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第63話 友哉

そんなことは俺もはじめてで、 この先に進んだ自分が果たしてどうなるのかは ぶっちゃけわからないってのが本音だった。 ただそれでも、、、 「正直、俺もわかんねぇって思うよ。男同士は初めてだ」 「・・ん。だよね。簡単じゃないよね」 「でも、、、」 谷間のない胸元辺りに置いた手のひらをそのままにして、 片手で掴んだ細い腰を逃がさないように力を入れた。 「那津はどんな顔すんのかなって思う」 「え?」 「抱いたらどんな顔してどんな声をあげんのかなって」 すると、那津の赤い顔はさらにますます赤くなった。 「っは・・はずかしっ・・ともちゃんそんなこと思うの?」 「思うよ」 那津を見てると愛しいって言葉が勝手に浮かぶ。 可愛くて愛しい。 それはきっと人生で初めて味わう気持ち。 那津が、、、少なくともいままでの人生では那津だけが。 俺にとってはその存在なのだ。 きっと、もうすでに一緒に住んでいて、 まさかこんな関係になると思ってなかったのが良かった。 お互い、なにも期待していない間柄だったことが良かった。 なにより合意なく自分から襲ってしまったという事実を 認める以外なかったおかげか、 男同士のアレコレに未知数ではあっても、 自分が可能性にかける気持ちには十分前向きだ。 那津がそうさせてくれたのだ。 気持ちに正直になってしまえば俺の場合、 男とか女とかいったことなんかよりもただ、那津に触ってみたい。 それはとても単純な理由だ。 那津はそういう意味でさわりたいと思う相手だからだ。 「俺はお前に触っていいの?」 エプロンの上、 胸元辺りに置いた手のひらをゆっくりと、さらに下に動かす。 「っともちゃ・・・」 逃げ腰にはなってるが、 逃げ出そうとはしてない那津の、 腰辺りに当たってる膨らみがドクンと膨らんだ気がする。 手のひらがヘソの辺りまで来て無意識に、 那津を抱き寄せる片手に力が入る。 「このエプロンの下。 お前の素肌に。直接触っていいのかって聞いてる」 ハッキリ言えば、那津がまたゴクリと喉を鳴らした。 「触っていいっていうか・・」 「っていうか?」 「・・っともちゃん、ホントに触れるの?」 どこか怯えた顔。 そして、それすらも可愛い。 「、、、どうかな」 と言いながらも正直、 那津の肌を触ることは大したことない気がしてる。 膨らむソコを握ることも。 きっとたいしたことじゃない。 俺はコイツに好きだと伝えてしまったその時点で、 もう大半のことに覚悟は出来ているから。 ただもう絶対に、コイツをどうしたって傷つけたくはない。 だからちゃんと不安を伝えた。 「でもまぁ、未知数とは可能性のカタマリでもある」 「なにそれ?」 エプロンの上の手のひらをそのままでゆっくり顔を近づけると、 せわしなく動くその睫毛を視線の端にとらえながら それを無視して那津の唇を塞いだ。 「ん・・っ・・」 唇が重なれば二人して口を開くのはほぼ同時で、 そのあとは当たり前のように舌が絡む。 ぴちゃぴちゃと響く独特な水音は、 なぜかいつもよりイヤらしく聞こえて妙に興奮した。 「っはぁ・・・っ・・」 息が上がる那津を見つめれば、 長い睫毛はもう揺れっぱなしになった。 「、、、まぁでも。 キスが出来た時点できっとなんだって大丈夫な気はしてる」 少なからずある不安は認める。 けれど、キスをしたくなる自分とそれを拒まないコイツが、 もうそれだけで答えになってる気がしてる。 「シャワー浴びる?」 「っえ?」 「浴びない?」 「っ・・・それって」 「俺はどっちだっていい」 視線を外さないようにして言えば やっぱり那津はまた、ゴクリと喉を鳴らした。

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