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遭遇−1−

異世界に転生したというありえない事実がどうでもよくなるくらい、綺麗な景色が広がっていた。 しばらく歩くと、鬱蒼とした森が見えた。何か食べ物がないか探しに行こうとしたとき、森の中から地鳴りのような鳴き声が聞こえた。あまりの大きさに鳥たちが一斉に飛び立った。 本を握りしめて、声がした場所へと向かった。ひらけた場所に出ると、身長ほどはある大剣を持った男の戦士が3mを優に超える熊と戦っていた。 男の体は傷だらけで防戦一方だった。このままではやられてしまうと思い、咄嗟に熊の属性を確認して呪文を唱えた。 「アクアショット!」 水の銃弾が胸を貫き、熊が倒れた。戦士は驚いた顔でこちらを見た。 「あの···大丈夫ですか?」 駆け寄ると、男は立ち上がって歩き出した。 「そんな体で歩いちゃだめです」 話しかけても答えない。 「助けたのにお礼もないんですか?」 「頼んでない。余計なことするな」 横柄な態度に腹が立ち、腕を掴んだ。 逞しい腕には傷跡がたくさんあった。 「離してくれ」 「嫌です」 「離せって言ってるだろ!」 「嫌です!」 そんなやりとりをしてると、後ろで音がした。 さっき倒したはずの熊が迫ってきていた。 「どけ。俺の獲物だ」 今にも倒れそうな体で熊に向かっていき、剣を振り下ろす前に突き飛ばされて気を失ってしまった。 「だから言ったのに···」 戦士にトドメを刺そうとする熊の前に立ちはだかり 呪文を唱えた。 「アクアフォール!」 巨大な滝が現れ、熊を押し潰した。 ホッとしてその場に座り込むと、お腹が鳴った。 こっちの世界に来てからまだ何も食べてなかったので、倒した熊を食べてみることにした。 風の刃で肉を切り出し、火を焚いて焼くといい匂いがしてきた。一口食べてみると、繊維が多い牛肉みたいな味で美味しかった。 戦士の体を揺らしてみたが、まだ起きる気配はなかった。顔は彫りが深く、輪郭がしっかりしていた。 濃い顔は元々好きではないが、何か惹かれるものがありしばらく顔を見ていた。 食べきれなかった肉は戦士のためにも残しておくことにした。また魔物に襲われないように、周りを風の壁で囲んで眠りについた。

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