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「アイスシールド!」
衝撃を少しでも和らげようと、氷の盾で防御した。
「ケイ、俺から離れるなよ」
クリスが伸ばした手を掴んだ。
「絶対に離れません」
氷の盾が限界を迎え、足場が崩れ始めた。
石の魔力が消え街全体がゆっくりと下降していた。
「ライカ、街の人たちを頼みます!」
「しかし···」
「僕たちは大丈夫です」
「分かった」
指輪を天井に向かって投げた。
ライカが大きな羽を広げて、飛んで行った。
「俺たちも羽があればな」
クリスがライカを見てそう呟いた。
その言葉で呪文を閃いた。
「ウインドウイング!」
風の翼が背中から生えて、足が少し浮いた。
「クリス、掴まっててください」
クリスの手を掴んだまま、空に羽ばたいた。
クリスは驚きながらも苦笑いしていた。
「魔法は何でもありだな」
「行きますよ!」
吹きつける風の中を流されないように飛ぶのは、
かなり魔力を消耗した。街の下半分はすでに雲海に飲み込まれていて、元々国だったとは思えないほどバラバラになっていた。
「ライカ、どこにいますか!?」
「街の者たちを乗せて、地上に向かっている」
「分かりました。僕たちも向かいます」
ライカを追いかけるように雲海に飛び込むと、吹きすさぶ風に弄ばれた。羽は役に立たず、真っ逆さまに落ちていった。無数の瓦礫も風の中を舞っていて拳くらいある破片がクリスの手首に当たった。握る力が段々弱くなり、クリスが掴み直そうとした時、手が離れてしまった。
「クリス!」
離れる寸前にクリスが何かを言っていたが、風の音にかき消されて全く聞こえなかった。あっという間にクリスの姿は雲の中に消え、雲海を抜けた。
「クリス!」
名前を何回も呼んでも返事はなかった。
探しに行こうとしたが、悲しいことに腕輪が魔力の限界を告げていた。
「ライカ、クリスのこと頼みます」
「一緒ではないのか?」
「···雲海ではぐれました」
「そうか。街の者とそなたの連れはみな無事だ」
「分かりました。ありがとうございます」
嬉しい報告だったが、今はクリスのことで頭が一杯だった。景色がどんどん上に流れて、落ちる速度が上がっていった。地上の街が近づいてきて、再び翼を広げた。風の抵抗を感じながら、速度が遅くなり
何とか無傷で着陸することができた。
薄れゆく意識の中で、隕石のように降り注ぐ瓦礫の中にクリスの姿が見えた気がした。場所をライカに
知らせるために、力を振り絞って呪文を唱えた。
「ファイアーワーク···」
花火が打ち上がる前に意識を失った。
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