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第67話 友哉

那津だけを見た。 そして、小さく深呼吸をする。 俺もずいぶんと緊張しているのだ。 そして、ゆっくり那津の身体を覆うようにして近づく。 「お前は特別だ」 素直な那津には 俺も素直にならなければきっと届かない。 だってこれから言葉ではない世界で、 那津と二人きりで会話をするのだから。 「男とか女とかいう前に、俺は那津が好きだよ」 相変わらず、那津の瞼はせわしなく動いてる。 手のひらでゆっくり髪を撫でた。 そのままスベスベのほっぺを撫でて首筋を撫でて そのまま、、、鎖骨あたりを撫でた。 「男ってことももちろん考慮してる。 ただ俺は、単純にこれから好きな相手とセックスするんだって思ってる」 男とか女とかじゃなくて ただ 好きなヒトとして。 俺は那津を見ているのだ。 そして、もっと那津を知りたい。 触りたい。 それは恋人同士が許されているであろう、特別な触り方で。 他の誰とも違った方法で。 「いまから俺は、俺が好きで俺を好きな相手と 特別な時間を過ごすんだって思ってる」 「・・ともちゃん」 コイツが言うともちゃんは好きだ。 もっと呼ばれたいと思う。 突然、俺にとってコイツと肌を重ね合う理由は、 もうそれだけで十分なんだと気づく。 コイツが甘い声で俺の名前を呼んでくれれば、 もうそれが、 俺がコイツをそばに置いておきたい理由になっているのだった。 「なんか・・・すごいこと言うね」 はぁっと息を吐きながら那津が言った。 「本心だ」 覗き込むようにクリっとした瞳を見つめれば、 パチパチっと瞬きをして視線が揺れる。 けれど次の瞬間、どこか力強くこちらを見つめ返した。 「・・・オレもともちゃんが好き」 「ああ。知ってる」 するとようやく、ふふっとはにかむように那津が笑うから、 俺もホッとして笑みを浮かべた。 那津の口角が上がって、その両腕が背中に回ってそうしてようやく、 俺たちははじめて上半身裸同士で唇を重ねた。 那津はアツいんだな、、、と。 最初に思ったのはそれ。 那津の身体、、、触れ合う肌はとてもアツい。 額と頬と唇以外の那津の素肌に、俺ははじめて唇でふれていく。 細い首筋に唇を這わせて、無意識に細い腰に手のひらが滑れば、 那津の全身が震えて小さく声が漏れた。 那津の身体は綺麗に引き締まって、 無駄がないってこういう身体のことをいうのだろう。 イベントバイトは実は肉体労働だって言っていたのを思い出していた。 「綺麗だな」 「え?」 「那津は綺麗だ」 男でも、男の身体が綺麗だとかうらやましいだとか、 思うことはある。 ただそれに欲 情するか、、、といえば、 それはまたまったく別の気持ちだろうが。 そうして、那津はしっかり 俺を欲情させる肌を、身体を持っていた。 「・・っまだパンツ履いてるから」 照れる那津は可愛い。 だから、、、 「じゃ、脱がしてやるから全部見せろ」 思わずどこか、意地悪をしたくなる。 那津が俺の名を呼びながら、俺の腕の中、すぐ下でアタフタしていて、 だから思わず唇を塞ぐ。 「も・・っホント・・ともちゃんってば言うことがハズイよ」 那津の口を、ニヤケながらやっぱりどこか意地悪で塞いだ。

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