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第52話 友哉

ーーー・・・ リビングのドアが開くと、 携帯を見ていた視線は反射的にそちらに向いた。 いつものように半そで短パン姿の那津が 視線を伏せるようにして入ってきて俺はドキリとする。 「・・っオレも飲もっかな」 独り言のような、そうではないようなつぶやきと共に、 視線が絡むことなく、今度はキッチンに消えると 「ともちゃんもまだ飲む?」 「、、ああ」 声だけが聞こえて、 その声に返事をした俺はもうぬるくなって残っていたビールを飲みほした。 いままで検索したことのないワードを打ち込んでいた 手元の携帯の画面を暗くすると、 なんとなく画面を下にしてテーブルに置く。 ドクドクする身体を誤魔化すみたいに視線が泳いで、 何度か瞬きを繰り返した。 缶ビールを二本とグラスをひとつ持って来た那津が、 先に俺のグラスにビールを注いでくれた。 「ありがと」 「ん・・なんかいまだに緊張が解けない」 「俺もだ」 本当のことを言う那津に俺も本当のことを言えば、 どこかホッとした顔して、ふへへって笑う那津とグラスを合わせる。 互いにゴクゴクっと三口ほど、そのまま一気に身体に流し込んだ。 「はぁ~~~・・うまっ」 那津の自然な笑顔に勝手に目元が緩くなる。 この笑顔が見れてよかったと本当に思った。 「明日、映画はどうする?」 「お前が行きたいなら行こう」 「ともちゃんが行きたがったんじゃん」 「そうだっけ?」 しばらく、普段と変わらないように意識しながら、 風呂上がりの妙に色っぽい那津と会話をした。 ーーー・・・ 「そろそろ寝るか」 「ぅん・・」 そう声をかければ明らかに動揺する那津に、 俺は一体どうしたらいいだろうかと迷う。 さっき携帯で調べてた、たくさんの文字情報が、、、画像なんかも。 あまたの中をぐるぐるとする。 片づけをしてから行くから先に寝室に行くよう言われて ひとりで寝室のドアを開けると、 乱れたベッドが自然と目に飛び込んでくる。 さっき自分がこの部屋でなにをしたのかをもう一度しっかり思い出して、 そうして、那津のキス顔を思い出した。 「ともちゃん?」 ドアを開けたままで突っ立ってる俺に那津が近づいてくると、 俺は那津の手を握った。 「ちょっと話したい」 「っ・・・ぅん」 そのまま乱れたベッドの上に二人で座ると、 明らかに緊張した表情の那津がまくらを抱えた。 「お前ってわかりやすいな」 『きっと気持ちぃと思うよ』などと言っていたあの面影が消えていて、 それはやっぱり可愛らしく映った。 「悪かったね」 「悪くなんてない。褒めてる」 どこか照れてるように可愛らしくうつむく那津に、 手を出したかったがなんとかこらえた。 「今日は悪かった」 「もういいよ」 やっぱり視線が絡まない那津を見て、 コイツはいつからこんなに可愛かったんだっけと想いを巡らせる。 「、、、さっき少し調べた」 「なにを?」 「男同士でどうヤんのかを」 身もふたもない言い方をすれば、那津はわかりやすく狼狽した。 「っも・・っもぅさ・・っともちゃんって」 「なに?」 「・・っさっきはどうするつもりだったわけ?」 「だよな。俺も不思議。勢いって怖い」 まったく、さっきの自分は自分らしくなかったとまた、思った。 女性経験は年齢的に考えても決して少ない方ではないだろう。 けれども男は・・・男と・・スるのは。 抱くにせよ抱かれるにせよ完璧に初めてだ。 「那津はどっちなの?」 「え?」 「抱かれる人?抱く人?」

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