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第61話 那津

いままでずっと、 出会ってすぐに服を取っ払って腰を振って来ちゃったオレは、 恋人同士の普通を知らないのかもしれないって思った。 「普通はそういうもんなのかな」 「さぁな。 ぶっちゃけ普通なんてどーだっていいんだ。 俺がそうしたいってだけ」 ともちゃんがぎゅっとしてくれるオレの身体を、 ともちゃんはきっとオレより大事にしてくれてんだって感じて、 なんだかあったかい気持ちになる。 「お前言ってただろ。そういう経験は山ほどあるって」 「山ほどとは言ってないけど・・」 いまさら濁してどうにかなるものじゃないくせに、 そして実際にそうしてきたくせに、 改めて言われるとどこか後ろめたい。 「俺は別格だ」 「どうゆうこと?」 「正確には別格で居たいっていう俺の希望だ。 俺にとってお前は特別だからな」 今度こそ それはオレが男だから・・という言葉は飲みこんだ。 いい加減オレも、ともちゃんはオレが男だってことを ・・・男と恋愛をするってことを・・・ もう本当に受け入れてしまっていて、 そこまで気にしていないのかもしれないって感じるから。 きっとこのヒトは・・・オレを大事にしてくれてるってだけ。 「お前にとっての特別になりたい」 また。 そんな言葉は聞いたことないって台詞をサラリと言って、 ともちゃんはオレをドキリとさせる。 「俺にとってお前は特別なんだよ。 少なくともお前は俺の知る限り初めてで唯一の、 一緒に日常を過ごしていきたいと思う相手だからな」 誰かと一緒に暮らすのはムリだと言っていた ともちゃんを思い出した。 そして、オレに出ていくなと言ってくれたともちゃんを思い出す。 「お前はもうすでに俺の日常の日々の中にいる。 だから大事にしたい」 一瞬、ドクンとしてきょとんとした。 だってそれはまるで・・・ 「なんかそれ、付き合ってるっていうよりもう結婚してるみたいだね」 へらっと笑ってサラリと思わずそんなことを口走る。 そして口走ってしまって後悔した。 だってそんなことはあり得ない。 一瞬で空気が重くなってしまった気がしてものすごく焦った。 「っごめ。オレなんか変なこと言った」 やばいやばい。 さすがにこれは自分で自分の首を絞めている。 反射的に身体を引き離そうとすると、 ともちゃんがそれを許さなかった。 「、、、いや。確かにそうかもな」 キッチンで。 こんな風に抱き合って。 さすがにヤバい。 これ以上、期待してしまうのは。 「いやちょっと・・っいまのは忘れて」 「なんで?好き同士が一緒に暮らしてればその発想はおかしくはねぇ」 「っでも忘れて。今のはさすがに・・・」 言いよどむオレに、 ともちゃんはまた、首筋にちゅっと唇を押し付けた。 「だからなんで?」 「だっ・・て・・まだエッチもしてないし」 自然と視線は泳いだ。 いまさらわかってくる。 オレにとって、 このヒトとちゃんと身体を繋げるってことはちょっと怖いことだ。 エッチはしたい。 でもどう思われるのか・・・ 男が初めてのともちゃん。 そもそもちゃんと出来るのかすらもわからないのだ。 「なに?それは襲っていいって言ってくれてんの?」 「そりゃあオレは・・」 でも出来るなら・・・ どうなるかの不安はあっても、 普段隠してるとこをさらけ出して腰を振りたい。 ともちゃんと一緒に・・・

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