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目が覚めるとクリスの姿はなかった。どこに行ったのか探していると、外から剣を振る音が聞こえた。 声をかけようか迷ったが、汗を流しながら剣を振り続ける姿を見て邪魔をしてはいけないと思い、静かに扉を閉めた。 水を飲みにキッチンに行くと、マイルが目をこすりながら下りてきた。寝癖のせいでいつにも増して髪がクルクルだった。 「マイル、おはよう。眠そうだね」 「ケイ、おはようございます。マイルは成長期だからいつでも眠いです···」 そう言うと大きなあくびをした。 「すぐに朝食を用意しますね」 「僕も手伝います」 「それじゃ、パンを切ってもらえます?」 「分かりました」 準備を始めると、クリスが戻ってきた。 「すまないが、風呂を借りても?」 「ええ、もちろんです」 「助かる」 クリスを目で追っていると、指を切ってしまった。 「痛っ」 「ケイ、見せてください!」 マイルはリュックから小さなスプレーボトルを取り出すと、傷口に吹きかけた。 「これでもう大丈夫です!」 切ったところを見ると、傷口が塞がっていた。 「すごい」 「治癒士の七つ道具です!」 「ありがとう、マイル」 「お安い御用です!」 キッチンに戻ると、女性が心配そうにしていた。 「切ったとこ大丈夫ですか?」 「お騒がせしてすみません···」 「あの戦士さんのこと好きなんですか?」 「そ、そんなんじゃないです!」 「あら、私の勘違いでしたね」 「···そんなに分かりやすいですか?」 女性がニコニコしながら首を縦に振った。 朝食が出来上がったタイミングで、クリスがお風呂から出てきた。さっき言われたことが気になって、今度はクリスを見れなくなった。 朝食後、3人でルケーノのキーパーに会いに行った。 闘技場の隣にある要塞のような建物に入ろうとすると、衛兵に止められた。 「ボル様に何の用だ?」 ルルの紹介状を見せても取り合ってもらえず、結局会うどころか中にも入れてもらえなかった。 「明日にならないと会えないんですかね?」 「恐らくな。それだけ警戒してるってことだろ」 「2人ならきっと優勝できます!」 「マイル、ありがとう」 帰り道、前から漆黒のローブを来た人が歩いてきた。背はクリスと同じくらいでフードを目深に被っていたため、顔はよく見えなかった。 「明日、楽しみにしてるよ」 すれ違うとき、はっきりと耳元でそう言われた。 慌てて振り向くと、声の主は消えていた。 「どうした?」 「···いや何でもないです」 ざらついた声が耳に残り、汗が止まらなかった。

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