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「目を開けなさい」 女性の声が聞こえて、恐る恐る目を開けると真っ白な空間が広がっていた。 「ここは···?」 手を伸ばしても何もなかった。 「あなたがいた世界と異世界の間にある歪みです」 声の主の姿は分からないが、言われたことが理解できず逃げ出そうとした。 「どれだけ走ってもこの歪みに出口はありません」 「そんな···」 「あなたは車に轢かれて命を落としました」 「···え?」 「既婚者であることを隠していたクソ男を庇ってあなたは亡くなりました」 綺麗な声で守のことをクソ男と呼ぶギャップに少し笑いそうになった。 「そんなお人好しなあなたに、異世界に転生する機会を与えます」 「異世界に転生···」 「決定事項ですので、覚悟を決めてください」 「そんな急に言われても···」 「あなたは今の自分に満足していますか?」 仕事も恋人も失って、酒に溺れた自分に満足してるはずはなかった。やり直せるチャンスがあるのなら やり直したいと思っていた。 「どうやら覚悟が決まったようですね」 声の主がどこからともなく現れた。 薄いブルーのドレスを着た銀髪の綺麗な女性だった。 「私の名前はイヴ。異世界への案内人です」 そう言って深々と頭を下げた。 「ど、どうも···」 「転生する前に職業を決めましょう」 イヴと名乗る女性がパチッと指を鳴らすと、自分の身長ほどのパネルが3枚現れた。 左から戦士、魔術士、治癒士と書かれていた。 「戦士は攻撃力とスピードに優れ、近接戦に強いです。魔術士は魔力が高く、攻撃範囲が広いため遠距離での戦闘に向いてます。治癒士はHPが高く、回復薬の生成や回復魔法が得意です」 「なんか···RPGゲームみたいですね」 「そうですね。ただ、ゲームと違うのはやり直しがきかないということです」 声のトーンが低くなり、真実味を帯びていた。 「さて、どれになさいますか?」 せっかくなら、小さい頃から憧れていた職業にしようと思い質問に答えた。 「魔術士で」 「かしこまりました」 次の瞬間、道場みたいな真四角の空間に移動した。 「ここは?」 「訓練場です」 「訓練場?」 「基本的な戦い方を学ぶ場所です。訓練の前に基本的な装備一式をお渡しします」 イヴから箱が渡され開けてみると、えんじ色のローブと緑色の分厚い本が入っていた。 「ローブは身につけると魔力を増強してくれます。本は魔法の詠唱に必要ですので失くさないように。私の出番はここまでです。幸運を祈ってますよ」 そう言うとイヴは消えた。

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