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風都−1−

ライカはぐんぐんとスピードを上げて、気付けば ピゴーロがはるか遠くに見えた。太陽に照らされた世界はとても綺麗だった。 「わー!すごい景色!」 さっきまで怖がってたのが嘘みたいに、ジュリアがはしゃいでいた。 「忙しない人間だな···」 ライカは少し呆れていた。 「あとどのくらいですか?」 「あの雲を抜けたらすぐだ」 視線の先に入道雲のような巨大な雲が見えた。 「ちゃんと掴まっていろ」 ライカはスピードを落とすことなく、雲の中を突き 進んだ。雲の中は風が強く吹きつけて、目を開けていることができなかった。 風が止み、そっと目を開けると雲海の上に出た。 天国のような景色が広がっていて、その中に街ごと空に浮かぶ国ヒュートがあった。 「様子がおかしい」 ライカの言葉の意味が分からなかったが、近づくにつれてその意味が分かった。建物はほとんど壊されていて人の気配はなかった。 「何があったんだ···?」 「魔物にやられたんでしょうか···」 「魔物が来た気配はない」 ライカがそう教えてくれた。街をぐるっと一周して飛んだが、どこも同じような景色だった。 街のはずれに、ライカが降りても問題なさそうな 広い場所がありヒュートに足を踏み入れた。 「連れてきてくれてありがとうございます」 「また何かあれば呼ぶといい」 そう言うと、ライカは指輪の形に戻った。 「···何も聞こえないわね」 「ちょっと不気味です」 街は静まり返っていて、風の音と僕たちの足音しか 聞こえなかった。 「とりあえず、何があったのか調べよう」 ヒュートは中心部から円形状に広がっている街で、二手に分かれて手がかりを探すことにした。 地面を歩いてるのに、街は空に浮かんでいるという 不思議な感覚に慣れるのに時間がかかった。 「クリスは来たことあるんですか?」 「いや、来たことはない。ヒュート行きの飛行船に 乗れるのは金持ちだけだからな」 「そうなんですね」 「この景色に加えて古代の遺跡も見れるとあって、観光でかなり儲けていたらしい」 そんなことを話しながら歩いていると、お土産屋 さんと思われる建物があった。 「入ってみましょう」 外壁はかなり崩れていたが、中に入ってみるとそこまで損傷は激しくなかった。 「人がいた形跡はあるな」 クリスは瓶に入った飲みかけの液体を見つけた。 「慌てて逃げたみたいですね」 そこら中に商品が散らばっていて、踏まれて壊れているものもいくつかあった。 「何から逃げたんだろうな」 クリスは呟くと、建物から出た。

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