目がニヤリと細まり、こちらへ来いと顎をしゃくってくる。  グリオスは大きく深呼吸してから、真に望む行動へと移る。

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