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転生−1−

「ケイ、俺にはお前が必要だ」 またあの夢を見た。日に日に声や風の感触がリアルになってるような気がする。 仕事を辞めて1ヶ月が経った。酒の量はどんどん増えていき、起きてるときは必ず片手に缶を握りしめていた。だめだと分かっていても、なかなか抜け出せずにいた。 ある日、大学時代の友達の実奈から連絡があった。 実奈はカミングアウトしてる唯一の友達で、守とのことも全部知っている。 「···慶、生きてる?」 「なんとかね」 「明日、よかったらランチしない?」 「···昼に起きられるか分かんない」 「奢るから頑張って起きてよ」 「うん、それなら頑張る」 「もー現金なんだから」 そう言って2人で笑った。 「笑えるくらいなら大丈夫そうだね」 「···心配かけてごめん」 「気にしないで。じゃあ明日楽しみにしてる」 「うん」 電話を切って、鏡を見ると髪と髭が伸び放題で別人の自分がいた。すぐに髭を剃って、今から行ける美容室を探して家を出た。 若白髪も目立ってたので、カラーもお願いした。髪がすっきりしたことで気持ちも軽くなった気がしてその日は久しぶりに酒を飲まずに眠れた。 いつもの夢を見ないまま朝の日差しで目が覚めた。 カーテンを開けると、澄み切った青空が広がり気持ちよかった。実奈から起きてるかどうかの確認メッセージが届いていた。 出かける準備をして、今から出ると実奈にメッセージを送った。溜まりに溜まったゴミを捨てて、待ち合わせ場所へと向かった。 初めて降りる駅で、地図アプリでルートを確認しながら歩いていると見覚えのある顔が道路の反対側に見えた。 守が離婚調停中だったはずの奥さんと仲良さそうに歩いていた。奥さんは認めたくはないが悔しいくらい美人で、目線を下げるとお腹が膨らんでいた。 僕が苦しんでる間も守は奥さんと幸せに過ごしてたのかと思うと、胸が苦しくなった。見たくないと思う一方でどうしても目が離せなかった。 奥さんが鞄から何かを取り出そうとすると、道路に中身が散らばった。守が道路に出て拾おうとしたとき、1台の車がスピードを落とさずに向かってきた。 「危ない!」 思わず体が動いて、守を突き飛ばした。 守が名前を呼ぶ声と体が車にぶつかった鈍い聞こえて、意識が途切れた。

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