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「石の魔力が···落ち着いたようですね」
フルは体力が回復しつつあるようで、自分の力で
起き上がった。
「まだ休んでてください」
フルは僕にありがとう、と言って頭を下げた。
街の人たちはその様子を見て驚いていた。
「皆さん···私は神などではなく非力な人間です。私の
せいで街が壊れてしまったのです···」
カイリは涙を流すフルの肩に、そっと手を置いた。
「皆の者、フル様が回復されるまで席を外してはくれないか?」
カイリの言葉にみんなが頷いて、部屋を後にした。
「カイリ···申し訳ない」
「フル様のせいではございません」
「しかし···」
カイリはフルの手を握った。
「今は回復するのが先です」
「···分かった」
そう言って、フルは目を閉じた。
「魔物の気配を感じる」
ライカの言葉に背中が冷たくなった。
「クリス、地図を見てください」
クリスが地図を広げると、魔術士を示す黒い点が
ヒュートに近づいてきてるのが分かった。
「この状況はまずいわね」
フルが起きるまで僕もマイルも動けない。
「ここが見つかるのも時間の問題だな」
そう言って、クリスは地図をしまった。
「私が囮になります」
カイリは杖で地面を叩くと、フルの姿になった。
「これは変身魔法です。一度見たものなら、その姿に変身できます。私がソル様のふりをして嘘の場所に案内します」
「でもそれじゃ···」
「老い先短い身ですから、行かせてください」
カイリの表情は有無を言わせない覚悟が窺えた。
「俺たちも行く」
クリスの言葉にカイリは頷かなかった。
「街の人達をお願いします」
そう言うと、カイリはフルの手を強く握った。
「フル様、行って参ります」
カイリの背中を見送ることしかできなかった。
しばらくして、フルが目を覚ました。
「薬が効いたみたいです!」
マイルはホッとしていた。
「あの···カイリはどこですか?」
フルはカイリがいないことに気づいた。
「カイリは囮になった」
「囮に···!?自分からそう言ったんですか?」
クリスが頷くと、フルは動揺して立ち上がった。
「···カイリの決断なら尊重します」
そう言って、石に震える手をかざした。
「俺たちは上に戻ってやつらを食い止める」
クリスの言葉にフルは強く頷いた。
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