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第47話 那津

しれっとさらっとこの男は・・・ いま、なんだかすごいことを言わなかっただろうか。 「いますげーわかった。 じゃなきゃそんなこと思うわけない。 だってお前、男なんだから」 さすがにともちゃんを見る。 思わず見る。 そこにはなんならすっきり笑顔すら浮かべるともちゃんがいる。 「・・・なにそれ?」 わかるようでよくわからない。 ってかわからない。 まったく。 ともちゃんはなにを言ってるのだろう。 「男だってわかってて男のお前を抱いてみようと思うこと自体がおかしい。 もうその時点で、俺にとってお前はそういう対象なんだよ」 「そういう対象って・・・」 オレはきっと口が半開きで目をパチパチさせた。 暗い部屋で、けれどもともちゃんだけがよく見えた。 「きっと認めたくなかったんだな。 男とどうこうなんてそんなあり得ないこと、 お前に会うまで考えたことは一ミリもなかったんだから。 ある種のカルチャーショックみたいなもんだ。 だから試すって発想になったんだ」 「ともちゃ」 「大丈夫だ。俺はお前が好きだ」 「・・へ?」 「そういう意味で」 また。あまりに自信たっぷりにサラリと言われて頭が混乱する。 だってそんなことあるだろうか。 ・・・いや。ない。 あるわけない。 ともちゃんが・・・こんなハイスペックが男を好きになんて・・・ そんなことはあり得ない。 「ともちゃんは男を好きになんてならないでしょ?」 「おそらくな」 「って、言ってることおかしいじゃん」 「だから那津を好きになったんだって言ってんだろ」 「っなに言って」 「そう考えたら別にそこまでおかしなことじゃない」 「あのさぁ」 やっぱり呆れる。 このヒト、なにもわかっていないんじゃないだろうか。 「オレちんこ付いてんだよ?」 「いまさらわかりきったことを」 今度はともちゃんが呆れたって顔をした。 「わかってないよ」 「わかってるよ」 「見たことないじゃんっ」 「じゃあ見せて見ろ」 「っ・・はぁ?なに・・っ・・言って」 なぜか思わず、オレはオレの身を守るべく身体をギュッとした。 またオロオロしてゴクリと唾を飲む。 暗いのになぜか、ともちゃんの瞳だけはキラキラ・・・ぎらぎら・・・ なんだか怖いくらいに光ってみえて・・・ 「っ・・・」 なぜだか壁の方に身体を寄せる。 ってか寄せられてるって感じだ。 好きなヒト・・・好きな男・・・なハズなんだけど。 ・・・こわ・・・ どうにもともちゃんがオレを好きだなんて信じられない。 「さっきまでの俺も、あれはあれで本気だった。 でもいまの俺はもっと本気だ」 「っも・・もっと本気ってなんだよ」 「さぁ、なんだろ。 お前といると初めての気持ばかり感じるからな」 「・・ぇ?」 「お前といると新しい自分にばかり出会って戸惑う」 「ともちゃん・・・」 それはちょっとした、ともちゃんの弱みだった。 オレにとってそんな姿はあまりにキュンっとする。 こんなところでそんなことを言っちゃうなんて、 ああもう・・・このヒト、 本当にわかってないでこんなセリフを言ってるのだろうか。 期待してしまいそうになって・・というか、 本当はもう期待しまくって全身バクバクいってるのをわかっていて、 頭ん中だけが落ち着けって声を出してる。 「信じろ。俺もびっくりしてる。でも嘘じゃない」 「ウソだなんて思わないけどっでもなにか・・・ なんかの気まぐれとか・・勘違いとかさ」 「お前バカか。 気まぐれや勘違いでちんこ付いてるヤツを抱 こうなんて思わない」 「そんなん言い切れる? 言い切れるの? ともちゃんだってけっこうご無沙汰じゃんか」 「だからバカ言うな。 ご無沙汰だからって男を襲うわけないだろ。 それこそ世の末だ」 「バカバカ言うなっ・・てかなんだよそれ。地味に傷つくっ」 「仕方ねーだろ。本当のことだ」 「だったらなおさらおかしいじゃんかっ」 「言っただろ。お前だからだ」 「っだからもぅ・・っ・・・なんなんだよ・・っ」 暗闇の中、ともちゃんには適わなくて オレはもう黙るしかなかった。

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