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先生の家

佐藤side 雑炊を口にした雪は、目に涙を浮かべて俯きながらも食べていた。泣いている事実を俺に悟られないようにする姿が不意にも可愛いと思う。もっと頼っていいのに、というか頼って欲しいのに。 「お前さっき、うなされてたけど大丈夫か?」 「え…すみません、覚えてないです…」 雪を見ると、嘘をついているような態度には見えず、“無意識で過呼吸起こしてるとか正気かよ…"と思いながら今まではずっと一人で耐えてきたと思うと心が痛くなった。 「最近夜は寝れてる?」 「…それなりに」 「それなりって何時間」 「…ょ、…よじ…かんとか…」 やっぱりか。少し覚悟はしていたものの、学校ではいつもだるそうにしているし、あんな過呼吸が出るのではまとまった睡眠を取るのは難しいだろう。 お茶碗一杯分のお粥が、半分に減ったところでスプーンで口に運ぶペースが遅くなり、口に手を当てていた。おそらく、この分量がこいつの限界なのだろう。 「無理して食わなくていい。ちゃんと薬飲めよ」 そういって差し出した風邪薬を雪に渡すと、薬を飲むのが苦手なのか眉の間に皺を寄せながらもコクッと飲み込むのを確認し、お茶碗に余った雑炊を下げる。 お茶碗を洗っている間、少しでも体調を落ち着かせたくてソファー座るよう促す。 こいつには聞きたいことがたくさんある。まだ熱が下がっていない身体とは言え、今は少し落ち着いているように見えたのでずっと気になっていたことを雪に問う。 「お前三食食ってる?」 「……」 俺に何か言われるのがだるいのか、雪は顔を伏せたまま黙ったままだ。少し雪が答えやすいように質問の仕方を変える。 「朝食はどうしてる」 「…みず…」 「水は食べ物じゃなくて飲み物だろ、昼飯は?」 「…バームクーヘンと紅茶」 「夜は」 「……てきとうに…済ませてます」 「そのてきとうの内容を聞いてるんだけど?」 「……」 言いたくないのか、言い出さないのか、顔を伏せたまま黙る雪を見て、“別に今更怒ったりしない"と告げると雪は、 「…食べたり食べなかったり…です」 こんな荒れた食生活で"よくここまで生き延びたものだ"と呆れつつも、やはりまともに食事をとっていないことがわかった。

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