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第6話
「っは、あ、まって」
くちゅくちゅとまた淫靡な水音が響く。今度は唾液の絡む音ではない。そうではなくて。
「馨、馨、それ……!」
「伊吹、すっごいガチガチ」
巧みなキスにいいように煽られて、気付いた時には伊吹のソコはすっかり勃ち上がっていた。触れられて、馬鹿みたいにまた反応してしまって。
雪崩れ込んだ部屋の奥、狭いシングルベッドに押し倒されてガチガチに昂ぶったモノを扱かれている。
「先っぽから汁止まらないじゃん」
「っ」
圧倒的な羞恥心。ここでもまだ忌避感はなく、それよりも快楽が勝っていた。
同じ男だからなのか、とんでもなく触るのが上手い。どこをどうされれば気持ちイイのか実感として理解してる人間からされる行為は圧倒的だった。
伊吹の先走りの汁で馨の手はぐちょぐちょで。
快楽を前にやめてと言えない。言う気が起きない。
いいように翻弄されるのは悔しい。男同士でする未知の行為と感覚に怖いという感覚もある。それでも。
「っぁ、ぐっ」
「伊吹、気持ちイイならイッて。ほら、好きなだけ出して」
「うあ……!」
鈴口を悦妙な力加減でぐりぐりとされた瞬間、一瞬伊吹の意識は飛んだ。視界にチカチカ光が走るのと同時に、勢いよく射精してしまう。
「はっ、はっ、はぁ」
腹の上が自分の吐き出したもので汚れて気持ち悪かった。でも、それを拭う気力がない。
「伊吹」
脱力したままでいると、中途半端にずり下げられただけだったズボンと下着が引き抜かれる気配。そしてそれから。
「っあ、なに……!?」
唐突に後孔にとろりと冷たい感覚が与えられた。驚いて身を竦めると馨の手にはなにやら透明の液体の入ったボトル。
ローション、という単語がすぐに浮かんだ。
なんでそんなもの、と思ったが、伊吹はすぐに思い出した。さっきまで馨が呑んでいた相手の男は、酒だけでなくその後の約束もしていたのだろうと。
「無理ならしない」
「うっ」
つぷり、潤滑剤を与えられたソコに僅かに指が沈められる。
ぞわりと下腹がうねった。そこには確実に恐怖があった。
「だから言って」
つぷぷ、とまた少し指が沈む。異物を挿入れられたことなどないソコは貞淑に閉ざされていて、指一本でギチギチだった。
怖い。でも、今まで馨が関係を持ったであろう相手達に、妙な対抗心が芽生えている自覚もあって。
自分にだってできないことはないと、伊吹はどうしてかそう思ってしまう。
「あ、う……」
ぐにぐにと慎重に、けれど確実に沈んでいく指。決して触れられることはなかったであろう場所に、他人を招き入れている。
快感は分からない。異物感がすごい。
解すためにローションを追加される度、その冷たさに身が竦む。
「あ、あ、んくぅ」
けれど何度も何度も繰り返される内に、次第に伊吹のソコは柔らかく蕩けてきた。快感かどうかは分からないが、異物を排除しようと固く閉ざしていたのとは別の反応が生まれていた。
「伊吹、柔らかくなってきた。痛くない?」
「キツイ、けど、痛くは」
指が増やされる。腸壁を擦られる感覚に、眦から涙が転げ落ちた。それを馨の舌先が掬い上げる。
不思議だ。
友情だと思ってたのに、ここまでされて嫌じゃない。そしてここまでのことをするのに、もう友情だけでは言葉が足りないとも思った。
馨のことが好きだった。友達として好きだった。
伊吹のその“好き”にはけれど延長線が引かれていて、先には少し形を変えた“好き”があったのかもしれない。
「あ、あう、まって、馨、なんかへん」
「うん、ナカ、うねってる。伊吹、アナル弄られるのイケるみたいだな。ココ、弄られるの、怖いだけじゃないから指先に集中してみて」
「うあ」
「伊吹のイイところ教えて」
ぐにっと持ち上げるように触れられて、肌が泡立つ。出したばかりの屹立がまた硬度を取り戻しビクビクと小さく震えていた。
「あぐっ」
「ココ?」
「そ、そこは」
馨がお綺麗な顔ににっこりと笑みを浮かべて、次の瞬間一点集中で伊吹のナカを責めだした。
刺激が強い。快楽と少しの痛みと恐怖が綯い交ぜになって、結局は人間としての防衛反応か、脳がその感覚を全て“快楽”というカテゴリに強引にグルーピングしてしまう。
「あ、あ、あうぅ!」
あっという間だった。短い間に二度目の射精に至ってしまい、びゅるびゅると白濁を吐き出しながら、その早漏さに伊吹は貝になりたい気分になる。
居た堪れなくて顔を覆って呻いていると、ぬぼんと指が引き抜かれる。
スプリングが軋んだと思ったら、しばらくして腹を拭われる気配がした。びっくりして手を外したら、伊吹の汚れた腹を馨がティッシュで拭っていた。
「え、なに」
そのあまりに落ち着いた、ひと段落着きましたといった様子に、伊吹は目を丸くする。
「なにって……何が?」
不思議そうにされるが、伊吹の方こそ不思議だった。
「シ、シてないじゃん?」
「え?」
今のがセックスの全てかと言われると、そうでないことは確実だ。
一方的に弄られて、気持ち良くなって、伊吹が達しただけで。馨の側は何も発散していない。
「お前、出してないじゃん。そんなにガチガチなのに」
事実、まだしっかりと下を着込んでいる馨だが、ソコはガチガチに膨れ上がり布地をすっかり押し上げていた。ひどく窮屈そうな様子。
「最後までシなくていいの?」
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