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エピローグ 午後三時のはじらいごと

 引越し業者のトラックを見送った途端、祐司の身体は鉛のように地面に引きつけられた。部屋に戻り、そのままベッドに倒れ込んだ。 「やべー……このまま寝そう……」  睡眠一歩手前で後ろからの声に呼び戻された。 「荷物、今日中にほどくんじゃないんですか」  もぞもぞと身をよじって顔だけその方向に向けると、腕を組んだ竜が不機嫌そうに立っていた。 「明日にしない? 竜も疲れたでしょ」  時刻は午後3時。春の日差しは優しく眠気を呼んでいる。 「そうやって気遣うふりして、自分が寝たいだけじゃないですか」  そう言いながら竜は二人分の広さのベッドに近づいてくる。 「ほら、起きてください。夕飯いらないんですか」  祐司をベッドから引き剥がそうとした竜の腕が引っ張られ、竜はそのままバランスを崩した。祐司はすかさず竜を腕の中に収める。 「祐司さん、あの」 「昼寝しようよ、今日から俺らの部屋なんだから。ここで息抜きしないでどこでするの」  祐司が肩に顔をうずめると、竜は逃げるように身じろぎした。まだスキンシップには慣れないらしい。結局、諦めの悪い祐司に竜が折れた。  暖かい光が部屋に差し込む。今日は二人の門出を祝うかのように空がご機嫌だ。  突然、竜が首を押さえて起き上がった。 「どうしたの?」 「あんたのせいだろ!」 「なんのことだか」 「〜〜〜〜〜っ、変態! 俺、荷物ほどいてきます!」   竜は鼻息荒く部屋を出て行った。その様子を祐司はにやにやしながら見ていた。 「俺もおっさんかもなぁ」  竜の首筋には、小さな痕がくっきりと残っていた。

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