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フォルダにある守との写真をすべて削除して、スマホを思いっきりベッドに叩きつけた。既婚者だって知ってたら最初から付き合わなかったのに。 眠気がどっかにいってしまって、冷蔵庫に入ってるいつ買ったか分からない缶チューハイを開けた。テレビをつけると漫画原作の恋愛ドラマがやっていたが、喧嘩のシーンが流れるとすぐに消した。 1本だけだと全く酔えず、結局家にあるだけ全部飲み干しやっと酔いが回ってきた。ベッドに移動する気力もなく、ソファの上で朝を迎えた。 夢の中で知らない誰かに名前を呼ばれた。顔は分からなかったが、逞しい体をした男だった。周りには 誰もおらず、一面に色とりどりの花が咲いていた。 昼過ぎにインターホンが鳴り、モニターを確認するとスーツを着た山西がいた。 「···何の用?」 「心配で様子見に来た」 「仕事は?」 「午後休みにしてもらった」 「···ちょっと待って」 扉を開けると、大きな袋を持っていた。 「それは?」 「食欲ないと思うけど、色々買ってきた」 中を見ると、美味しそうな惣菜やプリンがたくさん入っていた。 「···ありがとう。今コーヒー淹れるから」 「うん」 コーヒーをテーブルに置くと山西は頭を下げた。 「何もできなくて···ごめん」 「山西が謝ることじゃないよ」 「でも···」 「あいつ既婚者だったんだよね」 「え?」 「2年も付き合ってて黙ってるとか最低だよね」 話しながら涙がこぼれた。 山西はかける言葉が見つからないのか黙っていた。 「あの写真見てどう思った?」 「驚いたけど、浜口は浜口だから気にしないよ」 「そっか···。もっと早く話せばよかった」 「これからどうするつもり?」 「まだ何も考えてない」 「手伝えることがあれば、遠慮なく言って」 「うん、ありがとう」 山西の言葉で少し気が楽になった。 「そろそろ帰るよ。プレゼンの準備しないと」 そう言うとコーヒーを飲み干して立ち上がった。 「プレゼンって新商品の?」 山西が首を縦に振った。自分がいなくても、会社は何も変わらず回っていることが悲しかった。 「来てくれてありがとう」 「いつでも連絡して」 そう言って山西は帰っていった。 夕飯を食べて寝ようとしたが、目を閉じると守の顔が浮かんできて全く眠れなかった。寝間着のまま コンビニに行って、カゴいっぱいに缶チューハイを 買った。 それから酒を飲まないと眠れなくなり、昼夜が逆転した生活を繰り返した。

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