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「マイル、落ち着いた?」
ジュリアの言葉にマイルは静かに頷いた。
知らないまま旅を続けてもマイルが苦しむだけだと
思い、ライカから聞いたことを話すことにした。
「マイル、大事な話だからよく聞いてね」
隣に座ってマイルの左手を握った。
「治癒士には命を救う力と命を奪う力があるんだ」
マイルは驚きと悲しみが混ざり合ったような表情で繋いでた手を引いた。
「そんなの···信じません!」
そう言って、マイルは走り出した。
「マイル!まだ安静にしてないと!」
ジュリアはマイルの後を追いかけた。
「ライカから聞いたなら確かだろうな」
クリスは苦い表情をしていた。
「話したのは間違いだったかも···」
「いや、ケイは間違ってない」
そう言うと、クリスは僕の頬に優しく触れた。
ジュリアがマイルをおんぶして戻ってきた時、地面が大きく揺れた。2人の後ろにある建物が地震の衝撃で壊れ始め、瓦礫が降り注いだ。
ジュリアは咄嗟に鎖をこちらに投げて、クリスと2人で思いっ切り引っ張った。間一髪で瓦礫の下敷きになるのを免れることができた。
「あー危なかったぁ」
ジュリアは他人事のように話した。
「死ぬところだったぞ」
「いいじゃない、助かったんだから」
そう言うと、マイルを降ろした。声をかけようとしたが、言葉が見つからなかった。
「ジュリア、足怪我してます!」
瓦礫の破片が足に刺さっていた。
「大したことないから」
立ち上がろうとすると、ジュリアはよろけた。
「じっとしててください」
マイルは怪我をしたところに手をかざして、包帯を
手際よく巻いた。
「ありがとう、マイル」
マイルは頷くと、僕たちの顔を見た。
「マイルが治癒士になったのは命を救うためです!
もし命を奪う力があったとしても、マイルは世界で一番頼れる治癒士になります!」
涙を堪えながら話すマイルの姿を見て、堪え切れず
涙が溢れた。
「これからも頼りにしてるぞ」
クリスはマイルの肩にそっと手を置いた。
「私の次にいい女ってことは認めてあげる」
ジュリアはマイルにウインクした。
「マイルならきっとなれるよ」
「···ケイ、さっきはごめんなさい」
「マイルが謝ることじゃないよ。僕の方こそ、驚かせてごめん」
頭を上げるとマイルはいつもの笑顔に戻っていた。
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