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広い空間の中に、奥に続いてそうな通路があった。
天井が低く、マイル以外屈まないと進めなかった。
指輪の光を頼りに進んでいくと、外の光が微かに差し込むドーム型の空間に出た。いなくなったと思っていた街の人たちが石を囲んで座っていた。
「何があったのか教えてくれないか?」
クリスが近くにいた老人に尋ねた。
「フル様が倒れたのだ···」
フル様というのは恐らくキーパーのことだろう。
「ちょっと診せてもらえますか?」
マイルが石の前にいるフルに近づこうとすると、
街の人たちが一斉に立ち上がった。
「他所者が神様に触るな!」
そう口を揃えて、マイルが近づけないようにした。
「このままだと街がなくなりますよ!」
マイルが負けじと叫んだ。
「神様がきっと何とかしてくれる」
「神様にできないことはないのだ」
聞く耳を持たずに、街の人たちは神様と言う言葉を何度も繰り返していた。
「···気味が悪いな」
「他所者は何もしないで帰れってこと?」
「どうしますか?」
何もできずにいると、フルの隣にいる老人が立ち上がり口を開いた。
「皆の者、鎮まりなさい」
たった一言で空気が変わった。
「フル様は彼らと話がしたいとおっしゃっている」
そう言うと、街の人たちは黙った。
「私は側近のカイリです」
杖をついてはいるものの、威厳ある佇まいだった。
一人ずつ自己紹介を済ませて、マイルがフルの病状を確認した。フルは緑色の長い髪が美しい男性で、肌は透き通るように白く儚い雰囲気を纏っていた。
「疲れがたまってるだけだと思います」
マイルはそう言うと、薬を取り出した。
「思い当たることはありますか?」
カイリに聞くと、ゆっくりと頷いた。
「ここ何日間は寝る間も惜しんで、石の魔力をコントロールしようとしていました」
「魔力が変化したのか?」
「5つの石で抑え込んでいた闇の力を、今は2つだけでどうにか抑えています」
「その分、消耗する魔力も大きいってわけね」
「口を開けてください」
マイルはフルの頭を支えながら、薬を溶かした水を少しずつ飲ませた。
「···ありがとう」
フルは声を絞り出した。
「少し安静にすれば大丈夫です」
「···休んでなどいられない」
フルは起き上がろうとしたが、体を支える力はまだ
戻ってないようだった。
「休んでる間、僕がコントロールします」
緑色に輝く石の前に立って手をかざした。
「石の中に魔力を閉じ込める感覚をイメージしろ。我も力を貸す」
ライカに言われたとおりに、反発する魔力を石の中に集めた。直接触れていないのに、感触が伝わってきて不思議だった。
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