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覚醒−1−
地上に戻ると、あちこちで魔物が暴れていた。
「やりたい放題ね」
「カイリは無事でしょうか···」
マイルは心配そうな顔をしていた。
「カイリが戻って来れるようにここを守るんだ」
クリスはマイルの背中をそっと叩いた。
「魔物が来ます!」
土埃を上げながら、魔物が向かってきた。
「スラッシュインパクト!」
剣の衝撃波で魔物が吹き飛んだ。
「チェーンウィップ!」
鎖の鞭がしなやかに動いて、先に繋がれた短剣が
魔物を切り裂いた。
「アイシクルストーム!」
氷の嵐が魔物を巻き上げて、凍ったまま地面で粉々に砕け散った。
「全然数が減らないんだけど!」
次から次へと魔物が現れて、じりじりと囲まれた。
「様子がおかしい!」
魔物同士が混ざり合い、ケルベロスのような三つの頭を持つ魔物に形を変えた。
「ライカ、何が起きたんですか?」
「闇の力が強まると、魔物は今のように合体して
より強い魔物に進化することがある」
「進化、ですか···」
魔物は大きな体に似合わず、素早い動きで僕たちの攻撃を全てかわした。
「どうする?」
クリスが隣に並んだ。
「必ず弱点があるはずです」
「あんまりのんびりしてる時間はないわよ」
ジュリアも隣に並んだ。
魔物を観察していると、それぞれの頭が別の動きをしていることに気づいた。
「聞いてください」
作戦を耳打ちすると2人は頷いた。
「せーの!」
魔物がきたタイミングを狙って、同時に三方向へと走り出した。読み通り、頭が1人ずつ追いかけて体の動きが一瞬だけ止まった。
「今です!」
その瞬間を逃さずに攻撃すると魔物は倒れた。
「上手く行ったわね」
「一か八かでしたけど」
「いや、まだだ」
振り返ると、魔物は再び立ち上がっていた。
「嘘でしょ···」
「傷がもう治ってます···」
「来るぞ!」
僕たちに攻撃するかと思ったが、一直線にマイルの方へと走り出した。
「マイル、逃げて!」
その声も虚しく、マイルは逃げる前に魔物の足に
体を押さえつけられた。鋭い爪が首筋に当たって、真っ赤な血が流れた。
「マイル!」
マイルを助けようと走り出したとき、魔物が苦しい声を出しながら倒れた。何が起きたのか理解できず動きが止まった。
「マイル、一体何をしたの?」
ジュリアが聞いても、マイルは目を見開いたまま
無言だった。
「とりあえず止血しないと」
リュックから布を出して、傷口にあてた。
「ケイ、伝えるかどうかはそなたに任せるが···」
「何ですか?」
「治癒士には命を救う力ともう1つ力がある」
「もしかして···」
「そう、命を奪う力だ」
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