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先生の家

そして、何よりも聞きたかったこと。 「この前繁華街に一緒に居た巨体の男は誰だ」 「えっ…」 ずっと顔を俯いて雪が咄嗟に顔を上げる。一瞬上がったと思った顔は即座にまた下へ向き、雪が下唇を噛みながらも、手が少し震えているのか、その震えに気付かれたくないのか、震えを抑えるように手を重ねていた。 相当言いたくないのであろう。一向に喋る気配がない雪に対して、気付かれたくない震えはより一層高まり、次第に息も徐々に荒くなっている。 今にも消えそうな、儚い雪を見ていたら勝手に身体が動いて、ソファーに座る雪を抱きしめていた。 細すぎる身体を優しく抱きしめ、震える身体を落ち着かせようと背中をさする。 「っ…は…っ…はっ…」 「ゆき、大丈夫だから。どこにもいかない。落ち着いてゆっくり呼吸しろ」 「っゔぅ…っはぁ…っはぁ…っはぁ…ッグス…」 巨体男の存在を聞いてからの雪は、先程よりも息が荒く震えも酷い。全身が震えているし、唇が真っ青に変わっている。目からは苦しさから出る生理的な涙が流れて、強く閉じられた瞼から溢れるほどだった。 苦しさから逃れようと必死なのか、雪は俺のシャツを強く握る。 「ッヒッ…っはぁ…っはぁ……ッヒッ…ッヒッ…っはぁ…っはぁ…」 吃逆も出始めて、だんだんと酷くなる症状を落ち着かせようと考えるものの、雪を抱きしめたままだし、シャツを握りしめられて動けない。 「ゆき、苦しいと思うけど少し我慢しろ。」 意識を朦朧とする雪に俺の声が届いているのかいないのか、そんなのはどうでもよくて、雪の唇に自身の唇を合わせて酸素を送る。 「…っんん!!っはぁ……っンン…っはぁ…っはぁ…ッン…」 「大丈夫、俺の息にゆっくり合わせろ」 「…ッン…っはぁ…っはぁ………っんン………っはぁ…」 「そう上手、もう少しゆっくり息吐け」 「……っは……っは……ッン……ッン……っは…」 次第に落ち着きを取り戻してきた雪に酸素を送るのをやめて、抱きしめながらも優しく背中を撫でていると、雪が顔を見上げた。 雪の表情は生理的な涙と、体力を消耗した赤い表情が重なり、無意識に煽られてると思いつつ黒い感情に蓋をする。 俺を見上げる雪との視線があえば、"ごめんなさい"と呟いて体力が尽きた雪は瞼を閉じた。

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