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地下−1−

「なんか、ここ薄気味悪いわね」 ジュリアの言う通り、明かりはついているのに視界が悪く空気も重たい感じがした。地下道の幅は人がギリギリすれ違えるほどの広さだった。 「やけに静かだし···」 確かに、僕たちの足音と声しか聞こえなかった。 「なら戻ればいいだろ」 クリスが振り向いてそう呟いた。 「もうちょっと私に優しくしてくれてもいいのに」 「クリスはケイにぞっこんなんです!」 マイルが余計なことを言った。 「え!2人付き合ってるの?」 「キスしてるとこ見ましたもん!」 「へぇ、クリスも隅に置けないわね」 ジュリアがそう言うと、クリスが足を止めた。 「怒っちゃった?」 「静かに!何か来るぞ」 耳をすませると、何かが近づいてくる音がした。 息をひそめて正体を表すのを待った。 「伏せろ!」 クリスがそう言うと、コウモリの大群が頭上を通り過ぎていった。魔物ではなく地下道に棲みついているようだった。 しばらく進むと、電力室と書かれている扉が左手に現れた。中に入ると、発電機と思われる機械の横に 電源のスイッチがたくさんあった。 「かなり埃っぽいですね」 「誰かが来た形跡もないな」 「これ何かしら」 ジュリアがノートのようなものを見ていた。 「マイルも見たいです!」 床に置いて内容を確認すると、ここで働いてた人の 日誌のようだった。破れてたり変色したりしていて読めないところもあった。 「ここ見てください!」 マイルが指差したのは、最後のページだった。 同僚はみんなあいつにやられた。 国は俺達を見殺しにするつもりだ。 せめて死ぬなら明るいところで死にたい。 最後に娘に会いたかった···。 「あいつって誰かしら」 「俺の家族を殺したやつではなさそうだ」 「どうして分かるんですか?」 クリスはノートの裏表紙を見せてくれた。 「少なくともこれは50年前のものだ」 持ち主と思われる名前の下に日付が書かれていた。 「過去に何かあったことは間違いないな」 「まさか他にも転生者がいたとか··」 「その可能性も否定できないな」 「考えても仕方ないからとりあえず進みましょ」 「そうだな」 ノートは何かの手がかりになるかもしれないので、一応持って行くことにした。 電力室を出ると、明かりが一斉に点滅し始めた。 「何が起きてるの!?」 ジュリアが剣を構えた。 「マイル、怖いです!」 マイルはその場にしゃがみこんだ。 「離れるなよ!」 クリスが振り向いて叫んだ。 次の瞬間、明かりが消え真っ暗になった。 再び明かりが点くと、3人の姿はなかった。

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