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激戦−1−

建物まで引き返すと、カルが魔物と戦っていた。 見事な立ち回りで攻撃を命中させて、魔物が空から 落ちた。 「さすがです、カル様」 「これしき当然だ。だが、状況はかなりまずいな」 「そのために俺たちがいるんだろ」 クリスが建物を背にして魔物の群れと向き合った。 「今さら戦わない選択肢はないしね」 ジュリアがクリスに続いた。 「傷ついたらマイルが必ず治します!」 ジュリアの後ろでマイルが胸を張った。 「そういうことなんで、協力させてください」 カルに笑いかけた。 「協力に感謝する」 魔物が狼や熊といった攻撃力が高いものに変わっていて、僕たちの予想が的中したことがわかった。 「数が多いな···」 数の多さでは圧倒的に不利だった。 「ケイ、耳を貸せ」 カルはある作戦を耳打ちした。 「それなら動きを止められますね」 「頼んだぞ」 「はい。アクアミスト!」 魔物たちを濃い霧が包み込んだ。 「サンダースピア!」 カルが放った槍が霧に吸い込まれると、中で雷が 暴れ出した。霧が晴れた時には、魔物たちは痺れて動けなくなっていた。 「今だ!」 カルの言葉を合図に攻撃を仕掛けて、魔物たちを 残らず倒すことに成功した。 「大人しく石を渡せば誰も殺しはしない」 魔術士はカルにそう言った。 「そんな言葉を信じると思うか?」 カルは魔術士を睨んだ。 「どいつもこいつも愚か者ばかりだな、ブレン」 魔術士は高らかに笑った。 「本当ですね」 ブレンは魔術士の方へと歩き出した。 「おいおい、何の冗談だ?」 クリスが剣で進路を塞いだ。 「冗談じゃありませんよ。私はこんなちっぽけな国より大きな世界を手に入れたいのです」 「ブレン、一体何を言っているんだ···?」 カルが信じられないといった顔でブレンを見た。 「私の裏切りに全く気付かないとは、カル様も随分と勘が鈍りましたね」 「私たちの行動が筒抜けだったってわけね···。最初 からいけ好かないやつだとは思ってたけど、ここまでゲス野郎だったとはね」 ジュリアがブレンを睨みつけた。 「小娘に何を言われても痛くも痒くもありません」 ブレンは魔術士の前で跪くと、コートのポケットから石を取り出した。 「よくやった、ブレン」 「ありがたきお言葉」 僕たちに目もくれず、魔術士だけを見ていた。 「石が手に入ったのなら、もうこの国に用はない」 魔術士が空に手をかざすと巨大な黒い穴が現れた。 「せいぜい楽しむがよい」 そう言うと、魔術士とブレンは姿を消した。 「何か来る!」 暗闇から禍々しい龍が現れた。

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