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第43-2話満ちて目覚める

 もう目に入るものも、感じるものも、エルジュのみ。  心も感覚も、自分のすべてがエルジュに囚われていく感覚に、グリオスは酔いしれる。  隣で繰り広げられる別の情事も、ここが夢の世界だということも忘れて、エルジュとまぐわい続けていく。  絶頂の衝撃がグリオスの頭を貫き、意識が細切れになる。  訪れる感覚が短くなり、チカチカと視界が点滅を始め、何もかもが白になり――。  ――それでもエルジュの熱と気配だけは、グリオスから消えることはなかった。 「ぅ……ぅぅ……」  小さく唸りながらグリオスは目を覚ます。  どこまでも高い大理石の天井をぼんやりと眺めていると、鈍い動きで人影がヌッと被さってきた。 「目が覚めたねーグリオス。大丈夫? まだ夢の中?」  エルジュがグリオスを覗き込みながら、顔の前でヒラヒラと手を振ってくる。  ……夢、だったのか。  何も変わらない調子のエルジュを見つめるにつれ、今しがたまで愛し合っていたことが現実ではなかったのだと理解していく。  しかし虚しいとは思わなかった。  軽そうな気配を漂わせながらも、エルジュの眼差しは愛しさを隠さずにグリオスへ注がれていたから。

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