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エントリーは闘技場で受け付けているということで円形の大きな建物を目指した。最終日ということもあり、参加希望者の行列ができていた。 「こんなにいるんですね」 「賞金目当てのやつがほとんどだろうな」 「マイルもお金ほしいです!」 マイルの言葉に何人か振り向き、笑っていた。 30分ほど並んで、やっと僕たちの番になった。 「こちらにお名前をお書きください」 クリスと僕の名前をエントリー用紙に書いた。 「対戦はトーナメント形式になっていて、あなた達はグループHになります」 そう言うと、受付の女性が青い布をくれた。 「大会当日はそちらを腕に巻いてご参加ください」 「分かりました」 闘技場の中は大会の準備等で明後日まで立入禁止ということで、宿屋に向かった。 宿屋は街に3つあったが、どこも大会の参加者で部屋が埋まっていた。困っていると、声をかけられた。 「あの···」 振り返ると、少しふっくらした女性がいた。 「どうしましたか?」 「夫と息子を助けてくれた方たちでしょうか?」 「あ!洞窟で助けた男の子のお母さん!」 マイルの言葉に女性は頷いた。 「助けていただき本当にありがとうございました。もしよかったら、我が家に泊まりませんか?」 「3人も世話になっていいのか?」 「狭いですけど、それでもよければ」 他にあてもないので、お言葉に甘えることにした。 家は2階建てで、闘技場からほど近かった。 「どうして俺たちのことが分かったんだ?」 「夫から手紙が届いたんです。大剣を背負った人とえんじ色のローブを着た人、それと大きなリュックを背負った女の子がいたらお礼をしてくれって」 「そうか。大会まで世話になる」 「はい。食事の準備をしますので、よかったら先に 汗を流してください」 マイル、クリス、僕の順でお風呂に入った。温泉の成分のおかげか、肌がスベスベになった気がした。 夕飯を食べ終え、マイルは子供部屋に、クリスと僕はリビングで寝ることになった。 「今日は眠れそうか?」 クリスの声が優しかった。 「子どもじゃないんで、大丈夫です」 ニヤける顔を見られないように背中を向けた。 「俺から見ればまだ子どもだけどな」 クリスの笑顔が増えた気がする。 「そういえば、クリスって何歳なんですか?」 「今年で35だ」 「ちょうど10こ違うんですね」 「あの最低野郎も年上だったのか?」 あの話をしてから、守はそう呼ばれている。 「守は3こ上でした」 「···そうか。そろそろ寝る」 「おやすみなさい」 「おやすみ」

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