5 / 55

#3

絶対、後悔する… 電話を切った後、すぐにタクシーを呼んで到着を待つ間、風呂に入った。そして、一番きれいな服を着て、一番素敵に見える様に髪をセットして、玄関を出た。 久しぶりに浴びた太陽の光は俺を容赦なく照り付けて目をくらませた。堪らず顔を伏せると、見た事も無いじょうろを足元に見つけて、打ち水をされた庭先と玄関前の濡れた地面に胸が苦しくなって行く… おもむろに裏庭へ回って、いつもあの子が座っているであろう場所を眺めた。窓の死角になっている場所は、パリスの仕業じゃない…人の手によって草むしりがなされて、土をほじって作ったのか…鶏と、ピアノの形をした造形物が出来上がっている。 あぁ、こんなに胸が苦しくなるのは…どうしてだろう… こんなに、いたたまれない気持ちになるのは…どうしてなんだろう… 「豪ちゃん、俺は彼女しか興味が無いんだ…ましてや、男の子の君なんて論外だ。」 不思議そうに首を傾げて俺を見上げるパリスにそう言うと、颯爽と踵を返した。敷地の外には、既に到着を済ませたタクシーが今か今かと俺を待っている… 彼女に会える。 もう、会えないと思った愛しい人に会える。 それは、堪らず嬉しい筈なのに…興奮と、喜びと…後ろめたさを感じるんだ。 もう会わないと誓約書を書かされた。 違反した事が先生にバレれば…俺はもっと吊られる。 全てを賭してでも、彼女に会う価値はあるのか… もう、良く分からないんだ。 ただ、ここまで来たら…行くしかない。止まる事なんて、出来ない。 観光地、軽井沢… ここが、豪ちゃんたちの言う所の“町”だ… 待ち合わせした場所には、既にあの人の白い日傘が立っていた。 「あぁ…!」 今すぐに抱きしめて、今すぐ愛して、今すぐ自分だけの物にしたい…! 抑えきれない感情で足早に近付いて行くと、煩わしい信号に足を止められた。 その時、強烈な視線を感じて彼女から視線を移した。その先には、向かい側で信号を待つ…豪ちゃんの姿があった。俺が気付くよりも先に気付いていたのか…あの子は悲しそうな瞳で俺を見つめていた。 こんなタイミングで君に会うなんて…まるでドラマみたいだね。 心の中でそう話しかけると、あの子から視線を外して白い日傘を見つめた。 君の前で見せつけてあげる。 俺が誰を愛して、誰に夢中なのか…教えてあげる。 君みたいなどさんこじゃ到底得られない…胸の高鳴りと愛欲だよ。 信号が変わると、豪ちゃんなんて無視して彼女の元へ一直線に向かった。 会いたかった… 会いたかった…! 会って、話がしたかったんだ…!! それなのに…俺の電話には、一度も出てくれなかったね… 白い日傘の前に立つとゆっくりと傾いた日傘が、中に居た彼女を見せてくれた。 「あぁ…!会いたかった!!」 堪らずそう言って抱き寄せると、細くてしなやかな体にあっという間に本能が目覚めて、すぐにキスをして舌を絡めた。 次の瞬間… ジャケットの裾を後ろから引っ張られて、後ろによろけた。 「おっと…」 すぐに振り返って見ると、そこには涙をボロボロと落とし続ける豪ちゃんの姿があった。 「ん…んん…!」 一文字に食いしばった口で唸りながら、俺の腕を掴んで彼女から引き剥がそうと力を入れて来る… 「…やめろ。」 そんな豪ちゃんを睨みつけてそう言うと、あの子は俺の腕にしがみ付いて、体で踏ん張りながら必死に彼女から引き剥がそうとした。 「離せって…!」 豪ちゃんの頭を手で押し退けて、あの子の肩を掴んで引き剥がそうとすると、豪ちゃんは俺を見上げて、悲しそうに眉を下げながら言った。 「んん…!だめ…だめぇ…!どうして…どうして?あんなに悲しんでたのに、あんなに苦しんでたのに、なのに…どうして、また苦しもうとするの…?!」 は…? 何言ってんだよ、こいつ… 「うるせえな…ホモガキが!触るなよ…放せよ…気持ち悪いんだよ…!」 無性に腹が立った… 苦々しい顔であの子を睨みつけて、彼女に聞こえない様に押し殺した声で威圧する様に凄んだ。そんな俺の表情と、声と、言葉にショックを受けた豪ちゃんは、唇を震わせて瞳を歪めた。 「…惺山、この子誰なの…?」 「知らない…」 怪訝な表情を浮かべる彼女にそう言って、俺の腕を掴み続ける豪ちゃんを思いきり振り払った。 ドサッ! 勢い良く地面に転がったあの子を見下ろして、納まらない怒りをぶつける様に蔑むような目で言った。 「…たかりだろ?汚い恰好をして…金が欲しいんだろ?」 ポケットから小銭を出して、呆然と俺を見上げ続けるあの子の前に放り投げると、すぐに、あの子の見開いたまん丸の瞳は悲しみに歪んで、ボロボロと大粒の涙が溢れてこぼれて行く。 「うっうう…うわぁぁあん…!!」 …調子に乗るなよ、クソガキ。…分かった様な口を利くなよ。 まったく、苛つくぜ… まるで、俺の心の内を見透かした様なあの子の言葉に、激しく動揺して、反射の様に激しく憤って、過剰に突き放した。 「あっああぁ~ん!ああ~~ん!」 泣き声を上げて道路に突っ伏すあの子を無視して踵を返すと、彼女の腰に手を当てて、いつもそうした様にエスコートをしながらその場を立ち去った。 やっぱり、この人を愛してる… どうかしていたんだ。 あんな汚いどさんこにときめいたりして…馬鹿だった。 うっかり危ない道に行ってしまう所だったよ… 「あの子、本当に知らない子なの…?」 俺を見上げてそう尋ねて来た彼女にキスすると、にっこりと微笑んで言った。 「あんな子、知らない…」 軽井沢の街を彼女と歩いて以前の様に腕を組むと、慰謝料を取られた事実や、助けて貰えなかった事実。誓約書を書いた事実など忘れて…目の前の彼女の笑顔にだけ溺れて、何も分からなくなって行く。 ただ、しがみ付く様に…この状況を楽しむしか、選択肢が無い様に思った。 「惺山…ここに、落ち着ける所があるの…どうかしら?」 そんな誘いの文句…ずっと待っていたよ。 「…もちろんだよ…」 うっとりと瞳を細めてそう言って、彼女の細い首筋にキスをしながら、抑えきれない興奮を伝える様に体を抱き寄せた。 やっぱり、この人を愛してる… 連れて来られたホテルに入るや否や、彼女の服を脱がせながら熱いキスをして、会えなかった日々の鬱憤を全て肉欲に変えながら言った。 「堪らないんだ…!愛してるんだ!ずっと、ずっと…抱きたかった!!」 ベッドに押し倒し、恍惚の表情を浮かべながら俺を見上げる彼女の胸に顔を沈めて、鼻に香る香水のきつい香りにクラクラと頭をおかしくしていく。 「惺山…惺山…!もっと、もっと愛して…!」 そんなよくある言葉に馬鹿みたいに興奮して、理性を失くした動物の様に肉厚で柔らかい彼女の唇にキスをして舌を絡めていく。 「惺山…怒らないで…」 耳の奥に、彼女の物でも自分の物でもない…あの子の声が聴こえて来て、さっき振り払った時に、豪快に体を打って顔を歪めたあの子の顔が目の前を横切って行く… そして…まるで、俺の選択を必死に止めようとする様に泣き叫んだあの子の表情が、続けとばかりに、目の前を横切って消えて行った… どうして、今…こんな萎える事を… 奥歯を噛み締めて瞳を歪めると、目の前の甘い香りのする体にのめり込む様に溺れていく… 「あぁ…気持ちいい…。はぁはぁ…どう?俺の、好きだろ…?」 そう言いながら彼女を見下ろして、俺の腰の動きに合わせて喘ぐ彼女の姿に、クラクラしてくる… あぁ…やっぱり、この人を愛してる… また、会えて…良かった… そうだろ…? 激しいセックスを終えて、すっかり果てて、うつ伏せに突っ伏して動かなくなった。そんな俺の背中を撫でながら猫なで声で彼女が言った。 「…ねえ、あなたの名誉を取り戻してあげる。だから、東京へ戻って来て…惺山。」 あぁ… 彼女は何もしてくれなかった訳じゃないんだ。 俺を助ける為に…あんな風に蔑んだ目で見たり、電話に出てくれなかったんだ… クスクス笑いながら彼女を見つめて、美しい長い髪を指ですくいながら言った。 「…本当?」 「えぇ、本当よ…?彼に言ったの…私には若いツバメが必要だって。だって、彼はフランスに行ったっきり連絡すら寄越さないんだもの。きっと、向こうに女でも囲ってるに違いないんだわ…。そんなの、フェアじゃないでしょ?そうしたら、彼…好きにすれば良いって…」 え…? 「ねえ…私があなたのパトロンになってあげる。私のお抱えの、作曲家…。ふふ、素敵じゃない?」 俺の体にしなだれかかって顔を覗き込んだ彼女は、鼻の頭をちょんちょんと触りながら俺の表情を伺い見た。 先生への当てつけの為に彼女は俺と寝ていたの…? そんな物の為に、俺は自分の作曲家人生を終わらせてしまったの…? 眉間にしわを寄せた俺の顔を見て一気に不機嫌になると、彼女は口を尖らせて言った。 「…なぁに?不満なの?」 「いや…」 若いツバメ…パトロン…お抱えの作曲家…どのワードを拾っても、愛に結び付く様な物では無い。結局…彼女が俺に望む事は、体なんだ… 「…別に良いのよ?もっと可愛くて、従順で、下半身の強い子を見つけたから…。ただ、あなたがあまりにもみっともなく泣いて縋って来たから、可哀想だと思って声をかけてあげたの。てっきり、喜び勇んで飛びついて来るかと思ったら…妙なプライドがあるのね?」 突き放す彼女の言葉に何も言えずに押し黙って、自分の右手にはめ直した指輪を見つめると、彼女の右手をさりげなく横目に見た。 はめていない… 俺の贈った指輪を、もう…彼女ははめていなかった。 人生を賭して得たものは、パトロンの愛人の作曲家…なんて、糞みたいに情けないポジションだなんて…笑える…。 求められれば彼女を抱いて、要らなくなったらポイ捨てされる…そんな役回り、ごめんだ。 愛してる…そう思っていたのは、どうやら俺だけだったみたいだ… 「…考えておくよ。」 力なくそう答えて、ベッドのシーツに顔を埋めた。押し寄せて来る後悔は先に立たない物…そうと分かっていても、俺はしてはいけない事をしてしまった… 豪ちゃん…ごめんなさい… あの子が傷付く言葉を、わざと使った。 きっと…今頃、泣いているに違いない。 目の前の雌豹と違って、あの子は…可愛い鶏。雑草を食べて、卵を産んでくれる… 何も望まず、何も言わないで、ただ傍に居てくれる… 「次は無いの…。もう、あなたとは会わない。せっかくチャンスをあげたのに本当に馬鹿ね。あなたの曲なんて、彼が後ろ盾でいなかったら誰の目にもとまらないわ。」 散々セックスを楽しんだ癖に、用が済んだとばかりに彼女は態度を豹変させて、俺を詰り始めた。きっと、俺が、思っていた反応を示さなかった事が不満なんだろう… パトロンの愛人の作曲家なんて最悪だ…今まで見てきた中で一番軽蔑するポジションさ。実力も無いのに金を落として貰えるせいか、どんどん腐って行くんだ。そして、新しい投資先が見つかれば簡単に捨てられて、路頭に迷う… そんな人を何人も見て来た。だから、そんな役回り…絶対にごめんこうむりたいね。 「…そう。」 ベッドから体を起こして、自分が脱ぎ捨てた服を淡々と着なおしながら、まるで大きな嵐が過ぎ去った後の様に、静かに失ったものを数えた。 徹の期待… 誓約書を破って、再び先生を裏切った… そして、何よりも… あの子をズタズタに傷付けた… 「はぁ…」 ため息を吐いて項垂れた俺の背中に、白い蛇の様な彼女の両手が伸びて体を締め付けながら、俺の耳もとで甘く囁いた。 「惺山…どうする?」 どうする…ね… 「チョット…ニホンゴ…ヨク、ワカラナイ…」 煮え切らない態度に苛ついたのか…彼女は俺の背中に爪を立てて、脅すように言った。 「…私たちがこのホテルに入る所を撮影している探偵がいるの。主人が指示して、私をつけさせた。彼を買収して、今日の事を無かったことにしてあげるって言っても…あなたは私の話を断る…?」 詰んだ… ヘラヘラと鼻の下を伸ばして言われるままに付いて来て、証拠を押さえられた。あんだけ痛い目を見たのに…俺は何も変わっていなかった。 馬鹿だ… そして、彼女に飼われて生きていくか…先生に慰謝料を倍増されて生活を破綻させるか…この二択を選択しなければいけなくなった… 最悪だ… 「愛してるんだ…愛人なんて、そんな物になりたくなかったんだ!でも…あなたの傍に居られるのなら、何でもいい…!」 取り繕う様にそう言って彼女をベッドに押し倒し、狂った頭のまま、深くて長いキスをして頭の中を真っ白にしていく… 「ふふ…可愛い!惺山、可愛い…!」 楽しそうに声を弾ませる彼女の声を聞きながら、もう後戻りが出来なくなった…そんな自分の状況を把握して、自暴自棄になった。 「…もう一回抱かせろよ…」 乱暴にそう言って、着直したシャツを脱ぎながら彼女の体に圧し掛かって行った。 豪ちゃん…もう、パリスは必要ない。 お家に連れて帰ってあげて… もう、俺はお終いだ… こんな雌豹に目を付けられて、骨の髄まで吸われて、もはや後戻りなんて出来なくなった。あれだけ君が止めてくれたのに…酷い事を言ってごめんなさい。 今更、分かった。 会いに来ては駄目だったんだ… 散々セックスをして腰を怠くすると、やっと満足した彼女と一緒にホテルを後にした。 何をしてんだ…何て疑問も、情けない…なんて感情も、すべて頭から消して… もう…俺はお終いだ… どんなに素晴らしい作品を発表したとしても色物の様に見られる。先生の軽蔑の眼差しを受けながら、金を落としてくれる彼女に傅くんだ。 屈辱以外の何物でもない… でも、この話を蹴ったら俺は破滅する。 誓約書を破った俺に先生は容赦をしないだろう…なんてったって、慰謝料に稼いだ金額分きっちり請求してくる様な人だ… すってんてんの今…慰謝料の倍額は借金を意味する…。俺の様に実績もない作曲家風情が金を借りられる場所なんて、高い金利の町金くらいしかない…。あっという間に首が回らなくなって…自殺コースだ。 どのみち、最悪なんだ… 「一曲作ったら、東京へ戻ります…」 日も落ちた午後7:00… タクシーに乗り込む彼女にそう言うと、俺を見つめて彼女が言った。 「ねえ…惺山、私の事…愛してるでしょう?」 愛…? クソッタレが… 実感のない表情で彼女を見下ろして、事務的に作られる笑顔と唇で言った。 「えぇ…だから、こんな風に落ちぶれてまでもあなたに会いに来たんだ…そうでしょう?」 そうさ…馬鹿みたいにしっぽを振って、ノコノコとやって来たんだ… そんな俺の答えに満足したのか彼女は嬉しそうに微笑んで手を振った。あなたの笑顔を美しいだなんて思えなくなったのは…檻に入れられたせいかな。 「はぁ…」 体が怠い…頭が重い…心が最悪な気分だ… 「んん…!だめ…だめぇ…!どうして…どうして?あんなに悲しんでたのに、あんなに苦しんでたのに、なのに…どうして、また苦しもうとするの…?!」 そう言ったあの子の顔と声が、頭の中をずっとリフレインする… 今更、君の言葉の意味が良く分かるなんて…本当に俺は大馬鹿野郎だ。 ねえ、どうして…? どうして、俺が苦しんでいると分かったの…? どうして、悲しんでいると…分かったの…? あんな酷い仕打ちをした今となっては、確認しようも無い… 「はぁ…」 口を開いてはため息しか出ない体を抱えてタクシーに乗り込むと、彼女とは反対の方向へと帰って行く… 馬鹿やったな…最悪だ… ふと、携帯電話に沢山のメールが入っている事に気が付いて、確認した。 どれも徹からだ… 「…何だろう」 ポツリとそう呟いて内容を確認した。そして、一気に青ざめる… “豪ちゃんがいなくなった。お前、どこに行ったか知らないか…?” “豪ちゃんが迷子になった。お前と一緒に居ないか…?” “連絡くれ。哲郎が心配し過ぎて死にそうだ…” 「…止めて下さい!」 咄嗟にタクシーの運転手にそう言って、開き切らない後部座席のドアを押し開けて飛び降りた。怠い体を忘れた様に、来た道を走って逆戻りする。 心当たりなら…ある。 息を切らしてタクシー乗り場に戻ると、俺を見つけて泣きじゃくるあの子を見つけて肩から力が抜けて行く… はぁ…やっぱり… 「なぁにしてんだ…!」 すぐ傍まで駆け寄って怒鳴り声をあげると、あの子はボロボロと涙を落としながら俺を睨みつけて怒った様に地団駄を踏んだ。そんな様子を横目に見ながら俺はあの子の手を掴ん引っ張った。 「…ん!ん~んっ!!」 唸って俺の手を払い除けると、あの子は両手を固く握って、俺を見つめたまま瞳を歪めて涙を落とし続けた。 そんな、あの子の様子が…まるで、事の顛末を知って…だから言ったのに!と、俺を詰っている様な気がして…いたたまれず視線を逸らした。 知る訳無い… 話してもいないんだ。 彼女が誰なのかも、俺とどんな関係なのかも、分かる訳が無いんだ。 「…みんな、心配してる…帰るぞ…」 表情を変えずにそう言って、手を伸ばす度に振り払おうとするあの子の肩を掴んで、乱暴にタクシーに押し込んだ。 「…全く、心配をかけるんじゃないよ…」 タクシーの中、凄い剣幕で俺を睨み続けるあの子にそう言うと、顔を背けて手元の携帯に視線を落とした。 “豪ちゃん、保護した” 徹にそうメールを入れて、何通も届いた彼女のメールを確認する事なく眺めると、怒りの治まらないあの子を横目に見て、クスクス笑って言った。 「…どうして、怒ってんだよ…」 聞こえてんだろ…? だったら…そんな怒った顔してないで、答えろよ… 「なぁ…ふふ、なぁんで怒ってんだよ…?」 ニヤニヤしながらそう言うと、口を一文字にして怒ったまま何も言わないあの子の頭を一発引っぱたいた。 「豪…俺に文句があるのか?なあ?だったら黙ってないで、話せよ…?」 そんな煽る様な俺の言葉に下唇を噛むと、あの子は目に力を込めて俺を睨みつけた。 なんだよ… ムカつく、ガキだな… 俺の事が大好きなホモガキの癖に、こんな目を向けやがって。 ムカつくぜ… 「お前は、馬鹿だ…そう、思ってんの?」 口元をニヤ付かせてあの子を見つめてそう言うと、乾いた笑顔を向けてあの子の頭に手を伸ばした。 「同じ事を何回も繰り返す…学習しない、馬鹿だ…そう思ってんの?」 あの子を見つめたまま頭を撫でると、力いっぱいに髪を鷲掴みして、自分に引き寄せた。すると、豪ちゃんはギリッと歯ぎしりの音を鳴らして、俺の手を叩いて振り払った。 そんなあの子を見つめてクスクス笑うと、馬鹿にした様に鼻で笑って言った。 「はっ!軽蔑したの…?ふふ…田舎の汚ねえガキんちょには…分からないだろうね…。日がな一日中、鶏と遊んでる様な、お気楽な世界ばかりじゃないんだよ…。世の中はもっと汚くて、もっと危険なんだ。馬鹿野郎…」 吐き捨てる様にそう言って、あの子の頬を引っぱたいて笑った。 最低だろ… 両眼を歪めてボロボロと涙を落とし続けるこの子に、苛ついた感情をぶつけているんだ。選択を誤って…後悔している俺の代わりに、涙を落としている様なこの子に…やりきれない感情をぶつけている。 もう、俺はお終いだ… こんな事なら…昨日、お前に悪戯してしまえば良かった。 とことん軽蔑されて、とことん嫌われて…とことん希望を無くしたら、俺は彼女の檻の中でも…幸せに暮らして行ける気がするよ… 確かに感じた”安心感“も、確かに感じた”恋心“も…全て手放して、逃げ場なんて用意しないで…クズはクズらしく、慈しまれる必要も、君の様な純粋な人に思われる必要も、ないんだ。 「なあ…豪、俺の事が好きなんだろ?」 クスクス笑いながらそう言うと、涙を流し続けるあの子の目の前まで顔を寄せて、舌を出して言った。 「…ほら、舐めろよ…」 そんな言葉に悲しそうに眉を下げると、あの子は首を横に振って項垂れた。 なぁんだよ… つまんねえな… あの子の髪を鷲掴みして項垂れた顔を引き上げると、怒りから…悲しみに変わった泣き顔のあの子を見つめて言った。 「好きなんだろ…?舐めたいんだろ?舐めさせてやるよ、ほら…舐めろよ。」 「惺山…怖い…」 グラグラと瞳を揺らしてそう言うあの子を冷たい視線で見つめると、怖がって震えるあの子の唇に有無を言わさずキスをして、舌を絡めて吸った。 「ちっ!逃げんなよ…」 嫌がって体を捩るあの子を片手に抱きしめて…もう片方の手で、おでこから髪を撫で下ろしながら苦悶の表情を見つめる。 …固く瞑った両目から涙がダラダラと流れて、泣き腫らした目尻は擦り過ぎたのか…赤くなってしまっている。 「豪…」 唇を外してあの子を呼ぶと、うっすらと瞼を開くあの子の瞳を見つめて、もう一度キスをする。 トロッとトロけた瞳をする豪ちゃんが可愛くて…そのままあの子の股間に手をやると、嫌がって捩る足に自分の足を乗せて、動きを止めた。 「なぁんだよ…好きなんだろ…?」 そうだよ… 好きだったら、嫌がらないで…俺のイライラを沈めろよ。 いやらしい音をさせながらキスをして、勃起したあの子のモノを扱いて…俺の腕の中で、力なく項垂れるあの子を…好きに弄んだ。 「…お客さん。警察、行きますか?」 それも悪くない… もう、今となっちゃあ…渡りに船にすら感じる。 「はは…ただの、冗談ですよ…」 そう言って豪ちゃんから体を離すと、あの子は射精したのか…股間を濡らしていた。 酷い男だ… 本当に…最低で、酷い男だ… 「うっう…うう…嫌いだぁ…」 ありがとう… そう言ってくれて、良かった。 泣きじゃくりながら濡れた股間を気にする豪ちゃんを横目に、自分のジャケットを脱いであの子の膝にかけた。 優しい訳じゃない…罪悪感から目を背けたいだけだ… タクシーを停めた徹の実家の前には、豪ちゃんの帰りを待っていたいつものメンバーと、それぞれの両親…そして、鬼の形相の兄貴が待ち構えていた。 料金を支払って先にタクシーを降りた俺は、両腕を組んで仁王立ちする豪ちゃんの兄貴に言った。 「俺が叱った…。怖くて、漏らした。もう、これ以上言わなくても大丈夫だ…」 「え…?!」 ギョッと顔を歪めた兄貴は、俺の後ろから降りて来た豪ちゃんの腰に巻いてある俺のジャケットを見て、眉をひそめて言った。 「豪!哲郎のお父さんに謝れっ!お前を探して、とっても心配をかけたんだぞっ!」 「うっ…うう…う…ご、ご、ごめんなさいぃ…」 蚊の鳴くような震える声で、豪ちゃんが頭を下げて謝った。そんなあの子をため息を吐いて見つめると、俺の話を聞いていた哲郎の親父はコクリと頷きながら言った。 「駄目だよ…豪ちゃん。この人がいたから良かったけど、そうじゃなかったら、警察にお世話になる所だったよ…?」 いいや、違う。 豪ちゃんはいつもの様に俺の後ろをついて回っていたんだ。あんな風にされたのにも関わらずね…。きっと、彼女と楽しそうに過ごす俺の後ろを、泣きながら付いて回っていたんだ。そして、ホテルの前で…何時間も待って、こんな時間になってしまった。 俺がいなければ、この子は、こんな事はしなかった… 「じゃ…俺はこれで…」 短くそう言うと騒がしい彼らに背を向けて徹の実家の玄関に向かった。明かりのない玄関、手探りで鍵穴を探して玄関を開くと… 次の瞬間…肩を掴まれて、体が揺れて、頬に衝撃が走った。 哲郎が…俺を殴った… 「哲!何してんだぁ!」 親父の声なんて届いていない彼は、俺を睨みつけて目の奥をギラつかせて言った。 「…この野郎!お前が豪ちゃんに何をしたのか知ってるぞ…。あの時、豪ちゃんのすぐ隣に、俺もいたんだ…!よくも、あんな目に遭わせたな…!よくも、あんな事を言ったな…!」 押し殺した声は怒りを堪えても堪え切れない様に、かすかに震えて聴こえた…。俺の胸ぐらを掴んで自分に引き寄せると、哲郎は大人顔負けに凄んだ。 「…二度と、あいつに構うな…」 はは…俺はよく、第三者に警告を受ける人間の様だ… 「おい…勘違いすんなよ…。こっちだって鬱陶しくって迷惑してんだよ…このクソガキが!」 吐き捨てる様にそう言って、体格のさして変わらないあいつを押し退けて玄関に入った。 敷地の外で哲郎の親父が心配そうに息子の様子を伺って、他の家族は解散を始めた。そして、豪ちゃんは兄貴に殴られて地面に転がった。 あぁ…可哀想に… 「…こっち来い!この、馬鹿野郎!お前はいつも、いつも!どうして、普通にちゃんと出来ないんだ!人に迷惑ばかりかけて…!兄ちゃんは恥ずかしいぞ!」 「うっ…うう…ご…ごめんなさぁいぃ…ひっく、ひっく…ごめんなさぁい…」 怒声を浴びて泣きじゃくりながら、首根っこを掴まれて連れて行かれるあの子の後姿を見つめて、ゆっくりと玄関の引き戸をしめた。 可哀想に… 豪ちゃん…俺なんて最低でどうしようもないクズ。もう、近付いたら駄目だ… 可哀想に…ごめんね… ピアノの前に行って項垂れながらダラリと重い体を椅子に座らせた。そして、何もかもを忘れる様に一心不乱にピアノを弾き始めた。 ショパンの”別れの曲“… この曲は途中から様相を様変わりさせる…そして、俺はその部分が一番好きだ。 …木の葉の様に漂うだけしか出来ない思いが、右へ左へと大きく揺さぶられて…力なく地面に叩き付けられる。そんな…抗えない勢いと衝撃を感じさせて、静かな主題に戻りながら、諦めという無力感でとどめを刺してくれる。そんな情景が、今の俺には見えるよ… 自責の念…? そんな物、きっと俺は持ち合わせていない…だから、彼女にまた会いに行ったんだ… ”別れの曲”を弾き終えて、続けて弾き始めたのは、ショパン“ワルツ第7番 嬰ハ短調”… どうしてかな… こんな儚げな曲を、あの子を思って弾いているんだ。 哲郎に殴られても、お前が俺を憎んだとしても、なんとも思わない…。あのまま運転手に止められなかったら、俺はお前を犯す事だって平気で出来た。 自暴自棄になった…リミッターの外れたヤバい大人だ… もう、駄目だよ… 君が素敵だと感じた俺は、もう居ないみたいだ。 自分で招いた状況に苛立って近付く者を傷付けるだけの…クズだ。 もう、駄目だよ… 豪ちゃん、どんな気持ちで、俺と彼女の後ろをついて回ったの… あんなに、目じりを赤くして…ずっと泣いていたの… それは、失恋の悲しみ…? それとも、馬鹿な俺を見て…憐れんで泣いてくれていたの…? 「あの子を…ホモガキだなんて…たかりだなんて、よくも言えたな…」 クスクス笑いながら涙を落として、噛み締めた奥歯がギリッと音を立てた。鍵盤を踏み込む指先に力がこもって、曲のテンポが遅れてどんどん乱れて行く… 「あんなに…いじらしくて、可憐で、愛らしい人は居ないのに…!」 あの時…豪ちゃんの手を払わないで引き返せていれば…こんなに絶望を感じる事はなかっただろうに。あの子の言葉にムキにならずに、向き合える度量があれば、こんな未来にはならなかっただろうに。 でも、きっと…馬鹿な俺は…先に立つ後悔なんて、考える事もしないんだ。 だから、同じ過ちを何度も…何度も、繰り返してる。 あの女と一生セックスし続けるの…? 「はっ!…愛してんだろ?馬鹿野郎…」 眉間にしわを寄せてそう言うと、右手にはめた指輪を引き抜いて床に投げつけた。 彼女が欲しいのは愛じゃない…先生への当てつけに、自分を抱く体が欲しいんだ。 そんな事、分かり切っていたのに… 「俺は作曲家じゃない。年増にこびりつく、セックスマシーンだ…はは、だっせぇ…」 あんなに踏ん張って、あんなに努力して、あんなにしがみ付いて来たのに…輝かしい未来は潰えて、残ったのは…そんな不名誉な称号だなんて… 両目から落ちて来る涙をそのままに両手で鍵盤を叩くと、弾き始めたのは…“くるみ割り人形…花のワルツ”。 連弾の楽譜を…自分を虐めるつもりで、ひとりで演奏しようじゃないか… 「はは…豪ちゃん…豪ちゃん…ごめんね、ごめん…」 休む間もなくピアノの音を鳴らし続けて、自分の声をかき消しながらあの子に泣きながら謝った… 俺の無礼を、俺の非道を許してくれとは言わない… ただ、どうしてか…お前を傷付けた事が、堪らなく俺の心を傷付けるんだ。 まるで太陽の様に朗らかな笑顔で、やみくもに世話を焼きたがって…俺の笑顔に、頬を赤く染めて喜んでくれた。 付きまとわれて鬱陶しかった筈なのに、君の健気さに…俺は簡単に絆されて、心が揺さぶられた。25日間、毎日、何も物言わないで、ただじっと…テラスの影で俺のピアノを聴き続けたね。それを鬱陶しいと思わなかったんだ。むしろ、今日も来てくれたと安心した… そう、安心したんだ。 君が来てくれたと、喜んでさえいた… 「あぁ…!ごめんなさい…!」 項垂れた瞳から止め処なくあふれ続ける涙を膝に落として、あの子に謝り続けた。 俺は再び、取り返しのつかない事をしてしまった様だ… 傍にいて安心出来る様な誰かを傷付けて、その人がくれた優しさを無碍にした。 君が15歳じゃなかったら、俺はこの優しさの尊さに気が付けたのかな…? 君が男の子じゃなかったら、俺はこの優しさの意味を”アブノーマル“で”いけない事“の様に感じなかったのかな…? 15歳…男の子… それらに纏わり付いた主観を外して事実だけに目を移して見ると、君が俺にくれた”優しさ”を、俺は”愛“だと思う。それも、とても慈しみ深い愛だ。 そして、彼女に対して抱いていた”愛”が、脆く崩れ去って…やっと気が付いた。いいや…認めた。の方が正しいかもしれない… ただの肉欲を…”愛”なんて言葉で誤魔化して、体よく利用されている事実から、目を逸らしていたんだって… 性別、年齢なんてどうでも良い…俺を愛してくれた優しい人。 それが、豪ちゃん。 そんな人を傷つけて…俺は満足したのか… そんなあの子を痛めつけて、辱めて、俺は満足したのか…?! 本当に…俺は最低だ… もう…駄目だよ、豪ちゃん… これ以上…俺の傍に来たら駄目だ。 いつの間にか”花のワルツ”は華麗で美しい曲じゃ無くなって、ただ、怒りに任せて鍵盤を打ち鳴らす…雑音へと変わって行った… 「くそっ!」 こんなの、ジャズにもならない…ただの雑音だ。 項垂れた頭を鍵盤に置いてぼんやりと目に映る暗い窓の外を眺めた。ふと、視線を落として、テラスから俺を見つめるパリスと目が合うと微笑みかける様に瞳を細めた。 …まるで、豪ちゃんの様だ。 あぁ…あの子の笑顔が、また見たいな… そんな、叶わない自分勝手な思いを鼻で笑って、一心不乱にピアノを弾き続ける。馬鹿な男が、これ以上誰も傷つけない様に…ひたすら音色を耳に送り届けて、その他を遮断した。 「コケ~コッコッコッコ…コケ~コッコッコッコ…」 耳に届くパリスの鳴き声に重たい瞼を開いて、どや顔で産んだ卵を見せつけて来る彼女を見下ろして言った。 「お前は…毎日、卵を産んで、偉いね…」 ピアノを弾き過ぎて強張った手を撫でながら窓を押して開いて、いつもの様に…パリスの胸に指を突っ込んで、彼女の温かさを指先に感じた。 「…温かいね…」 「惺山。」 は…?! 思わぬ呼びかけにパリスを見つめたまま体を固めて、ゆっくりと声のした方に顔を向けた… 「…な、何…しに来たの…?」 昨日、あんなに酷い事をされたというのに…豪ちゃんは今日もやって来た。 「…これ…」 ふくれっ面をしながら手に持った俺のジャケットを差し出して、口を尖らせながら言った。 「…ん、豪ちゃんは、お漏らししてない!」 は…?! 何で…? 「そ、そんなこと知ってる!だけど、お前の兄貴がめちゃめちゃ怒ってたから…そう言ってごまかしたんだ!だって…射精したんだろ?!見られたくないだろ?!」 あまりの予想外の問答に、裸足でテラスに飛び出して息まいてそう言った。そんな俺を睨んで見上げると、あの子は顔を真っ赤にしながら言い返した。 「…なっ!なっ!なっ!…ちがうっ!」 違う? 「違くない!気持ち良くってイッちゃったんだ!」 「んっ、ばっかじゃないのっっ!!」 悲鳴の様にそう言って俺のジャケットをテラスに叩き付けると、あの子はパリスを抱き抱えて言った。 「ん、もう!お前なんて…大っ嫌いだぁ!」 はぁ~~~?! 「ちょ、待てよ!」 有無を言わさずあの子の体を抱き抱えて、暴れる足を避けながら徹の実家に連れ込んだ。 何をするかって…? 豪ちゃんには、あの程度の辱めは通用しないみたいだ… だから、もっと、どぎつい事をしてあげる。 二度と、ここに… 俺に、近付きたくなくなるような事を、してあげる。 「なっぁんだ!変態!」 はは…的を得てるじゃないか…やっぱり、君は馬鹿じゃない。 畳んだままの布団の上に暴れるあの子を下ろして、逃げて行かない様に体で抑え込むと、両手であの子の細い肩を布団に押し付けながら不安に色付いた顔を見下ろして言った。 「豪ちゃん…あんな事されても、惺山に会いたくなっちゃうの…?」 不気味に微笑んだ俺の顔を見て、あの子は火が付いた様に暴れて言った。 「…ん、やぁあ!」 あぁ…可愛い… 両手で俺の頭を叩くあの子の手首を掴んで、胸の上にまとめて片手で抑え込んだ。 「ほらぁ…豪ちゃん、何も出来なくなっちゃったね…?どうするの…?」 そう言いながらあの子の細い首筋に顔を埋めて、鼻に香って来る石鹸のほのかな香りに口元を緩めて笑う。 「あぁ…良い匂いがする…。ねえ、昨日みたいに…キスしても良い?」 「ん、やぁだぁ!だめぇ!」 「はは…笑わせる。豪ちゃん…。惺山にエッチな事…して欲しくて来たんでしょ?そういう時は…駄目って言うんじゃなくて、もっと!って言うんだよ…?ほらぁ…言って?惺山…もっと!って言ってごらん…?」 細い首筋は本気で噛みついたら折れてしまいそうだ…あの子の髪の匂いを嗅ぎながら食む様に何度もキスして、無理やり体を細い足の間にねじ込むと、耳元で卑猥な言葉を囁きながら、あの子の股間に自分の股間を押し付けて抱いているみたいに腰を動かした。 「ん~~~!やぁ!」 騒ぎ始めた豪ちゃんの唇を覆う様にキスをした。何度もあの子の小さな舌を絡めて吸って、いやらしい音を立てながら貪り付く様に舐め回す。 …あぁ、あったかい… 「ふふ…あぁ、気持ちいの…?」 惚けた顔のあの子を見つめて満足げにそう言うと、止まらなくなった衝動を抑えながら、再びキスをする。ふと、擦り付ける股間に硬さを感じて、あの子が勃起していると分かると、瞳を細めてニヤけた。 「あぁ…豪ちゃん、ほらぁ…大きくなってる…気持ち良いんだね?」 可愛い唇を食みながら意地悪にそう言う俺に、あの子はトロけた瞳を潤ませて言った。 「…惺山…やめて…豪ちゃん、怖い…。惺山の事大好きなんだ…。だから…こんな怖い事、しないでぇ…」 「…いやだ。」 眉を下げてそう言うと、抵抗しなくなったあの子の手を離して、オーバーサイズのTシャツを捲り上げた。 …日焼けした腕とは対照的に、あの子の胸は白い。まるで、生まれたての白さだ… 「んん…いやぁ!ん、やぁめてぇ…!惺山、やだぁん!」 身を捩って嫌がるあの子のやや膨らんだ胸に顔を沈めて、可愛いピンクの乳首を眺めながら下からねっとりと舐めて舌の先で転がした。 あぁ…やっぱり、思った通りの弾力だ。可愛い… 「あっ!…だめぇん!そんなとこ…舐めないでぇ!だぁめ!んん…あっんん…!」 「可愛いね…豪ちゃん。ピンクの乳首が立ってるよ?ほらぁ…おちんちんと同じ…気持ち良くって立ってる…ふふ、豪ちゃんはエッチだね…?」 クスクス笑いながらそう言うと、腹に当たるあの子の勃起したモノを、ズボンの上から撫でてあげた。片手で掴んだ瞬間、グッと硬くなったあの子のモノに、自分と同じ男のサガを感じて瞳を細めて笑うと、丁寧にやさしく扱いてあげる。 「ん~~~~!やぁ…ん…!あっ…ダメぇ…せいざぁん…」 だんだんと俺の髪を掴むあの子の手に力が入らなくなって…口から出る声も、弱々しくなって来た… …どこまでする…? どこまでしたら、この子は二度と、俺に会いたくなくなるの…? おもむろにあの子のズボンを下げると、体を起こして嫌がる豪ちゃんにキスしながらあの子のモノを手で扱いた… 「はっ…はぁはぁ…ら、らめぇ…ん、んん…はぁはぁ、あっ…」 悩殺だな… トロけた瞳を向けてそう言うと、自分のモノを扱く俺の手を掴んで必死に引き剥がそうとした。もちろん、快感にトロけたあの子の力なんかじゃ…俺の手は剥がせない。 「豪ちゃん…昨日、射精したんでしょ…?」 クスリと笑いながら唇を離して、汗ばんだあの子の額に自分の額を付けながら…息を荒くするあの子を見つめた。 …あぁ、可愛い… こんなに、視覚がうっとりしてしまう様な…可愛い人を、抱いた事が無かった。 こんなに…俺を見つめてトロける人を、抱いた事が無かった… 「気持ち良くって…おちんちんから、白いのが出ちゃったんでしょ…?」 可愛い半開きの唇をペロペロと舐めてあの子のモノをきつく扱きながら、荒い吐息をあの子に浴びせてそう聞くと、豪ちゃんは顔を真っ赤にして首を横に振った… 「ん、も、違う…!ちがう…!はぁはぁ…あぁん…だめぇ…あっ、あっ…」 「あぁ…ほら、またおちんちんがイッちゃいそうだよ…気持ち良いって言ってる。惺山のお手々が気持ち良いって…おっきくなってガチガチに固くなってる…。ほら…抱き付いて良いよ?気持ち良いでしょ…?」 …堪らない この子のトロけた瞳も…汗ばんだ体も…嫌がるくせに反応の良いモノも…何よりも、俺の背中に両手を伸ばして…言われた通りに抱き付いて来る、この子が… 可愛くて、堪んない… 「ん~~!らめぇ…はぁはぁ…あっああ…!」 体を仰け反らせてビクビク腰を震わせると、豪ちゃんのモノがドクンと脈打って…俺の手の中で果てた。 …どこまでやる? 手に付いたあの子の精液をティッシュで拭き取ると、おもむろにあの子のモノを舐めて口の中に入れた。 「あ~~~~!だぁめぇ!」 体を起こして俺の髪をむんずと掴むと、豪ちゃんは自分の股間から引き剝がそうと暴れた。 そこは対格差のある子ども… 両手であの子の胸を押さえると、そのまま押し倒して、肘であの子の腕を抑え込んだ。そして、そのまま、可愛い乳首を摘まむと…意地悪につねって虐める。 「んん~~!あっ…はっ…くっ、んん…や、ん…!」 身悶えしながら抑え込まれて感じる豪ちゃんの姿は…十分に俺を興奮させる。 口に入れたあの子のモノが…グングンと固くなっていくのを感じて、ニヤニヤ笑いながら舌で舐めてあげる。 「…本当は、このおっきくなったおちんちんは…女の子に挿れるんだよ?…なのに、豪ちゃんは…大好きな惺山に気持ち良くして貰って、イク方が良いんだ…ふふ、そういう子をなんていうか…知ってる?」 意地悪にそう言ってあの子の顔を覗き込むと、涙と汗でぐちゃぐちゃになった顔を向けて、豪ちゃんが言った。 「…大…嫌いだぁ…」 どうしてかな、胸が痛いよ…豪ちゃん… 「ふふ…ホモ、ゲイ、おかま…。他の人に、こんな事知られたら…虐められちゃうよ…豪ちゃん。でも…お前は見た目がとっても良いから…虐められないで、こうやってエッチな事をして貰えるかもしれないね?」 意地悪にそう言うと、あの子のビクビク脈打つモノの先っぽを舌で舐めて虐めて笑う。 「ふっ…はぁはぁっ!…ん、んん…はぁはぁ…」 …挿れたい あまりの豪ちゃんの可愛さに…あの子の中に挿れたくなって来ると、自分のズボンを下げながら豪ちゃんに言った。 「…挿れても良い?」 「…ない!」 …へ? 汗でへばりついたあの子の前髪を両手で撫でながら、もう一度聞いた。 「豪ちゃん…可愛くって、惺山のおちんちんが勃起しちゃった…挿れても良い?」 あの子は惚けた瞳に力を込めると、俺を睨んで言った。 「ないの!豪ちゃんは…女じゃない…!そんな事…する所なんて持ってない!離してよっ!馬鹿!馬鹿野郎!お前なんて…ん、大嫌いだぁ!」 はは…嫌いって言われて…とっても悲しいよ、豪ちゃん… 「馬鹿だな…お尻に挿れるんだよ…」 俺はそう言うと、ニヤニヤ笑いながらあの子のお尻を撫でて持ち上げる。 そして、自分の大きくなったモノをあの子のお尻の割れ目に添わせて、ゆっくりと腰を動かしながら恐怖に顔を歪める豪ちゃんを見下ろして、ほくそ笑んだ。 「…ひ、やだ、やぁだぁ!」 …どこまでやる? …そろそろ、やめた方が良いんじゃないか…? 「やだ…じゃねんだよ…豪。大人をからかうと…どうなるのか思い知れよ…。キスしてきたのは誰だよ…?舌なんて入れやがって…」 あの子の体に覆い被さると、女にする様に…あの子のお尻に手を伸ばしていく… 良いの… 良いんだ… とことん嫌われて、二度と近付かないようにするんだから… これで良いんだ… 「いやぁ!」 …可哀想 あの子の中に指を入れると、親指で気持ち良くなる様に裏筋を撫でながら言った。 「どう…?豪。気持ち良いって…言ってごらん?」 腸だ… アナルセックスなんて…子供がする様な事じゃない… セックスの玄人のなせる業だ。 苦しそうに苦悶の表情を浮かべるあの子を見つめながら、興奮して痛いくらいの自分のモノをあの子の柔らかい太ももに押し付けると…いやらしい言葉を吐きながら…あの子の唇に何度もキスをする… 「…気持ち良い?」 「…いやぁ…」 そうだろうね…気持ちが良い訳がない… 「力を抜いて…?」 「はぁはぁ…やめてぇ…」 …やめる? この細い体に…俺のモノなんて挿入したら、壊してしまうんじゃないか… でも…この程度じゃあ、この子は…また俺に会いに来るだろ… 「やめないよ…豪ちゃん。俺の周りをうろつくなら…これくらい、喜んで相手しろよ。」 そう言うと、あの子の中から指を抜いて、コンドームを自分のモノにかぶせて言った。 「惺山のおちんちんは…大きいからな、豪ちゃん…痛いかもしれないな…?」 「やめてぇ…惺山、やだぁ…」 「ダメだよ。豪ちゃんは、毎日、毎日…俺の前に現れては、しつこく付きまとうんだから。うんざりしてるんだ…。まるで監視されてるみたいで…とっても嫌なんだ。パリスに監視カメラでも付けて…24時間見張ってる訳じゃないよね?」 クスクス笑いながらそう言うと、悲しそうに瞳を歪めた豪ちゃんが。涙を落としながら言った。 「…ご、ごめんなさい…心配だった…気になった…もう、しない…」 「遅いんだよ…」 乱暴にそう言うと、あの子の中に自分のモノを押し込めながら言った。 「もう…遅いんだ…」 「ひっ!…あっ…いた、痛い!」 苦しんで呻くあの子を無視して、ただ…挿れられる穴に自分のモノを押し込んでいく… 俺はセックスマシーンだから…穴があればどこにでも挿れるんだ… 例え…自分に懐いて来た、あどけない少年でも… 無条件に慈しんで、愛してくれた人でも… 「んん~~~~!」 絶叫して身を捩るあの子の上に覆い被さると、根元まで挿れた自分のモノが気持ち良くなるように乱暴に腰を振り始める。 レイプ… そう、俺は豪ちゃんを無理やり、レイプしてる… 「あぁ…すっごい…豪ちゃん、キツくて気持ち良い…女の人より、気持ち良いよ…?」 甘い声を出してそう言うと、痛みと違和感から、すっかり抵抗出来なくなったあの子を見下ろして、腰をゆるゆると動かした。 「…く、苦しい…」 呻くあの子の唇を乱暴に撫でると、低く脅すような声を出して言った。 「気持ち良いって…言えよ。スケベなガキ…。俺にレイプされても勃起して…我慢汁を垂らして喜んでるんだもん…。ドン引きするよ…ほらぁ…喘げよ!」 ガンガンと中を突かれる度に悲鳴を上げるあの子を見つめると、頬に温い感覚を感じて…自分が泣きながらレイプしている事に気が付いた… 俺はクズ… クズは泣かない… もう、二度と…俺に近づいちゃダメだって…教えてやらなきゃダメなんだ… 「はぁはぁ…豪、気持ち良い?」 あの子の柔らかい髪を掴んでそう聞くと、怯え切ったあの子はボロボロと涙を落としながら言った。 「…き、き…気持ち良い…うっうう…」 残酷だな… この子は…俺を気に入ってくれていたのに… 付き纏われるのだって…嫌じゃなかったのに… 残酷だ… 「あぁ…!凄い…なんだ、女じゃなくても…こんなに気持ち良いなら、男でも構わないな…はぁはぁ…!ほらぁ…惺山になんて言うの…?豪ちゃん…大好きな惺山に…なんておねだりするの…?」 腰を動かしながらあの子を見下ろすと、俺の動きに体を揺すられてぐったりとするあの子の上に容赦なく覆い被さって行く… 「ぐっ…苦しい…!」 「違う…豪。気持ち良い、もっとして!だ…。萎えさせんな…!」 呻き声をあげるあの子の頬を叩いてそう言うと、貪り付くように唇をしゃぶりながらキスをする。 「うう…気持ち良い…惺山、もっと…もっと、して…」 残酷だ… 弱々しい声でそう言うあの子の唇に何度もキスして、痛みと違和感で歪んでしまったあの子の眉間にキスして言った。 「はぁはぁ…抱き付いて…良いよ…」 こんな酷い事をする男に…抱き付きたい訳ないじゃないか… 「うっ…ぐっ…惺山…」 …豪ちゃんはいつも…俺の斜め上を行く… 細い両手を俺の背中に回すと…言われた通りに抱き付いて来た… 可哀想に… 「豪ちゃん…惺山が嫌いになった?」 あの子を抱きしめながらそう言うと、腰を動かして呻き声をあげるあの子の唇にキスをする。 「はぁはぁ…気持ち良い…もっと…」 息も絶え絶えにそう言い続ける…完全にイッちゃった目をした豪ちゃんを両手に抱きしめて、あの子の中の締め付けと、温かさに…気持ち良くなって腰を震わせる。 「あぁ…!ダメだ…イキそう…!」 可愛い豪ちゃんの中はそれはそれは気持ち良くて…女の比じゃなかった。 何より…ドМなのか、健気に俺の言う事を聞くこの子に…堪らなく興奮するんだ… ドМ…? いいや、違う。 この子は気が強いんだ… きっと…俺の事が好きだから…言う事を聞いてるんだ… 残酷だ… …そんなに、俺の事が…好きだったの… 可哀想な…豪ちゃん。 「はぁはぁ…んっ!」 短く呻き声をあげてあの子の中でイクと、乱れた髪をそのままにあの子の体の上に力尽きて沈んで行く… ずっと…俺の背中を抱きしめていた豪ちゃんは、乱暴された後も…ずっと…俺の背中に両手を置いたままにしていた… 「コケ…コケ…」 パリスの声が聞こえて…目の前でちょこちょこといつもの様に歩く鶏の頭をぼんやりと眺める… そうか…豪ちゃんを連れ込む時…パリスも一緒に連れて来ちゃったんだ… 「…帰りたい…」 胸の中であの子が小さくそう言った… 「…ダメだよ…」 そう言うと、あの子に挿れたままの腰をゆっくりと動かして…中で萎えたモノを再び刺激を与えて硬くさせていく… コンドームから漏れた精液がタラタラと流れて落ちると、あの子のお尻を伝って布団に落ちていく… その様が…異常に卑猥だった… 「いやぁ…」 そう言って顔を覆って泣きじゃくるあの子の手を掴むと、頭の上にひとまとめにして置いた…力が入らないのか…諦めたのか…抑える必要もない程に、あの子は抵抗しなかった。 「可愛い顔が見えないだろ…豪ちゃん…」 そう言って泣きじゃくるあの子にキスすると…再び、容赦なくあの子を犯す… もう…二度と抱けないなら…気が済むまで抱かせてくれよ… 好きなんだ… 「はぁはぁ…可愛い…豪ちゃん…可愛いね…」 あの子の中をズンズンと犯しながら、あの子のモノを握って扱いて…めちゃくちゃにしていく… 俺以外の男と…こんな事をしても、足りないって思うくらい…気持ち良くしてあげる… 他の男じゃ…満足出来なくなるくらい…気持ち良くしてあげる… 「ふっ!あっああ!」 何度も俺の腕の中でイキ続けるあの子を抱きしめて、何度も何度も、快感という快感を…幼くて、未熟で、未発達な…豪ちゃんに与え続ける。 俺の…可愛い、豪ちゃん… 悲しいよ… 君を傷付ける事しか出来ない事が、悲しいよ。 パリスが畳をむしり始めた正午過ぎ… やっと、俺はあの子の中から自分のモノを抜いた。 「…おいで、流してあげる…」 ここにまともな大人が居たら…張り倒されてる。 でも、今ここに居るのは…俺に従順な、傷ついた豪ちゃんだけ… あの子の腕を掴んで引っ張り上げると、ヨロヨロと足元のおぼつかないあの子を抱いて風呂場まで連れて行った。 …こんな時、シャワーだったら楽なのに。 ここにはそんなものは無い。 桶にお湯をためると、フルフルと震えるあの子の足を見つめながら、口元を歪めて笑う… 怖かっただろうな… 可哀想に… 桶の中のお湯を手桶ですくってあの子の肩からゆっくりとかけてあげると、震える体をもっと震わせて…しくしくと泣き始めた… 「…もう…来ちゃダメだよ…。もっと、酷い事をされるからね…」 俺がそう言うと、あの子は泣きじゃくりながら頷いた… 日焼けの跡がくっきり付いた体の所々にへばりつく…俺の精液を手のひらで撫でながら洗い流してあげると、堪らなくなってあの子を抱きしめた。 「もう…来ちゃダメだよ…!」 喉の奥が震えた声でそう言うと、あの子は声を上げて泣いて言った。 「…わ、分かったぁ…」 残酷だ… 洋服を着直すあの子の背中を見つめる。丸みを感じるフォルムは男の子に見えない。やや膨らんだ胸もそうだ。きっと女性ホルモンが…多いんだ。 だから、この子の腰も…細くて…しなやかで、滑らかなんだ。

ともだちにシェアしよう!