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クリスが先に部屋に戻り、僕も戻ろうとするとルルに呼び止められた。
「ケイ、本を貸してくれないかの?」
ルルが手をかざすと、本が青く光った。
「転生者と戦うには、それなりの魔術が必要じゃ。
わしが知ってる中で最上級の攻撃魔法を授けよう」
本を受け取ると、ルルが手を握った。
「わしもお主らと一緒に行きたいが、この国を守らねばならぬ。じゃから、べネールで一番の治癒士を連れて行くがよい。必ず生きて帰ってくるのじゃ」
「はい」
治癒士は明日合流するということだ。部屋に戻って本を開くと、新しい呪文が追加されていた。攻撃可能な敵の数は∞となっていた。
用意された寝間着に着替えて、窓の外を見ると夜空に無数の星が輝いていた。元の世界に戻りたいとは不思議と思わなかった。
翌朝、扉をノックする音で目が覚めた。使用人かなと思って、扉を開けるとクリスだった。
「わっ!」
驚いて声が出た。
「もう出るぞ。早く支度しろ」
それだけ言うと、入り口の方へ歩き出した。
背中には大剣と一緒に昨日の剣もあった。
「ちょっと待ってくださいよ!」
大急ぎで支度をして、クリスを追いかけた。
入り口に着くと、大きなリュックを背負った女の子がルルの隣に立っていた。髪の毛がクルンクルンで
可愛らしい顔をしていた。
「はじめまして!治癒士のマイルです」
「クリスだ」
「初めまして、ケイです」
「マイルにはお主らのことを話してある」
ルルがそう言うと、マイルは大きく頷いた。
「足を引っ張るなよ」
クリスはマイルのことを疑っているようだった。
「それはこっちの台詞です!」
無邪気な笑顔でマイルは言い放った。
クリスは意外な答えに面食らっていた。
「相性はよさそうじゃのう」
ルルの言葉に思わず笑ってしまった。
「世話になった。行くぞ」
そう言うとクリスは外に出た。
「お世話になりました。また遊びに来ます」
「うむ。幸運を祈っておる」
ルルと抱き合って、マイルと一緒に外に出た。
気持ちのいい青空が広がっていた。
「次の目的地は?」
「ここから近い火の国、ルケーノに行く」
「わかりました」
「これ、渡しておきます」
マイルが小さな袋をくれた。
「マイルの特製回復薬です!」
「本当にお前が作ったのか?」
「はい!いざというときに飲んでください!」
「ありがとう、マイル」
ローブのポケットに入れて、ルケーノに向かった。
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