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「近くに機械を操作してるやつがいるはずだ」
そう言うと、入り口に小さな人影が見えた。
「逃さないわよ!」
ジュリアの投げた短剣が扉への進路を塞いだ。
「くそっ!」
「顔を見せろ」
近づいてきたのは、マイルとほとんど背丈が変わらない男の子だった。左手には機械を操作していたと
思われるリモコンのような物を持っていた。
「俺の大切なメカを壊しやがって···」
男の子は壊れた機械の破片を拾った。
「もしかして、君がこの機械を作ったの?」
聞いてみると男の子は頷いた。
「すごいね」
機械は子どもの玩具とは思えない精巧な作りをしていた。褒めると男の子は少し照れていた。
「感心してる場合じゃないだろ。どうして俺たちを攻撃したんだ?」
「···メカの性能を試したくて」
「まさかそれだけのために攻撃したの!?」
「うるせぇ、おばさん」
「誰がおばさんだ、このクソガキ!」
今にも暴れ出しそうなジュリアを必死に押さえた。
「本当の目的を教えてくれないか?」
クリスは膝をついて、男の子と同じ目線になった。
男の子はしばらく俯いて、顔を上げた。
「あいつを倒せるかどうか試したんだ」
「あいつって?」
「この薬を作ってるやつだよ」
ポケットから取り出したのはクリスがもらったのと同じ赤い錠剤だった。
「誰が作ってるか知ってるのか?」
男の子は首を縦に振った。
「俺はパウロ。この薬のせいで街の大人達はみんなおかしくなった。俺の母ちゃんも···」
「この薬には幻覚を見る作用があるんです」
マイルが薬のことをパウロに一通り説明した。
「やっぱりおかしいと思ったんだ!」
パウロによると、1ヶ月前にピゴーロに来た治癒士が
仕事の疲れを軽減する薬として配り始めたらしい。
「最初はみんな怪しがってたんだ。でも、口コミでどんどん飲む人が増えてって···。薬が切れると、母ちゃんは俺に暴力を振るうようになった」
「見てもいいですか?」
マイルがそう言うと、ゆっくり袖を捲った。パウロの腕には痛々しい痣がいくつもあった。
「···同じ治癒士として絶対に許せません!」
怒りのあまり拳を地面に叩きつけようとして、ジュリアに止められた。
「街の人たちを救えるのは今マイルだけ。だから、大切な手を傷付けちゃダメよ」
「···すぐに治療薬を作ります!」
「私はマイルを手伝うから、クリスたちは胡散臭い治癒士をぶっ飛ばしてきて」
「···手伝ってくれるのか?」
パウロは驚いた顔をしていた。
「俺たちの力が必要なんだろ?」
「手伝わせて」
「···ありがとう!」
パウロが泣きながら頭を下げた。
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