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「ライカ、さっきの地震は?」 「また石が暴走している。魔力は極力使うな」 フルの様子を見に地下に行きたかったが、また魔物に囲まれてしまい動けなかった。 「また合体し始めたぞ!」 囲んでいた魔物が、ケルベロスに変化した。 「さっきのとは訳が違うわね···」 「迂闊に動くとやられるな」 魔物は飢えているのか、よだれを垂らしながら一歩ずつ確実に距離を詰めてきた。 「このままじゃ街の人たちが···」 「クソッ、ここまでか」 為す術なく、地下の入り口まで追い詰められた。 何とか状況を打破するために、魔法を使おうとした時、一体の魔物が僕たちの間に立ち塞がった。 「私も戦います」 魔物から声がして、魔物に変身しているカイリだと気付いた。 「私が魔物を引きつけてる隙に攻撃を!」 そう言うと、カイリは魔物に噛み付いて魔物の気をそらした。 「叩き込むぞ!」 クリスとジュリアが走り出し、魔物の足を次々と 切り落として動きを封じた。 「魔力が安定した。今だ!」 体勢が崩れたところに呪文を唱えた。 「マグマバースト!」 マグマの塊が魔物を跡形もなく溶かした。 「いい連携ですね」 カイリは元の姿に戻っていた。 「あんたもなかなかしぶといな」 「ただの死に損ないです」 「···なら死ね」 次の瞬間、カイリの体が吹き飛んだ。 「いつまで私の邪魔をすれば気が済むんですか?」 いつの間に現れた魔術士はジュリアとクリスに手を 向けた。2人もカイリと同じように吹き飛んだ。 「クリス!ジュリア!」 「自分の無力さを思い知るがいい」 魔術士の口元が緩み、呪文を唱えた。 「デスサンダー」 どす黒い雷が激しい音を立てながら、一直線に僕に向かってきた。突然の出来事に、呪文を唱える余裕もなく足も動かなかった。 「ケイ!」 マイルが両手を広げて僕の盾になった。 「マイル!」 雷はマイルを突き刺す手前で止まった。 「ど、どういうことだ!?」 魔術士は明らかに動揺していた。 「あやつの命を奪う力と治癒士の命を救う力が拮抗している。だが、そう長くは持たないぞ」 ライカの声が聞こえた。 「ファイアーアックス!」 巨大な炎の斧が魔術士の体を切り裂いた、かと思ったが魔術士は寸前で姿を消した。 魔術士が消えた後、マイルは意識を失って倒れた。 クリスとジュリアは気絶しているだけだったが、 カイリは心臓の音が聞こえなかった。 いざというときに誰も守れない自分の無力さに無性に腹が立って、それ以上に悔しかった。

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