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第87話 那津
「こんなに気持ちよさそうなのに止めていいのか?」
余裕そうなともちゃんとは真反対に、世界が朦朧とする。
「っ・・ゆ・・くり・・なっ・・っ・・ゃっ・・っん・・だぁっ」
「ならどうして欲 しい?」
「っだ・・からも・・っ・・」
「止めねぇよ」
「っ・・・」
「ほら。嬉しそうに締まった」
ぜんぶをともちゃんにコ ントロールされている。
これだけぐったりしてても身体はともちゃんを受け入れてしまって、
本当にソコはヒクヒクと卑猥に動くのだ。
「も・・むり・・っほんと・・・んぁ・・っぁあっ・・っ・・」
「お前、俺は置いてけぼりかよ」
「ぃってく・・とかっ・・っんぁっ・・っあんっ・・」
置いてくとかそんなこと、ともちゃんが体力おばけなんじゃんっ
・・・と言いたいけれどやっぱり言葉にならない。
「俺がイくまでは止めねぇ。当然だろ」
「・・・も・・っ・・はや・・っく・・ってっ・・・んぁっん」
「お前、早くイけとかひどいな。
俺は那津と出来るだけ繋がっていたいんだよ」
もぉ・・っホントに信じらんない。
そんな台詞はまた全身がキュンとしてしまう。
もう感じたくはないのに、
勝手に身体はともちゃんを欲しがってしまう。
もう・・・こんなのホントに・・・
おかしくなっちゃう・・・・・
「せっかく繋 がれたんだ。もうちょい一個になってよ」
「はぁっ・・・っ・・ともちゃ・・っ・・・」
「いいね。もっと呼べ。俺の名前」
「っぅ・・・ともちゃ・・のっ・・ばかっ・・ぁっあっ・・」
頭ん中が空っぽで・・・
「んぁあ・・っ・・・あっー・・んぅっーーっ・・・っ・・」
あとはただ、喘ぎながらともちゃんにしがみつく。
「もっと、、、俺でいっぱいになれ那津」
いままでのセックスってなんだったんだろう。
あんなにたくさんしてきたのに。
イきながら、もう十分すぎるほどともちゃんでいっぱいだって、
身体も。心も。
ともちゃんだけだって全身を使って伝える。
それでも止めてくれないともちゃんに揺らされれば、
もうすべてを受け入れるしかなくなる。
そこからはもうただただ素直に、
オレのぜんぶを晒して、与えられる気持ちよさを全身で
感じることだけに夢中になった。
だってもう、オレにできることはそれだけだった。
もう敵わなくて・・・
「ともちゃぁ・・」
「那津、、、」
受け入れるしかない悦びと幸せを・・・
オレは初めて知った。
ーーー・・・
ベッドの上に裸のまま。
大の字で寝っ転がって天井を見上げる。
正確にはなにも見てはいないけど。
ずいぶん身体を揺らされて喘ぎ続けた結果、
頭も身体もぼーっとして、
とてもじゃないけど何かを考えることもすることも、出来はしない。
汗やら白い液体やらなんやらかんやらでベタベタした身体は、
動かしたくてもとてもじゃないけど自力では動けそうもない。
瞬きすら忘れて・・・
見慣れた天井を見ているようで見ていない、その状態を続ける。
「大丈夫か」
寝室のドアが開いて、ともちゃんが戻ってきたらしい。
・・・首を動かす気にもなれないから、見えないのだ。
そうして、ともちゃんはそのままベッドのふちに腰かけた。
「自分で飲めるか?」
声がする方に視線を合わせることすら出来ずにいれば、
オレをこんなにした元凶がどアップで視界に現れた。
「飲める?」
「飲めない」
なにも考えられない。
気づけばともちゃんの唇が重なって、冷たい水が口から喉を通るのを、
ただただ受け入れてゴクリと飲む。
「まだ飲む?」
「まだ飲む」
自分は決して頭は良くない。
けれどもさらにバカになっちゃったみたいに
ともちゃんの言葉を繰り返す。
そういうオレを見て、ともちゃんは穏やかに満足そうに笑って、
もう一度グラスから水を含むと唇を重ねて、オレに水を飲ませた。
「・・・信じらんない」
「なにが?」
「ぜんぶが」
ベッドのふちに座ってたともちゃんは、
天井を見上げたまま、まっぱで自力で動けないオレの隣に寝ると、
オレをぎゅうっと抱きしめる。
「可愛かったからつい」
「そういうレベルじゃない」
「怒ってんの?」
「怒ってない」
怒ってないけど・・・
「じゃあなに?」
「・・・びびってんの」
本当のことを言った。
すると自分の身体のドコも動かす気になれないオレの隣で、
ともちゃんは声をあげて笑うとほっぺにちゅっとする。
「お前を見るたび勃ちそう」
「っば・・っ・・・」
か・・・という前に、ともちゃんの唇がオレの唇に重なる。
力の入らない唇は、舌は、
簡単にその舌を受け入れてまた、好き勝手される。
いまだ敏感な身体はいちいちビクビクっと反応して恥ずかしいけれど、
どうやってそれを止めればいいかは見当がつかない。
だからもう放っておいた。
「やっぱお前は俺にとって特別だ」
ともちゃんは満足そうに笑う。
・・・厄介だ。
本当に厄介だ。
だってそんなともちゃんに
・・・あんな仕打ちをされたというのに・・・
オレはまた、どこかがキュンっとするんだから。
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