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ルルに家だと紹介されたのは、高級ホテルのような
豪華絢爛な王宮だった。あまりの広さに驚いていると、クリスに腹を小突かれた。
「間抜けな顔をするな」
「驚かない方が無理ですよ···」
「食事の用意ができたら呼ぶから、それまで各自
部屋で寛いでくれ」
使用人に案内された部屋は、1人で過ごすにはあまりにも広すぎて逆に落ち着かなかった。クリスは隣の部屋だった。
しばらくして、扉がノックされた。
「ケイ様、お食事の用意ができました」
「分かりました。今行きます」
クリスも部屋から出てきて、一緒にダイニングへと向かった。フォーマルな服装に着替えていて、戦っている時とは別人のようだった。
「何を見てる?」
「いや、似合ってるなと思って」
「普段は着ないから、俺には違和感しかないが」
「ギャップってやつです」
「何だ、そのギャップというのは」
「···何でもないです。行きましょう」
見上げられるほどの扉がゆっくりと開くと、30人は余裕で座れるようなダイニングテーブルがあり、上にはありとあらゆる料理が乗っていた。ルルは一番奥にいてクリスと向かい合わせに座った。
「べネールによく来てくれた。歓迎するぞ」
グラスにワインが注がれて、乾杯した。
「早速だが、盗んだやつの見当はついてるのか?」
「そう焦るな。食べた後でも遅くはない」
「···すまない。では遠慮なく頂く」
料理はどれも美味しくて、気付いたら端から端まで
つまんでいた。
「全部美味しかったです!」
「そうか。気に入ってくれてよかった」
料理が下げられ、ダイニングには3人だけになった。
「クリス、先程の質問だが、犯人はおそらく転生者だとわしは思っている」
「噂は本当だったか」
「石には最上級の魔術がかけられており、キーパー以外触れないようになっておるのじゃが、やつはいとも簡単に盗んでみせた。それができるのは転生者しか思い浮かばん」
「姿を見た人は?」
ルルは首を横に振った。
「そうか···」
「力になれずすまない。ただ、言えることがあるとすれば···」
ルルは僕の顔を見た。
「転生者を倒せるのは転生者だけじゃ」
「···俺じゃ力不足だって言うのか!」
クリスはテーブルを叩いた。
「そうは言っとらん」
そう言うと、ルルは剣をテーブルの上に置いた。
「これはお主の父親が最後に作った剣じゃ。息子が来たときに渡してくれと言われてのう」
クリスは驚きつつも剣を手に取った。大きさはクリスが持つ大剣よりも一回り小さかった。
「これは魔法を纏うことができる剣じゃ。つまり、
ケイの魔力を使えばやつと対等に戦えるじゃろう」
「全然知らなかった···」
「お主らが出会ったのは運命かもしれんのう」
クリスは僕の方を見て頭を下げた。
「ケイ、力を貸してくれ」
「もちろんです」
「恩に着る」
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