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なんとか勝ち上がり、準決勝までやってきた。あの魔術士は一足先に決勝に進んでいる。 準決勝の相手は双子の魔術士で、属性を組み合わせた魔術が得意だとクリスが教えてくれた。 「有名人なんですか?」 「カイとサイは伝説の魔術士ファーゴの孫で、知名度はもちろん実力も折り紙付きだ」 「厄介ですね···」 「連携攻撃が多いから、まずは1対1に持ちこむぞ」 「分かりました」 ステージに上がると圧倒的にカイとサイを応援する声が多かった。2人は余裕そうな表情で観客に手を振っていて少しムカついた。 試合が始まると、カイとサイがまず仕掛けてきた。 「スパークルドラゴン!」 竜の形をした炎が雷を纏って向かってきた。 「アースジャイアント!」 地面に手をかざして、岩の巨人を壁にした。 「へーなかなかやるじゃん。でも、甘いね」 そう言うと、2人は新しい呪文を唱えた。 「マグマバースト!」 空中にドロドロとしたマグマの塊が現れ、風船のように膨らむと弾けた。マグマの雨が降り注ぎ、巨人はあっという間に溶けてしまった。雨に当たらないように避けながら、次の一手を考えた。 「アイシクルストーム!」 水と風を組み合わせて、吹雪を起こした。マグマが冷えて固まり、状況を立て直すことができた。 「よくやった」 クリスは微笑んで、カイに向かっていった。 「戦士ごときが。遊んであげるよ!」 カイとサイが離れて1対1の構図になった。 「どうなっても知らないからね」 サイは不敵な笑みを浮かべて攻撃してきた。 「ファイアーウルフ!」 3匹の狼が僕とクリスめがけて走り出した。 「アクアドルフィン!」 すかさず攻撃を防いだ。クリスも僕もなかなか攻撃の機会を与えてもらえなかった。 「守ってるだけじゃ勝てないよ」 次々と繰り出される攻撃をなんとか防ぎつつ、攻撃のタイミングを見極めた。一瞬、カイの様子を見た瞬間を見計らって呪文を唱えた。 「アクアショット!」 本に命中し、サイの手から離れた。 「アクアフォール!」 滝に押し潰され、サイは気を失った。 「サイ!」 カイの気がそれたタイミングを見逃さず、クリスが峰打ちをした。カイも倒れ、決勝進出が決まった。 決勝は30分後に始まるということで、待機室に戻るとマイルがいた。 「2人ともお疲れ様です!これ飲んでください!」 渡された飲み物は茶色く濁っていた。 「なんかすごい色してるけど···」 「マイルお手製の栄養ドリンクです!」 クリスは何も言わずに一気に飲み干した。恐る恐る飲んでみると見た目の割に味は美味しかった。

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