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その場にいる全員が目の前の光景を疑っていた。 「闇の力強まりし時、龍が目覚める」 マイルがそう呟いた。 「まさか本当にいるとはな···」 クリスは剣を持つ手が少し震えていた。 「おとぎ話だと思っていたが···」 カルは龍を見つめていた。 「私たちであんなの倒せるの···?」 ジュリアの問いに沈黙が広がった。 「やらなければ国が滅んでしまう」 カルが口を開いた。 「でも、どうすれば···」 「とにかく街の者の安全が最優先だ」 そう言うとカルは地面に手を置いて何かを囁いた。金色の結界が街全体を包んだ。 「これでひとまず大丈夫だろう」 龍は優雅に空を飛んでいた。街の3分の1を覆ってしまうほどの影が、大きさを物語っていた。属性を確認しようとすると、頭に威圧的な声が響いた。 「我の眠りを邪魔したのはそなたか?」 「え!?」 驚いて声が出てしまった。 「ケイ、どうした?」 「な、何でもないです···」 空耳だと思っていたら、また声が聞こえた。 「そなたに聞いているのだ」 僕以外には声が聞こえていないようだ。 「どうして···僕だけ声が聞こえるんですか?」 「そなたが転生者だからだ」 そんな話は一度も聞いたことがない。 「我の問いに答えよ」 「···邪魔したのは僕じゃありません」 「嘘をつくな!他に誰がいるというのだ」 怒鳴り声に体が震えた。 「本当です!もう1人転生者がいるんです」 「転生者が2人だと?もう1人はどこだ?」 「さっき石を持って姿を消しました」 「そなたの言う通り、石の魔力が感じられぬ。まさか闇の力を復活させようというのか···」 「闇の力強まりし時、龍が目覚めるって···」 「我らは闇の力と対極にある」 「どういうことですか?」 「我らは転生者と共に闇の力と戦ってきたのだ」 マイルが呟いたことと真逆だった。 「じゃあ···ピゴーロを襲う気はないんですか?」 「当然だ」 そう言うと、目の前に龍が降り立った。 「攻撃態勢!」 カルが叫ぶと、部隊が武器を構えた。 「ちょっと待って下さい!」 龍の前に立って、今聞いた話をみんなに伝えた。 「にわかには信じ難い···」 カルは武器を下ろさせなかった。 「そなたは我と共に戦う覚悟はあるか?」 迷わず頷くと、龍はこう言った。 「ならば我と戦い力を示せ」 「僕が1人で戦います。文句はないですよね?」 カルに聞くと、部隊に指示を出した。 「馬鹿なことを言うな!」 クリスが肩を掴んだ。 「僕はいたって真剣です」 クリスの目を真っ直ぐ見つめた。何も言わずにキスをして掴んでた手をそっと離した。

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