「無口だな」 身体を拭き終わったらしいともちゃんは、 オレを後ろからぎゅっとした。 いまのオレにはともちゃんしか出来ない方法で、 さんざん運動したあとの・・・させられたあとの？・・・ベッドの上は、 どこか落ち込む瞬間になっている。 それくらいともちゃんとするセックスは、 ・・・セックス以外も・・・ あまりに満ち足りてしまって苦しい、抜けられない中毒性があるのだ。 「またなんか余計なことを考えてんの？」 考えてみればこのヒトって、オレよりずっと年上で しっかりしたトコに勤めてるのに、 どうしていまだにこんなオレみたいなのと一緒にいるのだろう。 考えてみなくても、わからないことはわかってる。 「・・・あんまり慣れてないんだよ」 「なにが？」 「なんていうかこういう・・・無条件の幸せみたいな？」 それはたとえば、セックスをした後に丁寧に身体を拭かれて、 こんな風に二人とも裸で、後ろから抱きしめられて 優しく髪にキスされながらダラダラとすごすこと。 だってそれはまるで、セックスだけが大事なんじゃないって 無言で言われてるような幸福感があるから。 まるでオレがこのまま、 いつまでもここに・・・ともちゃんのそばに・・・ いてもいいと思わせてくれる安堵感があるから。 いつだって条件が必要だった。 抱き合うことも。 付き合うことも。 誰かを必要とすることも。 幸せになることも。 ともちゃんがオレの身体をくるりとやって向きをかえれば、 目の前にはともちゃんのやたらと艶っぽい顔が現れて、 さっきまで繋がってたソコがキュンっとした。 ・・・あれだけさんざん擦られた後だというのに・・・ 「なら慣れろ。これからずっと続く」 サラリと言われて思わずため息をついた。 このヒトのすごいトコ。 「ともちゃんってホント、すごいよね」 半分呆れて言った。 もちろん半分は尊敬の気持ちで。 「なにが？」 「なんだか自信満々なトコ」 「そう見えるか？」 「見えるってか実際そうでしょ。自信の塊って感じ」 オレは天井を仰いだ。 ずいぶん見慣れたけれど、それでもまだ、 この天井が自分の家のモノだと思ったことはない。 ここはともちゃんの家だ。 考えなくても、二人の歴史としてはこの天井は まだまだずいぶんと浅いのだ。 「ならもっと俺をよく見てろ」 「なんだそれ」 天井をぼーーっと見上げながら言った。 すと、ともちゃんはオレの髪を撫でる。 「お前は俺を誤解してる」 ともちゃんを見た。 優しい顔だ。 強いけど・・・このヒトはとっても優しいのだ。 「・・・わかった。ずっと見ててやる」 生意気な言い方をした。 唇を尖らして。 だってなんだかシャクだったから。 いつだってオレばかりが余裕がない。 そしたらともちゃんは声をあげて笑う。 「言い方」 そうして、ともちゃんのそのどこか豪快な笑い声が、 オレはすごく好きだなって思う。 笑われているのに。 愉しそうに笑って、ともちゃんはオレを包んでおでこに唇をくっつける。 ・・・それも。あまりに居心地が良すぎていまだに慣れない。 目の前の胸元を見つめる。 本当はその、キレイに筋肉がついてるともちゃんの胸元に、 オレだって唇を寄せたいのだけれど・・・ 「約束しろ」 「・・なに？」 唇をくっつけるタイミングを失って、ホッとしてガッカリした。 「働きたいなら働けばいいし、友達にも会いに行けばいい。 お前がなにをしたって自由だ。ただ」 「・・・なんだよ。怖いんだけど」 ノンケのハイスペックなこの男がいったい何を言い出すのか、 オレには思いつく、明るいなにかが出てこない。 「お前が戻ってくるのはこの部屋だ。 この部屋じゃなくてもいいが、俺がいる場所だ」 ・・・ほら。 やっぱりだ。 オレが思いつかない、 オレを喜ばせることを、いともあっさり口にするんだこのヒトは。 「ホント、ともちゃんはすごいよ」 「ココにいるって言え」 ともちゃんに包まれながら目をパチパチした。 だってなんだか可愛いから。 ともちゃんは強くて優しくて・・・可愛い。 「那津」 ドクンとする。 このヒトの呼ぶ、オレの名前はなんだかあまりにヤラしく響いて、 もう全身がいたたまれない。 「言わないならもう一回スる」 「っな・・・」 ともちゃんの手のひらがケツを撫でると、全身がゾワっとしてビクンとする。 「さすがにもうムリだよっちょっとは休憩して」 「ちょっとは休憩したらいいってことだな？」 まったく。 こういうところも敵わない。 「俺のそばに居るって言え」 ケツを揉みながら、髪にキスしながらなんて、ズルすぎる。 ケツごと腰を引き寄せられて、 オレのふにゃチンがともちゃんのふにゃチンにくっついた。