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べネールに向かいながら、5つの国についてクリスに
説明してもらった。
海に囲まれてる水の国→べネール
火山の麓にある火の国→ルケーノ
電力を供給する雷の国→ピゴーロ
街ごと空に浮く風の国→ヒュート
大砂漠が広がる土の国→ザバーム
代々石を守るのは、キーパーと呼ばれる強大な魔力を持つ王族の血を引く者で、滅多に姿を見せないので神のような扱いになっているそうだ。
クリス曰く、他の国の石も盗まれる可能性が大いにあるため、各国は警備を強化しているらしい。
なんだかんだ言いながら、この世界のことを詳しく教えてくれるクリスは案外いい人なのかもしれないとそんなことを思っていると、目の前に穏やかな海が広がっていた。
「綺麗ですね!」
「水の国べネールは観光地としても人気で、その日とれた魚で作る料理は絶品だぞ」
「詳しいんですね」
「小さい頃、家族でよく来たからな」
そう言うクリスの顔は寂しそうに笑っていた。
「···仲良かったんですね」
「親父は腕利きの鍛冶職人で、戦士では知らない人がいないくらい有名だった。俺が戦士になるって決めたときにこの剣を作ってくれたんだ」
大剣を見つめる眼差しは優しかった。
「大事にしないとですね」
「剣が折れたときは戦士をやめるときだ」
そう言って、剣をしまった。
海沿いの道をしばらく歩くと、大きな門が見えた。
商人や観光客で長い列ができていて、僕たちも列に加わった。
「転生者だっていうことは隠したほうがいい」
「分かりました」
2時間ほど待って、やっと次だというときに後ろから
悲鳴が聞こえた。声のした方を振り返ると、何十体という狼のような魔物がこちらに向かっていた。
「あれは速いから気をつけろ」
クリスは剣を抜いて走り出した。
「みなさん!早く門の中に!」
衛兵が叫ぶと、列に並んでた人が一斉に門の方へと
集まってきた。何とか人だかりを抜け出して、クリスの元に急いだ。
衛兵も何人か魔物と戦っていたが、みるみるうちに倒されていた。一体こっちに向かってきたので属性を確認して呪文を唱えた。
「ウィンドブレード!」
風の刃が魔物めがけて飛んでいったが、全て避けられた。まずい、と思った次の瞬間、クリスが魔物を
倒していた。
「だから早いって言ったろ」
「あ、ありがとうございます」
「俺が1か所に集めるから、そしたら頼んだぞ」
クリスは剣を高く振りかざし地面に突き刺した。
「サークルインパクト!」
衝撃で地面が盛り上がり、魔物を取り囲んだ。
「今だ!」
「トルネード!」
空から竜巻が伸びてきて魔物たちを蹴散らした。
連携が上手く行って、心なしか嬉しかった。
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