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クリスの体温が唇に残っていて、泣きそうになるのを堪えながら、建物のない広い場所へと移動した。
近くで見る龍の姿は、あまりに美しすぎて怖さすら
覚えた。金色の瞳を見たら、何もかも見透かされてしまいそうな気がした。
「準備はよいか?」
恐怖心と戦いながら龍と向かい合った。
「大丈夫です」
できるだけ距離を取って攻撃に備えた。
龍は鋭く尖った尻尾を振って攻撃してきた。
「ウィンドブレード!」
風の刃は呆気なく弾き返されてしまった。ギリギリで避けると、またすぐに向かってきた。攻撃の隙を与えてもらえず、逃げるのに精一杯だった。
「逃げてばかりではつまらん」
そう言うと、逃げる僕の足を払った。体勢が崩れてその場に倒れると、尻尾の先端が首に当たった。
「そなたは何の為に戦う?」
龍の顔がゆっくりと近づいてきた。
「···この世界を救うためです」
「ずいぶんと過信しているようだな」
試しているような口調だった。
「そう言われても構いません。それでも僕は世界を救うためにみんなと一緒に戦いたいです」
目を逸らさず、はっきりと言葉にした。
「口で言うのは簡単だ」
尻尾が素早く動いて、僕の右肩を突き刺した。
と同時に僕の姿が煙のように消えた。
「な、何だと!?」
龍は目を見開いていた。
「光の屈折を利用して蜃気楼を作りました。今攻撃したのは僕の残像です」
尻尾が動いた瞬間に呪文を唱えて攻撃をかわした。
「小癪な真似を···」
「そう簡単にはやられません」
「そなたを少し見くびっていたようだ」
そう言って、大きな羽を動かして羽ばたいた。雲に入ると、たちまち空が暗くなり雷が降り始めた。
「アースジャイアント!」
岩の巨人を盾にして、狙いを定めた。
龍はこちらに向かって急降下し始めた。
「ポセイドン!」
龍は避ける様子もなく正面からぶつかった。衝撃で風が起き、立っているのがやっとだった。
目を開けると、龍は全くの無傷だった。
腕輪が黒くなり、目眩がしてその場に座り込んだ。
「もう···戦えません」
龍はその様子を見て笑った。
「何がおかしいんですか?」
「そなたはよくやった。我もそなたと共に戦おう」
「認めてくれたんですか···?」
龍はゆっくりと頷いた。
「我が名はライカ」
「力を貸してください、ライカ」
「我が必要なときはいつでも呼ぶがいい」
そう言うと、ライカは金色の指輪に変化した。
「大きい体は不便だからな」
指輪を拾って、右手の人差し指につけた。
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