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第88話 友哉
はじめて男を抱いた。
俺より一回りも年下の。
こんなことが俺の人生で起こるなんて、予想だにしなかった現実。
おまけに、、、
「可愛い」
「っ・・・」
「お前マジで可愛い」
「っもぅ・・・わかったよ」
いまだ素っ裸のままで腕の中にいる、、、というか、
なぜか壁側を向いたままで視線が絡まない、
どこか逃げ腰な那津の全身を、
軽くホールドして逃げないようにしながらその細いうなじ辺りにキスをする。
「可愛いはイヤなのか?」
考えて見れば那津は男だ。
可愛いってのは誉め言葉にならないのかもしれない。
「ヤじゃないけど・・」
「けど?」
「っぃいきなりハズイじゃん、なんかもう全部がハズいっ」
壁を向いてた顔は今度はシ ーツに擦るようにされて、
正直、その仕草すらも可愛い。
まったくこちらを向く気配がない那津の背中には、
紅い斑点が点々としている。
その模様になかなかに満足して、
身体は勝手に動くとその背中にちゅっとして、
そして肩辺りに唇をくっつけると少し強めに吸った。
そうして何度かそんなことを繰り返してしまえば、
華奢なその全身にまた、唇を這わせたくなってしまって、
いったいどこで終わりにしたらいいのか迷いだす。
「っ・・ともちゃ・・・も・・っホントに今日は無理だよ」
「わかってる。さすがに俺ももう勃たねぇ」
ただ離れられないだけだったが、
なにかを誤解したらしい、
こちらを向かない那津の怯えて訴えるその声に思わず笑みが浮かんだ。
初めてコイツに触れたというのに、
気づけば喘ぎながら訴える「やだ」も「ムリ」も「止めて」も。
俺はほとんどを無視して、
その敏感な身体を好き勝手に揺らしまくってしまった。
「悪かったよ」
だから少しは反省する。
それはほんの少しだったが。
「・・謝んなくていいけど」
「手加減なんてお前に失礼だって思ってさ。ホントに平気か?」
けれどもそれは那津を好きだからこそああなってしまったわけであって、
俺はこのなんとも愛らしい男に嫌われたくはない。
「許す?」
「そんなの・・・最初から許してる」
「気持ち良かっただろ?」
「っもう・・ホントは反省してないだろっ」
思わず聞いてしまえば、
その反応は予想通りで俺をとても安心させるから、声を出して笑った。
いま、その表情は見えなくても、
那津がどんな顔をしてるのかが頭に浮かぶ。
その顔もきっと可愛いなと勝手に思いながら、
細い腰を引き寄せるとまた、うなじに唇をくっつけた。
「俺はすげー気持ち良かった」
「・・だろうね。あんなに腰振っちゃって」
「嫌うなよ」
「きらってなんてないよ」
「じゃ、気 持ち良かったって言え」
「もうっ・・」
那津に気持ちがいいと言わせたいのはなぜだろう。
数分前に見まくった、コイツのそのときの表情がチラついて、
身体の奥の方がゾクっとした。
「き・・気持ちぃけどイってるって言ったらちょっとはストップしてよ」
「なんで?」
「っな・・く・・っ・・・苦しいからっ」
「ウソ。気持ちぃだろ」
「だからっ・・・」
「だから?」
相変わらず、俺の唇は那津の身体にくっついている。
「好きでいいって言っただろ」
「そうだけどっ」
「気持ち良かったって言え」
「っ・・・気持ちよすぎるんだってば」
ああ・・やっぱ可愛い。
これはいったいどうしたことだろう。
「ヤバいかも」
「ヤバいのはこっちだよ」
「頭ん中が可愛いって言葉しか浮かばねぇ」
「・・っ・・・だからもうハズいんだってば」
また、シ ーツに頭を擦りつけるから、唇が離れてしまった。
那津の肩を撫でて
「そろそろこっち向け」
言いながら、その細い腰を掴んで身体をこちらに向けた。
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