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第42-1話よそ見は厳禁

 完全に身も心もインキュバスに預け、よがり続ける魔王。  脚は絶対に離れてなるものかとインキュバスの腰を抱き、背中にしがみつき、胸元で小首を振ってこすりつける姿は、幼子が心から甘える様によく似ている。  そんな魔王をインキュバスは愉悦の笑みを浮かべながら奥を穿ち、時折美味な料理を食して満足したように目を細め、舌なめずりをする。そして魔王が大きく達すると、誉め言葉代わりに愛しげなキスを送っていた。  二人の関係が今しがた始まったばかりではないことが、グリオスでも見て取れる。  どこまでも淫らでありながら、愛に悦ぶ姿――目に入れ、意識してしまうと、幾度となく達した体が飢えを覚えた。  不意にインキュバスと目が合い、こっちへ混ざるか? と眼差しで誘われる。  もっと抱かれたい。  体の奥深く――身も心も、精神も魂すらも握られ、快楽のまま狂ってしまいたい。  淫靡な衝動がグリオスに込み上げた時、クイッ、とエルジュに頬を押され、顔の向きを変えられた。 「グーリーオースー、よそ見は厳禁。隣は気にしない。オレに集中して……もっと気持ち良く満たしてあげるから」  今にも蕩けて崩れそうな微笑を向けながら、エルジュは小さなキスの雨をグリオスの顔に降らせる。  純粋で可愛げのあるキス。  しかし上とは真逆に、奥深くを円を描きながら抉ってくる動きは容赦がない。

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