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ひとりぼっち
コンコンッ
「失礼しまーす」
科学準備室でなにかの資料を纏めていた先生は手を止めて雪に視線を合わせた。
「悪い、放課後に呼び出して。お前三者面談の紙まだ出してないだろ。」
「あ」
すっかり忘れてしまっていた。忘れたというか、そもそもずっと家に誰もいないのだから、三者面談というのも不可能なのだけれど。
「親御さんにはちゃんと伝えてるか?」
「………」
雪の両親は彼が5歳の頃に離婚しており、親権は母親が握ったものの、育児も全くせず、働きもしない姿を見かねた親戚が雪を引き取ったものの、親戚であった祖父と祖母も雪が10歳の頃に交通事故で息を引き取った。
その後、雪の母も父も行き場をなくした雪には一切目を向けず、雪を施設に入れた。
雪が高校生になったと同時に、祖父母の残した家へと引っ越し、そこからはずっと一人暮らしだ。雪が施設にいた間の家の家賃や学費などは、コツコツと祖父と祖母が貯めていた貯金から賄っていた。
三者面談といっても、独りぼっちの雪には不可能だ。
「僕一人暮らししてるので、親いません」
「は?」
少し俺様口調な先生に眉をしかめる。
「離婚してて、今どこにいるかわかりません。なので三者面談も無理です。」
何か考えていた先生が口を開けば、
「……はぁ。じゃあ二者面談にする。お前とオレ。日付はこっちが決めとく。」
有無を言わせない先生の口調は、"やっぱり俺様だ"と内心思いつつも、「わかりました」とだけ言い、準備室を出ようとすると背後から、
「おい、お前ちゃんと飯食ってる?」
と、言ってきたが否定したらそれから想定できる説教じみた会話になりそうだったので、"食べてます"とだけ言い残して颯爽と準備室から出た。
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