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先生の家

佐藤side 目の前で辛そうに眠っている雪を何故か自宅まで連れて看病している自分自身に驚いた。 多分その原因は、昨日の巨体男を見た時から気になっていることと、今まで一人で生活していたこと。こいつ…まさかな…。一瞬頭を通り過ぎた想像をシャットダウンし、今は看病することに目を向ける。 雪を抱きかかえた時に思ったのは、折れそうなほど細い体と体重。見た目が細いのでなんとなく予想はしていたものの、ここまで軽いとは思わなかった。 そして平熱が35度と言っていた雪にとって、39度の高熱というのは風邪をひいていない佐藤自身も震わせる辛いものだろうと思った。 それが月に1回あるかないかとか… 何故かその時、柄にもなく“そばに居てあげたい"と思った。今にも折れそうで、消えそうで、儚くて、散ってしまいそうな雪の姿に…。 雪が寝静まって約1時間後。 リビングで仕事を進めていたら、寝室から聞こえる物音に気が付いた。 そこには頬を赤く染め、汗のせいか額に髪の毛がくっついていて、苦しげにベッドシーツを掴みながら荒い息を逃そうとする雪の姿がいた。 「っはぁ…っはぁ…っはぁ…っはぁ…」 過呼吸気味の苦しそうな雪の背中を一定のリズムで落ち着かせる。 「大丈夫だから、ゆっくり息吐け」 「っはぁ…っゔぅ…っはぁ…ッゴホッゴホ…っはぁ…」 「焦らなくていい、大丈夫だから。ゆっくり息吐いてみて」 「っはぁ…っはぁ…ひっと…り…っはぁ…しな…ぃで…っはぁ…」 「っはぁ…お…ぃて……っはぁ…かない……っでっ…っはぁ…」 苦しそうに瞼をギュッと閉じながら、雪は一生懸命に言葉を繋げようとしていた。 佐藤は雪の背中を一定のリズムで優しくトントンとしながら、もう片方の手で雪の手を握った。 「大丈夫、どこにも行かないから。ゆき、ゆっくり息を吐け」 「…っはぁ………ぅッ……っはぁ……っはぁ…」 雪の呼吸が荒くなってから約20分。 徐々に落ち着きを見せてきた雪は、起き上がることもなく、また浅い眠りに着いた。 さっきの雪が苦しむ姿を思い返して、酷く乱れる雪が官能的とも取れる姿を押し殺し、苦しみ紛れに言った言葉を考えていた。 "1人にしないで" "置いてかないで" もうこの時から既に、佐藤の心の中は雪のことでいっぱいだった。それが何の感情かは勘づいているものの、『時既に遅し』だった。 「はぁー」 と大きなため息を吐いているものの、その表情はニヤリと頬が緩んでいた。

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