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第7話
その状態がとんでもなく辛いことは、伊吹にだってよく分かる。何せ、自分にも付いているモノなので。
「……伊吹、自分が何言ってるか分かってるか?」
馨の口の端が引き攣るのが見えた。
自分が何を言っているか。OKを出したらどういうことになるか。
馨と、男と最後までする。
尻の穴に突っ込まれることに恐怖や抵抗が全くないとは言わないが。
「…………大丈夫だと思う」
伊吹は、結局そう言っていた。
気持ち悪くない。嫌じゃない。気持ちイイ。
それは単なる快楽だけではなくて、触れる馨の手から心地良さを感じる。肉欲だけでなく、相手に対する好意がちゃんとあるのだ。
今までそういう目で見たことはなかったけれど。
どうやら、伊吹はそういう意味でも馨のことを受け入れられるらしい。
「同意? 同意で、現実で、伊吹と最後まで? 嘘だろ……?」
この展開を受け入れられないのは、むしろ馨の方のようだった。
「夢かもって思うなら、さっさと確かめればいいじゃん」
焦れてそう言うと、恐る恐る馨の手が伊吹の脇腹に触れて来る。
「夢みたいだ」
「だから現実だって」
弾かれたように馨がベルトを外して、昂ぶった自分のモノに手早くゴムを被せる。
そして伊吹の腿を持ち上げ、股を拡げさせた。
「すごい眺め。伊吹の穴、初めてなのにもうヒクヒクしてる」
「そ、そういう解説はいらない……!」
いいとは言ったものの、あまりに恥ずかしい言葉と体勢に伊吹は悶える。
こんな体位を自分が取るとは思わなかった。これは完全に抱かれる女の子側の構えだ。そんな自分の中心では、浅ましくもまた鎌首をもたげ始めたモノが震えていて。
くちっと先端が後孔に宛がわれる。
「んっ」
腰を少し推し進められれば、その感覚に身体が戦慄いた。指とは圧倒的に違う感覚に、伊吹の中で警鐘が打ち鳴らされる。
「待って!」
初心者が早まった真似をした気が、今更になってしてきた。
当然だが、指よりずっとずっと太い。というか、伊吹の想像より馨のブツはずっとご立派だった。
「やっぱり待って。これ、大惨事にならない? 忘れてたけど、結構サイズあるよね?」
「大丈夫、今まで裂けたけたヤツは見たことない」
が、この状況で止まれというのも無理な話だろうと、焦る気持ちの片隅で思う。伊吹だって同じ男だから分かる。
こんなガチガチのモノを入口に差し入れた今まさにここから! という状況で止まるのは至難の業だと。
「で、でも」
「伊吹の処女、ちょうだい」
「処……!」
男である自分に向けられた“処女”というパワーワードに絶句する。絶句しているその隙を狙われて、ぐぐっと更に腰を押し勧められた。
「あ、あ――っ、あーっ!」
腸壁が押し開かれる。太くて硬い、馨の形そのものにさせられる。
圧倒的な支配間。頭に過る蹂躙という言葉。
「か、かおる、かおる、こわいっ」
征服、という言葉が頭を過る。
「ゆっくりする」
どちゅっと聞いたことのない音がして、伊吹の身体は竦んだ。
「伊吹、大丈夫、ちゃんと入ってる。気持ち良くなるようにイイところ探すから」
熱くて、硬い。全てを塗り替えるような圧倒的な支配感。
逃げられないと、伊吹は悟る。
腿を持ち上げられて、脚をバタつかせても大した抵抗にはならない。後孔に埋め込まれたものが、伊吹を完全に縫い付けてしまっている。
「っは、ナカ、キツイけどうねってる」
知らない感覚だった。自分の存在を根底から打ち壊されてしまうような、とんでもない衝動。
「馨っ、でも、これ、こわい……!」
堪らず叫ぶ。そうしたら、ナカを突き上げる感覚が止まった。
「……分かった。伊吹が怖いならこれ以上はしない」
情けない。自分から誘ったのに。悪いことをした。
そう思うが、引き攣った喉からは上手く言葉が出て来なかった。
ずるり、馨のモノが伊吹のナカから撤退しようとする。
しかし――――
「伊吹、どっちなんだよこの反応」
途中で馨が困り果てたようにそう呟いた。
「う……」
自分の身体だ。馨の言う意味が分からない訳がない。
縋るようにきゅうっと自分のソコがすぼまったことに伊吹も当然気が付いていて、気まずさに目を逸らした。
「やめた方がいい? 続けた方がいい?」
やめてと言えば、馨はきっぱり引くだろう。伊吹としても実力に見合わないことをしたと、まさに今痛感しているところで。
でも、身体の反応があまりに素直すぎる。
「…………ゆっくり優しくしてください」
居た堪れない。
そう思いながらも小声で告げると、
「そんな可愛い顔して、そんなセリフ」
中途半端にナカに残っていた馨のモノがこの期に及んで更に膨れ上がった。
「ひうっ!? か、可愛い言うな」
「仕方ないだろ。オレにとって伊吹はいつでも可愛いんだ。ずっとそうだったんだ」
ずずっと再び馨が伊吹の奥まで挿れる。最初よりいくらかゆっくりと、抜き差しを繰り返し始めた。リズミカルに優しくトントンと突かれ、その感覚に少し慣れてくると、それを見抜いた馨により深くをねっとりと嬲るように刺激される。
「あ、あっ、あぁー!」
異物感だけで埋め尽くされていたナカが段々と違う反応を示すようになっていた。
馨の動きに合わせて収縮をする。刺激を快楽という信号に変換していく。
「本物の伊吹の破壊力ヤバい。なんでそんなとろっとろの顔するんだ。オレの自制心を買い被りすぎじゃないのか」
「言ってることが、分からない」
「じゃあ分かって」
「ひう!」
とちゅん!
伊吹の反応するところを的確に突く。意識が一瞬飛んで、思考がまた一つ蕩けた。
「身体で分かって」
「あ!」
「伊吹、伊吹、もっと声聞かせて、気持ちイイなら教えて、伊吹」
「あ、あう、かおる、待って、つよい、刺激、強い! ワケわかんなくなるっ」
「なってよ、もっととろとろの顔見せて。気持ちイイことでいっぱいになって。オレで沢山よがってよ。ほら、ここ、伊吹のイイところ」
「あぁ――っ! むりっ、は、イくっ、またいイくからっ」
甘く濡れた声が絶えず部屋に転がった。
ベッドの軋む音、互いの汗ばんだ肌、性器を擦りつけられ戦慄く伊吹の身体。
「かおるっ、ん、んん――――っ!?」
追い詰められ、伊吹は三度目の絶頂を迎える。びゅるびゅるとまた先端から精液が迸る。
同時に伊吹のナカで馨もゴム越しに放っていたが、伊吹の方はそれを知覚する余裕もなく意識を失っていた。
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