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#27
「コッコッコッコケコッコ~~~~~!」
「なんだ?!」
今日も…雄鶏の鳴き声に驚いて飛び起きた。
…そして、昨日と同じ様に…腕の中のあの子が俺の胸をポンポン叩いて言った。
「…雄鶏だよ…惺山。大丈夫…」
あぁ…そうか…雄鶏か…
あの子の優しい声に安心して、再び布団に沈んだ…
腕の中の、可愛いあの子の剥き出しのおでこにキスしながら、もう…少し、寝ていよう…と、瞳を閉じた。
もう…少し…
「コッコッコ、コケコッコ~~~~~~~~!!」
「なんだ?!」
そう言って飛び起きる俺に、腕の中のあの子が目を丸くして言った。
「…あの声は…聴いた事が無い…。うちの、雄鶏じゃない…!」
な、なんだと…?!
豪ちゃんは血相を変えて俺の腕から飛び起きた。そして、引き戸のつっかえ棒を男らしく乱暴に外して、一目散に雨戸を開いた。
そんなに一大事なのか…?
わき目も振らずに裸足のまま庭に降りて行く豪ちゃんの背中を追いかけて、不穏な空気の漂う庭先を眺めた。
そこには、…一匹の鶏と対峙する、豪ちゃんの姿があった…
…いつぞやの早漏…黒い雄鶏だ…
「…お前は、誰だぁ!」
豪ちゃんは、男らしくドスの利いた声で黒い鶏を威嚇した。
ふと、視線を落とした先、黒い鶏の傍らにいる…パリスを見下ろした豪ちゃんは、悲しそうに眉を下げて言った。
「…そっちで…群れを作るの…?パリス。」
群れ…?
どういう事だ…
両者一歩も引かない…そんな緊張感を漂わせた、豪ちゃんと黒い鶏…
一体何が始まるというのか…
俺は、彼らの様子を横目に伺いながら、雨戸の引き戸を開いた。
その時、ズッズッズッズ…と、背後から這う音が聞こえてビビッて振り返ると、健太がいつもの様に蠕動運動しながら俺の足元まで来て、開かれた縁側から彼らの様子を見て言った。
「鶏は…雄を中心に群れを作る。パリスがあの雄に付いて行くと決めたら…あそこはもう、ひとつの群れだ。豪の雌鶏たちを誘惑して、どんどん群れを大きくするだろう。そして…起こるのは、鶏の群れ同士の抗争だ…。ああ見えて、縄張り意識の強い、序列のある社会なんだ…。だから、血を見る争いに発展する…」
「えぇ…?!」
マジか…!怖いじゃないか!
「うぉおい!お前…!うちの雄鶏に喧嘩売ろってのかぁ!この群れを分断させて、新しい群れを作ろうなんてぇ、上等じゃねえかぁ!俺がぶっ飛ばしてやんよっ!」
豪ちゃん…?
豪ちゃん…どうした…
まるで任侠映画の様に…いつになく男になった豪ちゃんは、黒い鶏に凄んで言った。
「…見逃してやろうと思ったけど、許せねえぇ!とっ捕まえて…テメェの羽、全部、むしってやるぅっ!覚悟しなぁっ!」
あぁ…
今、俺の目の前で…黒い鶏相手に喧嘩腰なのは…俺の可愛い豪ちゃんだよな…?
ふと、足元の芋虫健太を見下ろして、首を傾げながら言った。
「…あれは…豪ちゃんだよね?」
「…多分。」
多分…?
お前も…初見なのか…
「豪ちゃん!そんな乱暴な物言いは止めなさい!」
いてもたっても居られずに、縁側に出た俺は、豪ちゃんにそう言った。
そんな俺の言葉を受けた豪ちゃんは、シュンと眉を下げて言った。
「ん、だってぇ…てっちゃんが、動物相手に怒る時は、舐められちゃダメだって…言ったんだもん…。ごめんなさぁい…。」
ほっ…
…そうなんだ。良かった。
あれが、この子の本性だったら…ある意味、俺の夢が崩れる所だった…
「ほら!あっちへ行けっ!早漏!あっちへ行け!」
ホッと胸を撫で下ろした俺は、豪ちゃん同様、裸足で庭に降りて、朝露を足の裏に付けながら、両手を派手に動かして、ピアノのテラスへ逃げて行くパリスと黒い鶏を追いかけた。
「コ・コ・ココココ…!!」
大慌てで走って逃げるパリスは、山の方へ立ち去って行く黒い雄鶏を一瞥すると、一目散にテラスの上に敷いた藁に走って向かった。
あ…
「パリス…もしかして、お前…卵を、温めてるのか…?」
藁の上に腰かけたパリスの足元に、白い卵が一瞬、見えたんだ…。
まさか…あの時の…
そんな疑念を抱えながら、山の方へと逃げ去った黒い雄鶏を首を動かして探して、テラスの上で卵を温めるパリスを見下ろした。
彼女が温めているのは…有精卵なのか…?それとも、無精卵なのか…
「は…!」
パリスの非常事態に、寝起きの呆然とした頭を覚醒させた俺は…じっと、俺を見つめ返すパリスに背を向けて、豪ちゃんの元へと足早に戻った。
「…豪ちゃん!」
鶏小屋の中で、せっせと本日の卵を回収する小さな背中に向かって縋りつく様な情けない声で言った。
「ん?」
「パリスが…卵を温めてた…」
俺がそう言うと、豪ちゃんは籠に入れた卵を、ひとつ手に掴んで持ち上げて言った。
「パリス…興奮して走ったでしょ?卵は冷たいから、温めてる様に見えて、卵で火照った体を冷やしてるんだ…」
え…
「本当?…雛は生まれない?」
「さあ…どうかな。」
あの子はそう言うと、鶏たちを庭に放流しながら俺を見上げた。
「…20日もすれば結果が分かるよ。有精卵だったら雛が孵って、無精卵なら、そのままだ…」
何という事だ…そんな、成り行き任せで…!良いのかい?!
「…気になる。」
落ち着かない気持ちを持て余した俺は、豪ちゃんの後ろを背後霊の様について回りながら、思いの丈をブツブツと小声で言った。
「…もし、有精卵だったら?」
「ん、雛が生まれる…」
「…それは…新しい命が、パリスの子供が生まれるって事だよね…?」
「ん、まぁ…そう言う事だけど…」
「なぁのに、そんな適当で良いのかい…?良いのかい…?」
俺の小声ブツブツ攻撃に気が滅入ったのか…豪ちゃんは背中に付きまとう俺を振り返って、眉を下げると、肩を落として、こう言った。
「…じゃあ、しばらく温め続けるようだったら、ちょっと見てみるよ…」
「うん…!」
俺の、パリス嬢の子が産まれるかもしれない…
それは、俺にとったら…孫の様なものさ。
何故か、気になって仕方が無いんだ…
「…名前は、俺が決めて良い…?」
興奮する気持ちを持て余した俺は、朝ご飯の支度を始める豪ちゃんの背中に背後霊の様について回って、ぶつぶつと再び小声で話しかけた。
「雄だと思う…?雌だと思う…?いつ、性別は分かるの…?俺は、ハリウッド女優の名前なんかにしない。音楽の記号なんてお洒落だと思わないかい…?アレグロとか…ビバーチェとか…素敵だと思わないかい…?ねえ、豪ちゃん…ねえ…」
やっぱり、俺のブツブツ攻撃は気が滅入るんだ…
豪ちゃんは再び俺を振り返って、両頬を小さな手で掴んだ。そして、まん丸の瞳をじっと落ち着かせて、俺を見つめながら優しく言った。
「…惺山?あんまり期待しない方が良い。なぜなら、産まれて来る事自体が奇跡なんだ。途中でパリスが卵を温めなくなったら、例え有精卵でも、命は育たない。」
えぇ…?!
そんな無慈悲な言葉に顔を歪めた俺は、ヒシっと豪ちゃんの背中に抱き付いて地団駄を踏みながら、駄々をこねる様に首を振った。
「どして…?どしてぇ…?!」
「…有精卵の卵は、だいたい38度以上の温度で温め続けなければ育たないんだ。」
…な、なんだと!!
豪ちゃんは、動揺して小刻みに揺れる俺の背中を宥める様に撫でてくれた…でも、朝ご飯を作るのに、邪魔なのかな…まるで押し退ける様に俺を体から離して、首を傾げながら優しく言ったんだ…
「惺山…朝ご飯、作りたいから…お布団を畳んで来て?あと、今日は学校に行くから…お弁当を作っておくね…ちゃんと食べてね?」
豪ちゃんの朝は、忙しい…
いそいそと俺に背中を向けたあの子は、迷う事無くお鍋の中に昨日の残りの餃子をポンポン入れて、中華出汁をパラパラと入れた。
あぁ…追い返されたぁ!
俺は、豪ちゃんの言いつけ通りに布団を畳んだ。そして、すぐにあの子の傍に戻ると、悶々とパリスの卵の事を考えながら、豪ちゃんの背中を見つめ続けた。
「惺山は…どうしたんだ…」
芋虫になったままの健太は、首を傾げる様に胴体事ぐにゃりと曲げながらそう言って、笑いを誘うが…俺は、そんな能天気な気持ちじゃないんだ。
だって…あのパリスの子供が生まれるかもしれないんだからな!
眉間に力のこもった俺を横眼に見て、豪ちゃんが卵焼きを焼きながら健太に言った。
「…パリスが卵を温めていて…雛が孵るって、期待してるみたい…」
「あ~はっはっはっは!!」
健太の大笑いをスルーして、卵焼きを焼き終えた豪ちゃんの顔を覗き込んだ俺は、何度も首を傾げながらあの子に聞いた。
「…いつ頃、有精卵か無精卵か見分けがつくの…?何日?何日目に分かるの?」
豪ちゃんは、やれやれとばかりに眉を下げて俺を見ると、餃子のスープに塩コショウをしながら言った。
「大体…10日も温め続けたら、こうやって太陽の光に透かして見ると、有精卵の場合、血管が見える事がある。」
10日…血管…
「…分かった。」
深く頷いた俺は、あの子がくれた卵焼きのお皿を手に持って、健太が二度寝を始めたテーブルの上にコトンと置いた。
今日から…10日目…後で、カレンダーに丸印を付けて置こう。
着々と朝ご飯が出来上がって、いつもの様に全然動かない健太の為にどんぶりご飯を運ぶと、豪ちゃんが俺を見て言った。
「惺山?僕は、7時になったら家に帰って制服に着替えるから…」
はぁあぁぁぁぁぁあああああ?!わっすれてたぁっ!
「制服…見たい。」
「気持ちわりいな…!」
そんな健太の蔑んだ声なんて、どうでも良い…
豪ちゃんの顔を覗き込んだ俺は、すっかりぼそぼそ話す事が楽しくなって、眉を下げて俺をジト目で見つめる豪ちゃんにぼそぼそと言い続けた。
「…制服、見たいよ…ねえ、豪ちゃん…君の制服姿を、見たいんだ…一度で良いからさ…ねえ、先っぽだけ見せてくれたら良いからさ…ねえ、ねえ…」
豪ちゃんはこの喋り方をする俺が嫌いなんだ。すぐに眉を顰めて俺にジト目を向けると、口を尖らせて言った。
「じゃあ…一緒に家に来る?」
「行く!」
二つ返事さ…即答さ…
いつも半ズボンで露出するこの子のおみ足が隠れる長ズボン姿を…逆に見たい。
白いブラウス姿を…見たい…!
そんな…知的好奇心だ。下心なんて、無い。
鼻の下を伸ばしながら朝ご飯の支度を整えて、いつもの様に豪ちゃんの隣に座った俺は、あの子と一緒にいただきますをした。
今朝の献立は、卵焼きと、小松菜のお浸し、餃子のスープは、煮込んだせいか…皮が外れてワンタンスープの様になっていた。
「美味しいねぇ?ワンタンみたいで、美味しいね?」
ご機嫌な俺は、しきりにそう言って豪ちゃんの顔を覗き込んだ。
「うん…小松菜も、もっと食べてね?」
もちろんさ!旬だからね…バクバクと、食べるさ!
いつもより、こんなにご飯が美味しいのは…パリスの子供の誕生と、豪ちゃんの制服のお陰だ。
「…惺山?お弁当を冷蔵庫に入れておいたから、携帯にセットしたアラームが鳴ったら食べるんだよ?僕との約束だよ?」
あの子がそう言って小指を立てるから、俺はコクリと頷いて、あの子の小指に自分の小指を絡めて言った。
「約束…!」
「ハァ~…気持ち悪いな!30歳も過ぎて微妙な片言で話すなよ!」
いちいち健太の呆れた様なため息が聞こえたって、気にしないさ…
俺には、雑音をミュートに出来る能力が備わってるからな…!
美味しい朝ご飯を頂いてごちそう様をすると、豪ちゃんの腕を掴んで言った。
「さあ…制服を着に、行こうじゃないか!」
「ちょ、ちょっと待って…兄ちゃんのお見送りがまだだから…!」
なんだと…!
ヘルメットを手に持った健太をジト目で見送りながら、早く行け!と心の中で念じた。そんな祈祷が通じたのか…健太はいつもより早めに縁側へ向かうと、いつもの様に豪ちゃんを振り返ってあの子の頭をポンポンと叩いた。
「よし、制服を着に、行こうじゃないか…!」
「兄ちゃん、気を付けてね?」
「おう…行ってくるぞ!豪!」
…完全に無視された。
憮然とする俺を見てケラケラ笑った健太は、ヘルメットを被りながら俺に言った。
「じゃ、惺山、行ってくるわ!」
「おぅ、気を付けてな!」
…早く行け!
ソワソワした気持ちを沈める事が気無い俺は、健太のバイクの音が遠ざかって行くのを耳で聴きながら、のんびりと庭の鶏を眺め始めた豪ちゃんに言った。
「行こう!行こう!制服!」
「ん、もう…」
眉を下げて俺に引っ張られた豪ちゃんは、渋々玄関へ向かって歩き始めた。
「…シャツの下には、もちろん…何も、着ないんだろ?」
「え?Tシャツを着るよ?」
あの子の家へ向かう道すがらそう尋ねる俺に、豪ちゃんは首を傾げてそう答えた…
Tシャツ?
駄目だ!却下!
逸る気持ちがそうさせたのかな…あっという間に豪ちゃんの家に到着した俺は、あの子の部屋に一緒に入って、おもむろに着替え始めた豪ちゃんの後姿を見つめて…予想以上に興奮して来た。
勉強机と…学校の制服が掛けられた、子供の部屋に興奮するなんて…
やばい!
ロリコンと、アブノーマルを極めた者しか感じない、いけない高揚感を感じてる!
俺はロリコンじゃない…ただ、豪ちゃんに燃え滾ってるだけだ。
他の子どもに興味がある訳じゃない。
…それは大事な事だぞ。
お前は決して、ロリコンではない。
どちらかというと、年上が好きな甘えん坊の三男だ。
「ヨイショ…」
そう言って大きめのスラックスを穿いて足が隠れた豪ちゃんは…一気にいつもと違う豪ちゃんに変わった…
大きめのTシャツの上に白いシャツを羽織ると、顔を俯かせながらボタンを一つ一つ留めて行く…
そんな姿に、俺は…勃起した。
「豪ちゃん…」
そう言ってあの子を抱きしめると、シャツの中に手を入れながら、あの子の首に顔を埋めて言った。
「エッチしたい…」
「は…?!えっと…だめぇ…!」
そう言うと思ってたんだ…
「なぁんで…」
そう言いながらあの子のTシャツの中に手を忍ばせ乳首を撫でながら、もう片方の手であの子の顎を掴んで自分に振り返らせた。
「ダメぇ…ん、惺山…てっちゃんが来るからぁ…!」
そう言ったあの子の唇にキスをして可愛い舌を絡めながら、あの子の股間をスラックスの上から撫でて言った。
「てっちゃんが来ても…知らない振りすれば良いんだよ…」
そうそう…知らない振りして、やり過ごせば良いんだ…
「あっ…はぁはぁ…らめぇん!」
豪ちゃんはそう言うと、体を屈めて股間をまさぐる俺の手を掴んで言った。
「怒るよ?!」
おぉ…!怖い!
「怒んないで…」
豪ちゃんの背中のシャツに頬ずりしながら、スラックスのチャックを開いて、パンツの上からやや勃ちするモノを掴んで撫でてあげた。
「あぁ…!んん…だめ…惺山…だめぇ…」
「すぐ終わるから…すぐ終わるから…!」
既に勃起したあの子のモノをパンツの上から扱いて、快感に仰け反った可愛く惚けた瞳を向けるあの子の唇に、熱くて濃厚なキスをすると、嫌がる様に俺の腕を掴んだあの子の手から、どんどん力が抜けて行く。
あぁ…可愛い…
すぐにこんなに勃起して、息を荒くして、顔を真っ赤にして…ほんと、可愛い。
「んん…!惺山…だめ、だめ…イッちゃう…イッちゃうの…」
豪ちゃんは感じやすいんだ。
俺の胸に仰け反らせた頭を擦り付けて、足をガクガクと震わせながら脱力して行くから、豪ちゃんをそのまま勉強机に押し付けた。
「…すぐ終わるからね?」
その言葉自体が…やたら卑猥だ。
スラックスが下がって丸見えになったあの子のパンツを少しだけ下げて、あの子のプリプリのお尻を撫でながら、自分の勃起したモノを擦り付けて言った。
「はぁはぁ…可愛い、堪んないよ…豪ちゃん…」
人はこれを背徳感と呼ぶのか…女子高生物のAVが後を絶たない訳だ。
制服は…イノセントだ…!!
「んん…だめぇん…」
いつも以上に興奮した俺は、小さな背中に覆い被さりながら、荒い息を細い首元に吹きかけた。そして、豪ちゃんの体に滑らせた右手をあの子の中に指を入れて行く。
中を撫でて、広げて、何度もしつこく愛撫してあげる。その度に、ビクッと震える小さな背中が…堪らなく可愛いんだ。剥き出しになった豪ちゃんの下半身は前も後ろも俺に弄ばれてる…そんな足元には、イノセントな制服のスラックスがあるんだもん。
興奮しちゃうよね!
「んぁあ…イッちゃう…!はぁあっあ…ん…!」
俺の手に扱かれ続けた豪ちゃんは、あっという間に腰を振るわせてイッてしまった…。可愛いティッシュケースからティッシュを取った俺は、あの子のモノを綺麗にフキフキしながら意地悪に笑って言った。
「あぁ…気持ち良かったの…?豪ちゃん、気持ちいの…?」
背中に覆い被さりながら、真っ赤に染まった豪ちゃんの耳を舐めて、汗ばんで来たシャツ越しの細い首元に顔を埋めると、そのまま首筋を食みながら、あの子の中に自分のモノを埋めていく。
「ん~~…はぁはぁ…らめぇ…んん、あっああ…ん」
「はぁはぁ…あぁ、気持ちいい…」
根元までがっつり挿れた俺は、腰を小さなお尻に押し当てながら、もっとあの子の奥まで自分のモノをねじ込んだ。そして、ビクビクと震える豪ちゃんのモノを扱きながら腰を動かし始める。
「ダメぇん…あっああ…気持ちい…はぁはぁ…せいざぁん…んん…いやぁ…!」
いやぁ!じゃない…トロトロのよだれが出てるじゃないか…
豪ちゃんのモノをグチュグチュといやらしい音を立てながら扱いて、快感に仰け反るあの子の胸を撫でて、シャツの下のTシャツを乱暴に捲り上げた。
あぁ…視覚でイケる…
そんな感嘆の思いを抱きながら、可愛いあの子の乳首を摘んで捏ねて、快感に絞まって行くあの子の中を堪能する。
「あぁ…気持ちい…だめだぁ、すぐイッちゃいそう…!」
吐息と一緒にそう言うと、あの子の中をねっとりと腰を動かして、ギンギンに勃った自分のモノを落ち着かせる…
「ん~~!やぁ…だめぇん…嫌ぁ…!」
それは…イクな。という事なのか…
コンコン…
は…?!
「はぁはぁ…てっちゃん…」
そう呟いたあの子の顔を見下ろしながら、腰をゆっくり動かして小さく言った。
「…知らんぷりだ…」
腰をねっとりと動かしながら、可愛い半開きの唇を何度も食むようにキスして、気持ち良さそうに喘ぎ声を口から漏らす豪ちゃんを見つめる…
こんなの…間近で見たら…誰だって、興奮するだろ?
「あぁ…!可愛い…!」
舌を出してあの子の口の中の舌をペロペロと舐めた。すると、あの子も俺の舌をペロペロと舐めて少しだけ、微笑んだ…
これは…続けて良いって事だよね…?
細い腰を腕で抱き寄せながら、ビクビクと震え始めるあの子のモノを扱いて、喘ぎ声の漏れる唇にキスして塞いでしまうと、プリプリのお尻の感触を感じながら、何度もいやらしく腰を動かして、あの子の中で気持ち良くなっていく…
「豪ちゃぁん?迎えに来たよ?」
「んん…はぁはぁ…だめ…も、行かないと…」
「あぁ…豪、まぁだ、だめ…こんなに勃起してるのに、抜かないで行くの…?それとも、哲郎に舐め舐めしてもらうの?それは…駄目だろ…」
そう言ってあの子のモノを意地悪くきつく握って、先っぽをグリグリと親指で詰りながら、あの子の中をねっとりと、しつこく、いやらしく腰を動かし続けた。
「あぁ…だめぇ…イッちゃう…惺山、イッちゃう…!」
震える声でそう言って勉強机に突っ伏すあの子の背中を見つめて、白いシャツの裾からのぞく真っ白な腰と…真っ白なプリプリのお尻に…あの子の中で、自分のモノがグンとさらに大きくなった。
あぁ…視覚でイキそうだ…
自分の大きな手に掴まれるあの子の細い腰…
腰を振る度に自分の鼠径部に感じる、あの子の柔らかいお尻の感触…
そして、極めつけは…白いシャツと、半分下げられた…制服だ。
「あぁ…豪ちゃん、イッちゃう…!」
視覚効果によって、限界は突然訪れた…自分で招いた危機だとは承知しているが、どうしても死角から入る情報が、俺の脳内を興奮させるんだ。
小刻みに震える小さな背中に覆い被さって、ヘコヘコと腰だけ動かした。
堪んない…気持ちいい…イキそうだ…!
豪ちゃんの耳に荒い息を吹きかけながら、あの子のモノがビクビクと震えてイクのを手の中で感じると、あの子の中でイキそうな自分のモノに必死に“耐えろ!”と命じた。
「ぐっ…!」
歯を食いしばって快感が登りつめるのを必死に堪えて、すんでの所で中から出して、あの子の真っ白いお尻に吐き出した。
「…っはぁはぁ…あぁ…」
「ん~…!も、怒ったぁ!」
俺の足をバシバシ叩いて豪ちゃんが怒り始めたから、あの子のお尻に着いた精液を拭きながら言った。
「怒んないの…」
「…怒ったぁ!」
…きっと、俺が早くイッたから、物足りなかったんだね…
「仕方が無いなぁ…」
そう言うと、あの子を勉強机に座らせて、スラックスを片足だけ脱がせた。
「豪ちゃん、居ないの~?」
そんな哲郎の声を聴きながら、あの子のモノを口に咥えて綺麗に舐めてあげる。
「ん~~!」
体を震わせてあの子が唸るから、すぐに勃起するあの子のモノを何度も舌で舐めながら言った。
「声が…聴こえちゃうよ?」
俺の言葉に頬を真っ赤にした豪ちゃんは、潤んだ瞳で俺を見下ろして言った。
「…らめぇ、遅刻するぅ…!」
でも…物足りなくて、怒っちゃったんだもん。
どうにかしないと、俺たちの関係に亀裂が入っちゃうじゃないか…
トロけた瞳の豪ちゃんを見つめて、正面からあの子の中に自分のモノを入れながら言った。
「じゃあ…これで最後にする…」
「ばぁかぁ!ん…だめぇん!」
両手で俺を押し退けようとするあの子の腰をがっちり掴んで、再びゆるゆると腰を動かしながら、あの子を見つめて言った。
「豪…怒ったら駄目…ほら、キスして…」
「ん~~!やぁだぁ…!」
白シャツのボタンを開いて口元を緩めて笑うと、Tシャツを捲り上げて、可愛い乳首を指先で転がしながらあの子をじっと見つめて言った。
「ほらぁ…キスして…」
「んっはぁはぁ…あぁ…ん…いやぁ…」
「あぁ…気持ちいい…!」
「豪ちゃん、いるの?いないの?」
居なかったら…そもそも、答える筈もないんだ。だったら、その質問の仕方は少し変じゃないか…?
哲郎のしつこい呼びかけの言葉に、頭の中で疑問を投げかけると、目の前でトロけ切ったあの子に舌を出して、もう一度言った。
「ほらぁ…豪、キスしないと…怒るよ…」
「んぁ…はぁはぁ…だ、だめぇ…」
あの子はそう言うと、俺の首に両手を掛けて可愛い唇から舌を伸ばした。
あぁ…可愛い…
押しに弱いのは、変わらずだ。
クチュクチュといやらしい音を出しながらあの子と長いキスをして、細くて柔らかいあの子の腰を少しだけ手前にズラした。
「エッチな声を出したらダメだよ…?こんな所…哲郎に見つかったら、豪ちゃんはめちゃくちゃにされちゃうかもしれないからね…?」
意地悪にクスクス笑いながら、汗だくにトロけたあの子を見つめて、あの子の中を何度も何度も抉る様に腰を動かして掻き混ぜる。
「あぁ~~~んん、ダメぇ!」
よだれを垂らしてそう言ったあの子の口を慌てて抑えると、腰を振りながらあの子を睨んで言った。
「駄目だって言っただろ…?」
「豪ちゃん?いるの?」
やばい…哲郎が、気が付いた…
それでも、俺は止めないさ…大人だからな!ノンストップだ!
豪ちゃんの口を押えた手の指先を可愛い唇の中に押し込みながら、あの子を見つめて言った。
「しゃぶって…?俺のを舐める時みたいに…エッチに舐めて…」
そんな俺の言葉に惚けた瞳を潤ませた豪ちゃんは、俺の指を口の中で転がす様に舌に絡めた。温かいあの子の舌を撫でながら、可愛い口端から漏れてくるよだれを舐めて、ねっとりと腰を動かし続けた。
「んっんん…!」
苦悶の表情を浮かべた豪ちゃんは、俺に舌を摘まれたまま、腰を振るわせてイッてしまった…
あぁ…ほんと、どМって可愛い…
こんなに無理やりやられても、興奮しちゃうなんて、それって…罪だ。
「豪…気持ち良かったの…?」
トロけた瞳のあの子にそう聞くと、豪ちゃんはだらしなく舌を動かしながら俺の指を唇に咥えてしゃぶりながら頷いて答えた。
「じゃあ…キスしてよ…」
豪ちゃんの口の中から指を出した俺は、ニヤ付く口元をあの子に向けて、舌を出した。そんな俺を見て火が付いたのか…豪ちゃんは、俺の首にしがみ付いて、むせ返る様なキスをくれた。
そんな乱れた豪ちゃんに、俺のモノがどんどん気持ち良くなって行く…
「もっと抱きしめて…」
快感を堪えながらあの子を見つめてそう言うと、豪ちゃんは顔を真っ赤にして俺に両手で抱き付きながら貪るようなキスをくれる。
…堪んない。
どМの豪ちゃんが…堪んない…!
ねっとりと腰を動かしてピタリと止めると…ビクビク震える自分のモノをあの子の中に入れたまま、トロける瞳を見つめて言った。
「豪…怒ったの…」
そんな俺の言葉に、豪ちゃんは自分のモノをビクビク震わせてイキながら言った。
「あっああ…ん、大好きなのぉ…」
堪らん…!
すぐにあの子の中からモノを出して、可愛い真っ白なお腹に精液を吐き出しながら、快感に鳥肌を立てた…
「はぁはぁ…」
「惺山…好き、好き…好き、大好き…!」
小さな声で何度もそう言ってキスをくれる豪ちゃんを抱きしめて、汗ばんだ髪を撫でながら言った。
「あぁ…俺も大好きだよ…豪…」
「豪ちゃん、上がるよ?」
は…?!
急に近くなった哲郎の声と、あいつが言った言葉に体を硬直させて、慌てて脱いだパンツとズボンを穿いた。
「豪ちゃん?中に居るの?」
やばい…!
すぐ、引き戸の扉の向こうに…哲郎が、いる…
「ん、ちょっと待ってぇ…」
豪ちゃんは観念したのかそう言うと、俺をクローゼットの中に押し込んで、扉を閉めた。
ズズ…
暗いクローゼットの中、引き戸を開く音に聞き耳を立てて、外の様子を伺った。
「あぁ…豪ちゃん…何してるんだよ…」
そんな悦びにも驚きにも似た…哲郎氏の声を聴いた…
シャツを途中まで脱がされて、スラックスを片方だけ脱いだ豪ちゃんは…さぞエロいだろう。
…まさか、豪ちゃんを襲ったりしないだろうな…!哲郎氏!
そんな不安を抱えながら、クローゼットの隙間から外の様子を伺っていると、豪ちゃんがパンツとスラックスを穿き直している後姿と、そんなあの子の真っ白なお尻を見つめて、自分の股間を抑える哲郎の背中を見た。
…哲郎…我慢だ…!
間違いなんて起こしたら…ここから飛び出してお尻ペンペンしてやるからなっ!
「片方だけ…穿いてみたかったのぉ…」
豪ちゃんは苦し紛れにそう言った。
あり得ない!でも、破天荒な豪ちゃんなら…あり得るかもしれない…
「え…そうなんだ…」
哲郎氏は、馬鹿だ。
豪ちゃんの言葉をすんなり信じたあいつは、シャツのボタンを留める豪ちゃんの後姿を見つめながら、再び自分の股間を抑え込んだ。
…哲郎…!堪えて…堪えてつかぁさい!
制服を着直した豪ちゃんは、ネクタイを首から掛けると、絞める事もしないで自分のリュックを肩にかけた。そして、俺を振り返りもせず、哲郎と部屋を出て行った。
「てっちゃん…行こう?」
「なあ…何してたの…?頬が赤いよ?オナニーしてたの…?」
哲郎は食い下がってそう言うと、豪ちゃんのお尻をナデナデしながら口元を緩めて笑った…
「ん…違うぅ…やめてよぉ!」
「なぁにが…!ねえ…何を、おかずにしてたの…?」
嫌がる豪ちゃんの声と、ねちっこい哲郎の声を、クローゼットの中で聴きながら…何かしたら、ただじゃおかないぞっ!と…心の準備を始めた。
「…ん、小林先生の…おっぱいを思い出してたのぉ!」
「はぁ?!マジかよっ!」
そんな豪ちゃんの声と同時に哲郎が冷めた様にそう言って、あの子の家の玄関の閉まる音と、鍵を掛ける音が聴こえた。
咄嗟に吐いた豪ちゃんの嘘が…どうぞ、小林先生の元へ届いて、彼女があの子に変な気を起こしません様に…
そんな思いを抱えたまま豪ちゃんの家を勝手口から抜け出て、鶏の居ない庭を眺めながら徹の実家へと戻って行く…
「あぁ…制服姿の豪ちゃん、可愛かったな…。」
豪ちゃんのお尻を見つめて、自分のモノを手で抑えた哲郎は…間違いなくあの子に欲情してる。今晩は何度も何度も、ティッシュが無くなるまで、抜きまくるだろう…
とっておきの“おかず”を手に入れたんだからな。
「第二楽章の大筋は決まってる。第一楽章のあの子の主題を転調させて落として行くんだ…。暗くて、明るくて、これを交互に…カノンの様に…重ねて落として行く。」
ブツブツとそう呟きながら穏やかな秋晴れの空を見上げて、上空を飛んでいく飛行機を眺める。
こんな朝早くから、飛行機も大変だな…
庭で不穏な空気を漂わせる鶏たちを横目に玄関を上がって、すぐにピアノに腰かけた。
そして、思いのままに…指を動かして鍵盤を鳴らして、あの子の主題を転調させて落として行く…
「あぁ…暗いな。もっと…このくらいのテンポか…?」
表現したいのは、豪ちゃんの二つの顔の交差。
”死”を見つめ過ぎてドライになった死生観を持ちながら、鶏の世話で“生きる”事について、哲学する…それが、豪ちゃん。
鶏の世話は、ただの趣味じゃない…
命が、無機質で、価値の無い物なのか…それとも、かくも尊い物なのか…
それを哲学する様に…毎日、生み落とされる卵に…自分の命を重ねては考えあぐねてる。
…明るくて、奔放で、自由なあの子は…”変わった子“と言う、もう一つのあの子。
こんな極端な陰と陽を内在させた…不思議な子。
それが…君だよ。
愛しの豪ちゃん…
「…転調によってあの子の陰と陽の部分を出すのは、単純すぎて、あの子らしくないな…」
ポツリとそう呟いて…豪ちゃんが気に入ったマズルカのリズムを刻みながら考える…
…第三楽章は迷う事無くマズルカだ。豪ちゃんが好きな異国の風を吹かせて…あの子の、のびのびとしたバイオリンパートを入れるんだ。
「きっと盛り上がる第三楽章になる…。初めにあの子に弾かせて…その音を貰うのも悪くない…そのまま…続けて第四楽章へ行くのも良いね…型破りなベートーベンの様に、第三と第四を続けて演奏しろとでも言おうかな…ふふ。」
問題は…第二楽章だ…
あの子の暗黒時代をどう表現する?
転調や用いる楽器の他に…どうやって表現する?
「惺山…ただいまぁ!」
いつの間にか俺の隣に座った豪ちゃんは、挨拶も早々に頬を膨らませて言った。
「ん、この!このぉ!」
グリグリと頭を詰られて、時計を見た。既に…午後の4時を回っている…
あちゃ…ご飯を食べ損ねた…
携帯電話を手に取って確認しながら、項垂れた。…セットした筈のアラームはしっかりと切られていた。
無意識の内に切ったみたいだ…
「ごめん…忘れてた…」
そう言ってピアノから立ち上がると、急いで冷蔵庫の中のお弁当を手に持って戻って来た。そして、呆れた様に首を傾げる豪ちゃんに差し出して言った。
「…食べさせて…!」
「ん、もう!僕は、朝から散々だったんだからな!誤魔化す為に吐いた嘘で、てっちゃんは僕の事、趣味が悪いって言うし…ん!もう!」
豪ちゃんは、お怒りの様だ…
怒れる豪ちゃんは、ピアノに座り直した俺から弁当を取り上げて、頭をペチペチと叩いて言った。
「どうしてやだって言ってるのにしたの?ん…もう、怒ったんだからぁ!」
「だって…だってぇ…!」
ケラケラ笑った俺は、あの子を抱きしめて胸に顔を埋めて言った。
「だって…この家では、健太がいるから…豪ちゃんとエッチ出来ないんだもん…。」
いいや。やろうと思えば、いつだって出来る。
「え…」
困った様に眉を下げた豪ちゃんは、俺の顔を覗き込んで言った…
「…そうだったの?」
いいや、やろうと思えば、いつでも出来る。
「うん…だから、つい…興奮して、ごめんね?」
わざとらしくしょんぼりして頭を項垂れさせると、眉を下げてあの子をじっと…見つめた。
「…良いよ。でも…もう、止めてね?」
豪ちゃんは眉を下げてそう言うと、俺の頬をナデナデして優しく抱きしめてくれた…
ちょろい…なんて、思ってないよ?
俺がこの子に弱い様に…この子も、俺に弱いんだ…
ただ、それだけだよ。
「あぁ…不滅の…アレグレット…」
ポツリとそう呟いた俺は、豪ちゃんの胸の中で、ふと、耳を掠めて行ったベートーベン交響曲第七番…第二楽章をピアノで弾き始めた…
この…重さ。この…暗さ。この…和音のハーモニー。
こんな雰囲気が欲しいんだよ…
同じメロディを弾いているだけなのに…強弱と、重なり方…楽器の音色と種類で、ひとつの曲を成している。
そして、まるで…同系色の細かいグラデーションの様な…広がりを見せるんだ。
「…この曲、怖い…!」
豪ちゃんはそう言うと、俺の腕を掴んでもう一度、言った。
「怖い!」
「怖くない…音色の奥を見るんだよ。これは、怖い曲じゃない…。強調はしているけど、それはこの第二楽章のうちの一部分だけ…ほら、この部分はもう、さっきの怖い気配は無いだろ?良い?木を見て森を見ずになってはいけないよ?初めから終わりまで…全体のバランスが大事なんだ。」
俺はクスクス笑いながら眉を上げて、豪ちゃんの柔らかい髪に頬ずりした。豪ちゃんは、ただ、じっとピアノの音色に耳を傾けて、黙ってコクリと頷いて答えた。
そして、曲は再び主題に戻って…あの子が怖がったメロディを奏で始める。
「あぁ…まただぁ…」
「この後…少し形を変えるんだ。よく聴いていてごらん?」
ピアノを弾きながら、徐々に形を変えて行く主題をあの子の顔を見つめて教えていく。
「ほら…変わった…転調して…明るくなったり…元に戻って、暗くなったり…少しだけ形を変えたり…同じ形を弾いたり…ね?」
俺の腕を掴んだままの豪ちゃんは、じっと耳を澄ませる様に左の耳を傾けて、本格的にこの曲に聴き入った。
この子の…曲の聴き方…特徴的だ。左の耳を向けて、聴き入るんだ。
”音楽祭“で、吹奏楽部の演奏を聞いた時も、弦楽部の演奏を聞いた時も、俺のCDを聴いた時も…そうだった。
この子は、左で音の細部を聴き分けてる。
万人において、耳自体の性能に差なんてそんなに無い。ただ、その後の処理が違うんだろうな…聴いた曲をこの子は何かに変換して頭の中にインプットしてる。
そして、それを自己流にアウトプットするのが、得意なんだ。
「…本当だぁ。ねえ、これは…誰が作った曲なの?」
焦点の合わない瞳でそう言うあの子を見つめて、にっこりと微笑んで教えてあげる。
「ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン、偉大な作曲家だ…」
「ベートーベン…?」
あの子がそう言ってにっこりと微笑むから、豪ちゃんの顔を見つめて言った。
「音楽の教室に、怖い顔をした彼の肖像画が飾られているじゃない?でもね、彼の曲を弾くと、あんなものイメージにしか過ぎないって…思うんだよ。あんなに荒々しくて、粗暴な印象なんて無い。」
そう言いながらベートーヴェンの“月光”を弾き始めると、耳を澄ませるあの子を見つめて言った。
「君の様に…持て余す“感性”に翻弄された人。鋭い”感受性“の持ち主…。それ故に人に理解されない、人を寄せ付けない、自分勝手と揶揄されて、孤立する。でもね、彼が作曲した曲は、どれも胸を揺さぶる様な物ばかりだ。繊細で、情緒的で、躍動感がある…。もしかしたら、彼は、自己表現を曲の中に見出したのかもしれない。理解されない自分を、曲の中で…表現したのかもしれない。…まぁ、俺の勝手な解釈だけどね…」
そう言って曲を弾き終えると、豪ちゃんを見つめて言った。
「君も…バイオリンで自己表現をしている様に見える。とても、生き生きして…こちらまで楽しくなる。君のバイオリンは、胸を揺さぶるんだよ…豪ちゃん。」
そんな俺を見上げると、豪ちゃんは首を横に振りながら言った。
「違う…、この人は…あなた。」
え…?
「彼は、あなたに似てる…本当は、とっても優しい人。だから、僕はベートーベンが好きになったみたい。」
豪ちゃんは、不思議そうにあの子を見つめたまま首を傾げる俺を、両手にギュッと抱きしめてそう言った。そして、いつもの様に俺の襟足を指先に絡めて、クッタリと脱力しながら、ふぅ…と優しいため息をひとつ吐いた。
「あぁ、素敵な曲だった…」
ふふ…
偉大なベートーヴェンに似てるなんて言われて、嫌な気はしないさ…
特に、この子に言われたら、重みが増す。
「…豪ちゃん、第二楽章が始まらない…何も、思いつかない…君の、少年時代を描きたいのに…どうしたものか、はぁ…何も思いつかないんだ。」
本当にそうだ…これかな?と目星を付けていた表現方法は、どれも、単純すぎてつまらない。
「あぁ…全然、思いつかない…」
俺の襟足で遊び続ける豪ちゃんに抱き付きながら、体に伝わって来るあの子の温かさに心地良くなって、ゆらゆらと揺らした。
「惺山…ご飯を食べないからだよ?」
豪ちゃんが、やけにきっぱりとそう言いきった。
そして、俺を大事そうに抱えながら弁当に手を伸ばして、蓋を器用に片手で開きながら言った。
「ご飯を食べないから、頭が回らないんだ。」
そうなのかな…?
「あ~んして?」
「あ~ん…」
冷たい弁当を餌付けしてもらいながら、優しく微笑みかけて来る豪ちゃんのほっぺを突ついて言った。
「ベートーヴェンは56歳で死んだ。」
「へぇ…病気か何か?」
興味なさげに口を尖らせた豪ちゃんは、卵焼きを箸で掴んで俺の口に運んで言った。
「あ~んして?」
「あ~ん…モグモグ、それが、死因がはっきりしないんだ。水銀中毒だったり、梅毒だったり、肝炎だったと話す人もいれば、全く違うと言う人が現れたり…謎なんだ。」
そんな話にクスクス笑った豪ちゃんは、お米を掴んで俺の口に運んで言った。
「じゃあ…ミステリーだ。」
そう…ベートーヴェンはミステリアス…
あの子を見つめながらニヤリと口端を上げた俺は、指を立てて面白い話を教えてあげた。
「彼の死後…3通の手紙が見つかった。“不滅の恋人”に宛てた…出されずじまいのラブレターだ。」
「え…?」
豪ちゃんは瞳をまん丸くすると、興味を持ったのか食い気味に身を乗り出した。
「”不滅の恋人“…?その人は…一体、誰だったの…?」
「分からない…」
俺の話に聞き入る豪ちゃんを横目に、わざとらしく、演技がかった調子であの子の顔を覗き込みながら言った。
「…ミステリーだ!」
「わぁ…!」
決まった…!
現に、豪ちゃんは胸に手を当てて、目をキラキラと輝かせてる。きっと、ベートーヴェンの事を、ミステリアスなラブレター書きだとインプットしたに違いない。
「格好良いねぇ?」
そうだろ?
俺も…そう思うんだ。
死後も尚、伝説とミステリーを作り続ける、そんな、魅力的な偉大なコンポーザーだ…
「惺山、最後…あ~んして?」
「あ~ん…モグモグ…」
あの子のお弁当を食べ終えた俺は、制服姿のあの子の腰を抱きしめながら、ぼんやりと空の五線譜を眺め続ける…
「ねえ…バイオリンの練習しても良い?」
豪ちゃんが、俺の髪をかき上げながら、ぼんやりする俺の顔を覗き込んで、そう言った…
「ほい…」
豪ちゃんを抱きしめる手を離して、解放してあげる。
そして、見つめ続ける五線譜の向こうで、あの子がピアノの上のバイオリンケースからバイオリンを取り出すのをぼんやりと眺めた…
そんな俺を見下ろしながら、おもむろにあの子はピチカートをして言った。
「惺山さん、惺山さん、何をそんなに悩んでいるの?」
「…ぷぷっ!」
見つめ続ける五線譜の向こう側で…あの子が楽しそうに笑いながらそう聞いて来るから、おかしくてクスクスと笑いながら答えた。
「イメージが、何も思いつかないんです…」
そんな俺の答えに、あの子はピチカートしながら言った。
「ではぁ、違う事を考えなさぁい?例えばぁ…今日の夜ご飯は何かな?とか、明日は晴れるかな?とか、そんな日常に、思いを馳せなさぁい…?」
「ぷぷっ!…も、それじゃあ、だめだぁ!」
キャッキャっと猿の様に笑い始めた豪ちゃんを追い払うため、椅子から立ち上がってピアノの部屋のドアを開いて待った。
あ…
ピチカートしながら俺の前を通り過ぎて行く豪ちゃんの背中を見て…閃いた。
「あ…!なる程…そうか、そうしよう…!」
そう言ってピアノの席に戻った俺は、あの子の主題をマーチにして鍵盤で弾いた。
交響曲の第二楽章…ここを第一楽章のソナタ形式を徐々に変形させて、行進曲へと変えて行こう。
自分の足では止まれない日常を、否応も無く進んでいく…マーチに例えて…
「…良い!」
そう言ってケラケラ笑って、あの子がにっこり笑ってピアノの部屋の扉を閉めるのを横目に見ながら、思いつくまま…鍵盤に指を落として、五線譜に音符を書き込んでいく。
進んでいく時間は、止まらないマーチそのものだ。
怖くても、進まないといけないんだ。
列を乱さず、距離を縮めず、“普通”という主観に戸惑いながら…一生懸命、周りを見て、歩幅を揃えて歩こうとする姿は…あの子が、苦しめられた物…そのものだ。
みんなと、同じ様に…
それが難しいと分かったから…あの子は、道化になった。
列を離れて…ある程度の自由を手に入れても…マーチから離れる事は無く、一緒に進んで行進を続ける。
「あの子は…道化だから。」
そんな枕詞を手に入れて少しだけ自由になると…少しだけ生き易くなった。
あぁ…そうか、それで…
”変わった子“というレッテルを貰いたがったのか。
その方が、楽なんだ。
諦められて、呆れられた方が、楽なんだ…
”普通”や”常識”なんて、根も葉もない主観で評価される事を拒んで…道化になる事を選んだんだ。
それに、トリッキーな動きが可能な分、モヤモヤが見えた人物に付きまとう事を…またやってるね…という、呆れた言葉で誤魔化せる。
…賢いね。
悲しいくらいに、賢い子だね…
第三楽章で…君の場所を作ってあげるからね…
「もう、少しの辛抱だよ…」
涙を滲ませながらそう言うと、曲の中…大きなマーチの周りを、張り付けた様な笑顔で動き回るあの子に言った。
「助けてあげる…。もう、道化はしなくて良い…君は居るべき場所へ…行くべきだ。」
そう言ってあの子のマーチを止めて、五線譜に音符を書き込みながら、ため息を吐いた…
ドラムラインが早く行けと行進を進めて…シンバルがうるさく鳴り響く、耳の奥をつんざく最悪のマーチを…俺も、誰も、みな…歩いてる。
”変わった子“や”ちょっと変な人“なんてのは…自分の居場所を求めて…道化に化けたり…マーチを外れたり、歩く事を止めてしまう人だっている…
一体どこへ向かう行進なのか…
誰も、目的も、何も、知りもしない癖に…
こんな事…馬鹿げてる。
それが生きる事だというのなら…何の為に産まれて来たのか…今一度、考えるべきだ。
誰しも、幸せになる為に産まれて来た…
社会や、常識や、誰かの主観に…雁字搦めになる為じゃない。
その日…その晩、生きる事が出来る糧さえあれば…十分なんだ。
それが、本来の人間の…生きる姿。
社会で偉くなったり…金持ちになったから、何だというんだ…
それは結局…マーチの中の、パートが代わっただけ。
自由でも…幸せでもない…
誰かが勝手に決めた事を幸せと思って…誰かが勝手に決めた事を不幸と思う。
いっそ…みんなで川へ入って行って、死ねば良いんだ。
きっと誰も疑問には思わないで、次から次へと川の中へ…突き進んでいくだろう。
どこが先頭なのか…どこが最後尾なのか…分からない。そんなマーチの中を、今も一心不乱に楽器を演奏しながら進んでるんだ…
ある意味…俺たちは哀れだ。
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