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第45-1話エルジュの提案

 ギュッと魔王を上から抱き締め、インキュバスが顔を伏せる。  ちょうど唇が魔王の額に当たる角度。想いが溢れ出ているこの二人を瞬殺すれば、むしろこっちが悪党のような気がしてグリオスは顔をしかめる。  相手は魔王にインキュバス。  情けをかけて生かせば、拠点を移してまた人間に害を与えることになる。  哀れだと思っても、トドメを刺さなければ――。  自分の調子を崩さないエルジュなら、迷わず二人を倒してしまう。  このままただ見ていれば事は終わる。だが……。  迷いを滲ませてしまうグリオスの前で、エルジュが動く。  手が挙がり、剣の柄を――通り過ぎ、ポンッ、と手を叩いた。 「良いこと考えた! 魔王がサキュバスの長の所に行かなくてもいいなら、人に悪さする必要ないんだよね? 本当はとことん二人の世界に入ってイチャつきたいんでしょ?」 「……あ、ああ。まあ、それはそうだが……」  困惑しながら顔を上げたインキュバスへ、エルジュがビシッと力強く親指を立てて断言した。 「じゃあオレがサキュバスの長を倒しちゃうから! 二人は迷惑にならない所で思いっきりイチャついてればいいから」  まさかの魔王を倒さないという選択に、グリオスは目を剥き、魔王とインキュバスは息を引いてエルジュを凝視する。 「な、なぜ情けをかける? 俺のような若輩の魔王は倒すに値しないということか?」

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