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次第に冷たくなっていくネロの体に、涙の染みが広がっていった。
「泣いてもネロは生き返らない」
クリスは剣をしまった。
「···なんでそんなこと言うんですか?」
「戦いには死が付きものだ。その覚悟がないなら、
戦うのをやめろ」
クリスの言ってることが正しいと分かっていても、
なぜか無性に腹が立った。
「そんな言い方しなくても」
ジュリアが間に入ってくれた。
「俺が言ってることは間違ってるか?」
「間違ってないけど···」
「ブレンを追うぞ」
「僕が死んだらクリスは泣かないんですか?」
「ちょっと···縁起でもないこと言わないでよ」
クリスは黙っていた。
「何か言ったらどうなんですか!」
歩き出した背中に言葉をぶつけた。
「その時は俺も死ぬ」
クリスの声は真剣そのものだった。
「来ないのか?」
涙を拭いて、差し出された手を握った。
部屋の奥に扉があり、中にブレンがいた。
「おや、思ったより生き残ってますね」
ブレンは笑顔で拍手していた。
「アクアショット!」
ブレンは余裕な顔で弾を避けた。
「そう焦らないで。ゆっくり楽しませてください」
「あいにくあんたと遊ぶ時間はないの」
ジュリアが短剣を構えた。
「せっかちな女性は嫌われますよ」
「よく喋るわね。少し黙ったら?」
ジュリアが素早い動きで攻撃を仕掛けたが、ブレンは笑いながら避けた。
「だから言ったのに」
そう言って、ジュリアの背中に蹴りを入れた。
壁にぶつかった衝撃でジュリアは気絶した。
「ジュリア!」
「おやすみなさい」
「この野郎!」
クリスが剣を握りしめて振り抜いた。
「遅すぎます」
ブレンはクリスの懐に入ると腕を掴んで捻った。
手から剣が落ち顎に蹴りが入った。クリスの体は
床を転がった。
「クリス!」
「期待していたのに大したことですね。転生者の
あなたならどう私を楽しませてくれますか?」
「···転生者って知ってたんですね」
「もちろん。情報はあって損はないですから」
「執政官にまでなって何がしたいんですか?」
「この国は他の国に電力を供給しています。つまり
電力の供給量は私次第ということになります」
「もしかして···」
「察しがよくて助かります。私はこの国をこの世界を手に入れたいのです」
「それは僕を倒してからにしてください」
覚悟を決めて戦いに備えた。
「威勢がいいのは嫌いじゃないですよ」
そう言うとブレンは剣を抜いた。
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