28 / 78
雷都−1−
電力を供給する国ということもあり、発電所が街のほとんどを占めていた。住居は団地のように1か所に集まっていた。
「殺風景なところね」
ジュリアの言うとおり、灰色の建物が並び無機質な印象を受けた。
「誰も歩いてないです···」
マイルが不安な表情で辺りを見回した。
「とりあえず、情報を集めよう」
クリスの提案で、二手に分かれて動くことにした。
足を進めても景色がほとんど変わらなかった。
「街の人はどこにいるんでしょうか」
「おい、あれを見ろ」
視線を追うと、建物の前に行列ができていた。
並んでる人たちの目は虚ろで、さながらゾンビのようだった。
「薬の出処で間違いなさそうだな」
建物から出てくる人はみな赤い錠剤を持っていた。
「どうします?」
「薬をもらってマイルに調べてもらおう」
そう言うと、剣を僕に預けて行列に加わった。15分ほどでクリスの番になり、薬を手に戻ってきた。
「中に薬を作ってる人はいましたか?」
「いや、あそこは受け渡し場所みたいだ」
「そうですか。マイルたちと合流しましょう」
さっきの倉庫へと向かった。
倉庫の扉を開けると2人が先に戻っていた。
「何か見つかった?私たちは収穫ゼロ」
「俺たちは薬を見つけた」
クリスは赤い錠剤をマイルに渡した。
「成分を調べてみます」
そう言うと、リュックから実験器具のようなものを取り出した。錠剤を透明な液体に入れると、泡を出しながら液体が紫色に変化した。
「やっぱり···この薬はあの植物から作られてます。早く止めないと···」
次の瞬間、物凄い音を立てて天井から何かが落ちてきた。破片が当たらないようにすかさず避けた。
「シンニュウシャハッケン」
「シンニュウシャハハイジョセヨ」
ドローンのような機械が4体、僕たちを囲んでいた。
「気をつけろ。何かしかけてくるぞ!」
「シンニュウシャハハイジョセヨ」
機械の真ん中が光ったと思ったら、レーザーのような光が発射された。ギリギリのところで避けたが、ローブに穴が開いてしまった。
「ロックブレイク!」
鋭利な岩の破片が機械に向かって飛んでいったが、
すばしっこい動きで避けられた。
「あんなに高く飛ばれたら攻撃もできないな」
「あら、そこは私に任せて」
ジュリアは短剣を鎖で繋いでリーチを伸ばした。
「チェーンウィップ!」
鞭のように鎖がしなって次々と機械を破壊した。
「ジュリア、すごいです!」
マイルが思わず拍手していた。
「だから私が必要だって言ったでしょ?」
ジュリアはクリスに笑いかけた。
ともだちにシェアしよう!